書籍「北海道の脊梁 日高山脈」を手にする編著者の黒川伸一さん=5月、札幌市
 書籍「北海道の脊梁 日高山脈」(共同文化社提供)

 北海道の日高山脈地域が2024年6月、「日高山脈襟裳十勝国立公園」に指定されて1年となるのを前に、書籍「北海道の脊梁 日高山脈」が出版された。原生林など豊かな自然と、険しい尾根に挑んだ岳人たちの関わりを紹介。編著者で、日本山岳会北海道支部長を務めるフリーライター黒川伸一さん(66)は「美しさと冷徹さ。そのせめぎ合いが魅力」と語る。

 環境省などによると、日高山脈は北海道の中央から襟裳岬にかけ南北約140キロに及び「北海道の背骨」と呼ばれる。最高峰は幌尻岳の2052mで、緯度が高いため気象条件は本州の3千m級の山々に並ぶとされる。

 書籍では、雄大な風景写真とともに、登頂ルート開拓に情熱を注いだ北海道大山岳部員や、麓の広尾村(現広尾町)に入植し、山や草花を描いた画家坂本直行(1906〜82年)らの歩みをひもとく。70年に福岡大の学生3人が亡くなったヒグマ襲撃事故など、悲惨な史実も当事者の手記などを基に詳述する。

 自然を後世に残しつつ、未知の領域へ踏み出す挑戦の精神が受け継がれるよう願っている。共同文化社・2970円。