
YJS佐賀の第1戦を勝った笠松の松本一心騎手。総合ポイントで西日本地方騎手のトップを快走
「行け~、そのまま~」、イエヤスとのコンビで天下取り。成長著しい若武者の挑戦は、ファンの声援に後押しされて1着ゴールを決めた。
2025ヤングジョッキーシリーズのトライアルラウンド佐賀(9月30日)に笠松勢2人が参戦。第1戦、松本一心騎手(20)=加藤幸保厩舎=が逃げ切り、名古屋に続いてシリーズ2勝目。第2戦は9着だったが総合74ポイントで西日本地方騎手のトップを快走。ファイナルラウンド進出(上位4人)へ大きく前進し、早くも「当確」となった。明星晴大騎手(18)=後藤佑耶厩舎=は4着、6着で総合5位に浮上し、最終・笠松ラウンドでの本戦切符獲得に望みをつないだ。

YJS佐賀の騎手紹介式で松本一心騎手(中央)、明星晴大騎手(左)
佐賀ラウンドには地方騎手5人、JRA騎手7人が参戦。ファンの前で紹介式が行われ、若手ジョッキーたちが熱戦を繰り広げた。笠松からの応援団からは「一心、頑張れ」「笠松の星、頑張れ」などと力強い声援が飛んだ。
■イエヤスで逃げ切り、松本騎手会心のレース
第1戦の3R(1400メートル)。松本騎手騎乗の2番人気イエヤス(牡3歳、真島正徳厩舎)が好ダッシュからハナを奪うと快調な逃げ。向正面で1馬身リード。後続馬の手綱が動いた3~4コーナーでも持ったままで楽な手応え。最後の直線で松本騎手が気合を入れると、リードを広げて2馬身差で1着ゴールイン。

3R、イエヤスに騎乗しゴールを目指す松本騎手と2番手で追う高杉吏麒騎手
2着に単勝1.4倍ジュエリーオブラヴ騎乗の高杉吏麒騎手(栗東)、3着には吉村誠之助騎手(栗東)が入った。ゴール前では松本騎手の1着ゴールに歓喜、笠松ファンらが大きな声援を送った。2→1番人気での決着。松本騎手への応援馬券で単勝、馬連、馬単をゲットできた。

イエヤスで鮮やかな逃げ切り、1着でゴールする松本騎手
松本騎手はゴール後、勝利の味をかみしめながら引き揚げ、厩務員らの祝福を受けて1着の枠場入り。「できたらハナに行ってくれという指示で、隣の枠の高杉騎手を見ながら先頭に。ちょっと掛かり気味で多少フラフラしたんですが、うまく折り合いをつけられて追い出してからしっかり伸びたし、勝てて良かった」と会心のレースを振り返った。
「手応えは4コーナーを回る時も良かったので、追い出しもぎりぎりまで待って直線はしっかり追おうと。いい馬に乗せていただいて結果につながった。まだ気を抜かずに一つでも上の着順目指して頑張ります」と意欲を見せた。

見事1着でファイナルラウンド進出を確実にした松本騎手
■明星騎手4着が精いっぱい「もっと上に」
明星騎手はエムズマンに騎乗し後方からよく追い上げ、3~4コーナーでは外から好位に取りついた。先行有利の流れで、最後は伸びきれず4着が精いっぱいだった。名古屋では9着、12着と出遅れたが佐賀での巻き返しに燃えていた。健闘の4着で笑顔も見せながら「もうちょっと脚を使いたかったが、仕掛けるのが早かったかな。もっと上の着順にいきたかったが(ファイナル進出へ)可能性が少しでも残っている限り頑張ります」と笠松での上位進出を誓った。

第1戦、エムズマンに騎乗しゴールを目指す明星騎手。追い上げて4着に食い込んだ
■第2戦、地元佐賀の青海大樹騎手が豪快な追い込み
第2戦の5R(1400メートル)。1番の城野慈尚騎手(高知)がいきなりスタートで落馬したが、その後は2頭が先行し淡々とした流れ。地元佐賀の青海大樹騎手が1番人気ドナアフロディテで大外から豪快に追い込んで、アタマ差1着。逃げ込みを図った河原田菜々騎手が2着、吉村騎手が再び3着で続いた。上位人気3頭での決着となった。

