春はいつまでもお布団。ようやく寒さまぎれるへやなか、日の光少しあかりて、寝息も細くたなびきたる。朝食をとりまた二度寝、あるいは昼食をとりてまたお昼寝、いつまでも楽しみ、お布団が一番会っているお友達になりにける。家族、恋人といつまでも布団にいるもをかし。まさに春眠暁を覚えず。いつまでもよろし。

 夏はクーラー効いた部屋でお布団。真夏のころさらなり、晩夏もなお、ふかふかさらさらのお布団に多く飛び込みたる。また、夏休みなど、スイカやアイスキャンディーなどゴリゴリ頬張ったのち、キンキンに冷えた体でふんわかお布団に潜り込むなどいうべきにもあらず。台風の中、ちょっぴりキャンプ気分で布団に潜り込むもよろし。体温を下げるお布団など売られていてよろし。クーラー効いたままでタオルケットをかぶるのもよろし。

 撮影・三品鐘

 秋は読書と食欲とともにお布団。本を読みながらペラペラとページをめくり、時間が経(た)つのも忘れ、お布団フューチャリング読書となるまま、ミステリーなどにのめり込むなり。また野口あや子の歌集などもいうべきにもあらず。少し人肌恋しくなるころによき短歌なり。みんなアマゾンでポチるがよろし。また寝転びながら本を読みながら、わずかな罪悪感に浸りつつ、ポテトチップスを一切れ二切れ、三切れ四切れ、気付いたら袋ごとなくなってしまうのもまたあはれなり。シーツを汚さぬよう、食べかすを残さぬよう、気を付けながら行えばいとをかし。

 冬は湯たんぽとお布団。湯たんぽにもいくつか種類ありけるが、個人的にはお湯を入れるタイプの湯たんぽよりくりかえし充電して使える電子湯たんぽを好むなり。冷え冷えの体でお風呂、その後湯たんぽでぽかぽかの布団に直行するほかの極楽をわれら知らず。入ったらもうお布団大好きの気持ちブチ上がり、一度入ったらもう出たくなくなるのもあはれなり。朝になると湯たんぽの熱もゆるびて、しかも仕事やら学校やらで外に出かけなければならず、布団から這(は)い出るがもうちょっとだけ…… となりにける。これで二度寝で遅刻するはわろし。

 清少納言というが書いた枕草子をここに復活させるなり。お布団好きすぎてもはや私の第二の故郷なり。名付けてピロー草子なり。各寝具メーカーとのコラボもお待ち申し上げるなり。


 岐阜市出身の歌人野口あや子さんによる、エッセー「身にあまるものたちへ」の連載。短歌の領域にとどまらず、音楽と融合した朗読ライブ、身体表現を試みた写真歌集の出版など多角的な活動に取り組む野口さんが、独自の感性で身辺をとらえて言葉を紡ぐ。写真家三品鐘さんの写真で、その作品世界を広げる。

 のぐち・あやこ 1987年、岐阜市生まれ。「幻桃」「未来」短歌会会員。2006年、「カシスドロップ」で第49回短歌研究新人賞。08年、岐阜市芸術文化奨励賞。10年、第1歌集「くびすじの欠片」で第54回現代歌人協会賞。作歌のほか、音楽などの他ジャンルと朗読活動もする。名古屋市在住。

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