菊池恵楓園で保管されている「虹波」=2024年8月

 太平洋戦争中に旧陸軍が開発を進め、戦後にかけハンセン病患者に臨床試験で投与された薬剤「虹波」が、沖縄県名護市にある国立療養所「沖縄愛楽園」でも投与されたとみられることが、30日分かった。同園の機関誌に「『虹波』という新薬を試用した」との記述があった。

 熊本県にある療養所「菊池恵楓園」の歴史資料館の調査で判明した。これまで複数の療養所で投与に関する資料が見つかっているが、沖縄愛楽園での発見は初めて。

 虹波は写真の感光剤を合成した薬剤。旧陸軍が、寒冷地での兵士の凍傷対策など肉体強化を目的に研究したとされる。療養所のハンセン病治療にも用いられた。頭痛やめまいなど激しい副作用を伴い、死者が出ても投与が続いたとみられ、倫理上の問題が指摘されている。

 今回見つかった沖縄愛楽園の機関誌は1953年発行の「愛楽誌 開園十五周年記念号」。園に勤務した医師が寄稿し、虹波に関し「太陽の出る前に服用しなければならぬというので、この少年が毎朝眼をこすりこすり取りに来ていた」と振り返った。