第2戦で豪快な差し切り勝ちを決めた青海大樹騎手
笠松勢は2人とも中団から3コーナーへ。明星騎手は9番人気馬に騎乗し、6番手で4コーナーを回り、最後の直線に懸けたがそのまま6着でゴール。松本騎手も11番人気馬で厳しい戦いとなり、伸びを欠いて9着に終わった。
単勝1.7倍の期待に応えて勝った青海騎手は「内の馬が残りそうだったが、自分の馬の力を信じて乗った。僕の番号(9番)が1番目だったんで良かったです」。総合ポイントは暫定2位に浮上。「このまま守り抜けるよう頑張ります」と笠松でのラスト1戦へ闘志。逃げ切りならず惜しくも2着の河原田騎手は「最後あの差だけに悔しかった。勝ちたかったです。まだ笠松があるので次こそは勝ちたいです。頑張ります」と前を向いた。この2人、笠松にも参戦するので注目したい。

表彰式で第1戦優勝の松本一心騎手(左)と第2戦優勝の青海大樹騎手(NAR提供)
■松本騎手「いい結果につながって良かった」
表彰式では「やったぜ、一心君。おめでとう」とファンも大喜び。勝利を飾った2人の活躍をたたえ、賞品が贈られた。松本騎手は「暑い中、来ていただいてありがとうございます。僕自身、緊張気味でしたが、いい結果につながったので良かったです。(YJSは)これから笠松もあるので、ぜひ見に来てください」と、青海騎手は「この佐賀という地でできた勝利はとても思い出になる1勝になりました」と表彰台から喜びをファンに伝えた。勝った2人に対して笠松、佐賀のファンから「頑張れ、ファイナルに行くぞ」と激励の声も飛んでいた。

「いい結果につながって良かった」と喜びを語る松本騎手
■「手応えが良く思った以上の走り」
やや涼しくなったが30度超えの日も続く厳しい残暑の中、笠松競馬10月開催がスタート。佐賀ラウンドを終えて総合トップに立ち、ファイナル進出を確実にした松本一心騎手に思いを聞いた。
―すんなりハナに立って、すごくいい展開で逃げましたね。
「(高杉騎手は2番手からで)譲ってくれたんで。マークしていて、相手も意識していたでしょうが、騎乗馬の動き次第でした」

笠松開催で佐賀の勝利を振り返ってくれた松本騎手。直後のレースでも白星を飾った

佐賀第1戦、イエヤスに騎乗しパドックを周回する松本騎手
―3~4コーナーでも持ったままでしたね。
「手応えが良かったです。前々走まで乗っていた佐賀の先輩・山田義貴騎手は『走らんよ』と言っていましたが、思った以上に走ってくれました」
―2戦目は人気もない馬で9着でしたね。
「結局、前へ行った馬が残った展開でしたね」
■ファイナル「大丈夫ですかね。気持ちは楽に」
―総合74ポイントでファイナル進出は当確ですよ。まだ笠松もあるけど。
「まあ大丈夫ですかね。(笠松ラウンドでは)気持ちは楽ですね」
過去の地方勢ファイナル進出は、総合60ポイントで当確、50ポイントがボーダーラインである。既に70ポイント超えの松本騎手の進出は間違いない。東西の地方、JRAを含めても全国トップという快進撃だ。
―あとは、レースや調教でけがとかないようにしたいね。好調の要因は。
「くじ運じゃないですか。ハハハ」
5番人気(名古屋)と2番人気(佐賀)で勝利を挙げた。YJS出場は2回目。一昨年は5着が最高で総合15位、昨年は負傷療養中で欠場した。ファイナルは園田と中京。兵庫県出身で、園田は地元でもあり、ご家族や地元ファンの応援もありそうだ。
■ファンの声援に「佐賀まで来てくれ、ありがたいです」
―笠松でも2戦ありますが、レースや調教で見たことがある馬でしょうし。ポイントは断トツだし、まあ掲示板ぐらいでもいいかも。
「けがをないようにしたいし、精いっぱい頑張ります」

ファンから贈られた「一心」「明星」の帽子をかぶった松本騎手(左)と明星騎手
―名古屋、佐賀でシリーズ連勝はすごいですね。応援のファンはどうでしたか。
「(笠松でも)よく見掛ける人たちでしたが、すごいですね。わざわざ佐賀まで来てくれて。ありがたいですね。(パドックやスタンド前で)声援も聞こえていました」
―きょうの笠松は3Rからですね。
「いつも通り頑張ります」
その言葉通り、直後の3Rで松本騎手は後方2番手から押し上げ、鮮やかな差し切り勝ちを決めた。1番人気での勝率は渡辺竜也騎手の53%を上回る68%で、安定した騎乗力を見せている。笠松リーディングは6位に躍進した。

