大阪地裁

 大阪市のマンションで2002年に起きた母子殺害放火事件で殺人などの罪に問われ、無罪となった元刑務官の男性(67)が、重要な証拠を紛失したまま起訴し公判を継続したのは違法だったとして国と大阪府に計約1億2400万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、大阪地裁(三村憲吾裁判長)は18日、いずれの請求も棄却した。

 男性は02年4月、大阪市平野区のマンションで義理の娘=当時(28)=とその長男=当時(1)=を殺害したなどとして逮捕、起訴され、一審で無期懲役、二審で死刑判決を受けた。だが10年の最高裁判決が「状況証拠の判断に疑問点があり、事実誤認の可能性がある」として破棄。差し戻し後は一、二審とも無罪となり、検察側が上告せず確定した。

 事件では直接証拠がなく、検察側は現場マンションにあった灰皿のたばこの吸い殻72本中、1本から男性のDNA型を検出したことを有罪立証の根拠とした。しかし最高裁判決が、変色状況から事件以前に捨てられた可能性を指摘。その後大阪府警が残りの吸い殻を紛失していたことが発覚した。