天皇陛下は全国戦没者追悼式の「お言葉」に、戦争の記憶を次世代へ継承していく思いを込められた。「戦中・戦後の苦難を今後とも語り継ぎ」との文言を初めて盛り込み「将来にわたって平和と人々の幸せを希求し続けていくことを心から願う」と述べた。
戦後80年の今年、陛下は戦没者慰霊として皇后さまと共に硫黄島、沖縄、広島を巡ってきた。遺族の声に直接耳を傾けると同時に、戦争体験を後世に伝える活動をする若者たちと懇談した。6月の沖縄訪問は、両陛下の強い意向で長女愛子さま(23)を同伴した。9月の長崎も同行する。
広島では高齢の被爆者に「若い世代に伝えたいことは何ですか」と繰り返し尋ねる陛下の姿があった。側近は「節目の年に改めて戦争と向き合われてきた。世代を超えて記憶を継承し、平和を守っていく。陛下はそのことを強く思っておられる」と語る。
陛下は2月の誕生日記者会見で、戦禍の記憶が薄れゆく現状を踏まえ「戦争を知らない世代に悲惨な体験や歴史が伝えられていくことが大切である」との考えを示した。