第1戦、エムズマンに騎乗しパドックを周回する明星騎手
■明星騎手「笠松で頑張るだけですよ」
一方、YJS総合5位に浮上した明星騎手。地方勢(西日本)は上位4人がファイナル進出となるので、笠松ラウンドでのポイント加算が期待される。ラストチャンスに懸ける熱い思いを聞いた。
―佐賀では人気薄の馬で4着、6着。総合5位に上がりましたね。
「4着はたまたまですが(人気がなく)印的には良かった。(2戦目)6着では大したことないですね。笠松で頑張るだけですよ。笠松で駄目だったら無理なんで」
現在23ポイント。上位の着順はJRAの騎手が多く、地方騎手のポイントは松本騎手(74P)、青海騎手(52P)以外は20ポイント台で4人が競り合っている。まだ園田、金沢、笠松ラウンドが残っているし、出場(地方)が10人と少ないこともあって、どの騎手にもチャンスがある。

エムズマンで4着に入った明星騎手。笠松でファイナルラウンド進出を目指す
■YJSファイナル出場、ラストチャンスか
―ポイント争いでは笠松で3着ぐらいに2回入れば、ファイナル進出は十分に可能性がある。
「上位は接戦なんですか。でも園田などまだあるから、どうかな。笠松で頑張ります」
急成長の明星騎手。笠松では連日の勝利でリーディング3位(50勝)で、連対率は30%超え。地方競馬通算96勝(10月9日現在)で減量騎手卒業は近い。YJS出場は今回がラストチャンスになりそうだ。
■笠松と佐賀の応援団、一緒に勝者たたえる
佐賀へは笠松の応援団が駆け付けた。パドックには松本騎手と明星騎手の応援幕も掲示して活躍を願った。「一心君、カッコ良かったです。幕があることに気付いてくれたし、紹介式ではファンを見つけるとにこにこしていた。表彰式にはお母さんの姿もあったし、佐賀の青梅騎手のファンも一緒になって笠松の騎手を応援してくれた。お互い『おめでとう』と言ってすごくいい雰囲気。笠松のようにアットホームな競馬場でした」。熱い声援は松本騎手、青梅騎手らの背中を押した。
松本騎手と共に明星騎手も笠松ラウンドの成績次第で「ファイナリスト」への道が開ける。「けがをせず、とにかく無事で乗り切ってもらえれば」と2人同時のファイナル進出にも期待を込めていた。

第2戦、パドックで騎乗に向かうヤングジョッキーたち
西日本トライアルラウンドは残り3戦。園田(10月16日)金沢(同21日)、笠松(同23日)。ファイナルラウンドは園田(12月18日)、中京(同20日)と続く。また10月11日の「笠松けいば秋まつり」ではヤングジョッキー紹介のステージイベントとして、明星騎手と8月にデビューした井口裕貴騎手(30)も登場し、楽しいトークを披露する。
■YJS・西日本地区順位(P=ポイント)
☆地方ジョッキー
①松本一心 (笠松)74P②青海大樹(佐賀)52P
③阿部基嗣 (高知)28P④塩津璃菜(兵庫)24P
⑤明星晴大 (笠松)23P⑥土方颯太(兵庫)21P
⑦山本屋太三(兵庫)11P⑧城野慈尚(高知)10P
⑨新庄海誠 (兵庫)7P⑩髙橋愛叶(兵庫)5P
☆JRAジョッキー
①西塚洸二 50P ②大久保 友雅49P ③河原田菜々38P
④古川奈穂 37P ⑤松本 大輝 32P ⑥高杉吏麒 32P
⑦鷲頭虎太 32P ⑧吉村 誠之助30P ⑨川端海翼 25P
⑩和田陽希 16P ⑪柴田 裕一郎16P ⑪今村聖奈 16P
⑬橋木太希 16P ⑭田山 旺佑 14P ⑮森田誠也 5P
☆ファンの声を募集
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(筆者・ハヤヒデ)電子メール ogurinosato38hayahide@gmail.com までお願いします。
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「1聖地編」「2新風編」「3熱狂編」に続く第4弾「挑戦編」では、笠松の人馬の全国、中央、海外への挑戦を追った。巻頭で「シンデレラグレイ賞でウマ娘ファン感激」、続いて「地方馬の中央初Vは、笠松の馬だった」を特集。
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