太平洋戦争で捕虜となった米兵8人が九州帝大(現九州大)で「実験手術」を受け殺害された「九大生体解剖事件」から80年となり、医学生として立ち会った故東野利夫医師が戦後収集した資料が九大医学歴史館(福岡市)に展示されている。「負の歴史」に向き合い、証言活動も行ってきた東野さんの遺族が寄付していた。22日まで。
入学直後だった東野さんは手術中に輸液が入ったびんを持ったり、術後に血まみれの床を掃除したりした。戦後は産婦人科医院を開業し地域医療に従事する傍ら、関係者の証言収集や執筆、講演などに注力。2021年に95歳で死去するまで精力的に活動を続けた。
遺族から昨年4月までに寄付を受けた500点に及ぶ資料の整理を関係者や学生らで進め、最初の実験手術があったとされる日から80年後の先月17日に展示を始めた。
展示している31点は、8人が乗っていた爆撃機B29の墜落場所を示した地図、事件後に自殺した執刀医の遺書のコピーなど。
事件では1945年5〜6月、米兵8人の肺や肝臓などを摘出したり、海水を体内に注入したりする手術が行われた。