東京電力福島第1原発事故を巡り、旧経営陣の賠償責任を認める一審判決を覆した東京高裁判決を受け、今なお事故の影響に苦しむ福島県の被災者らは「津波を予想できなかったで済む話か。責任を認めてほしかった」と一様に肩を落とした。原告側が上告の方針を示したことに期待する声も上がった。
同県相馬市の漁師菊地栄達さん(32)は「福島が受けた風評被害を完全に払拭することはできず一生分の損害を受けた。責任がないのはおかしい」と厳しく批判。県内の漁業は一時操業自粛を強いられ、14年以上たっても本格操業が始まっていない。「何で俺らだけマイナスから元に戻さないといけないんだ」
同県田村市の原木シイタケ農家宗像幹一郎さん(74)は「二度とこんな被害を出してはいけない。今の経営陣も緊張感を持ってほしい」と注文した。
国と東電を相手取った損害賠償請求訴訟で原告団長を務める中島孝さん(69)は「一度失われた古里は取り戻せないのが原発事故。到底許されない判決だ」と指摘した。