
いしがきマイラーズを制覇し、岩手競馬「ドラウマチック 2025」の勝利騎手インタビューを受ける渡辺竜也騎手
笠松の若大将・渡辺竜也騎手が岩手競馬・盛岡で快進撃。芝コースの重賞レースで3連勝というすごい戦績を刻んだ。このうち1頭は地元・笠松から果敢にチャレンジした笹野博司厩舎のプチプラージュで、ゴール前の激戦を制し大きな1勝となった。
■41日間に他場4重賞制覇「笠松に渡辺竜也あり」
盛岡競馬場は地方競馬で唯一芝コースがあり、重賞レースなどを実施している。渡辺騎手は笠松競馬の馬場改修(2カ月間)とともに他場に積極参戦。北海道での1勝を含め、わずか41日間に他場重賞4勝と大ブレーク。応援する渡辺ファンらを喜ばせた。岩手競馬の優勝騎手インタビューでも「笠松に渡辺竜也あり」とたたえられ、全国区で成長した姿を猛アピール。地方重賞勝利を「17」に伸ばした。
当欄「オグリの里」では、渡辺騎手の今年の目標として「目指せ重賞ハンター」と提案していたが、期待以上の結果を連発。全国の競馬ファンに、金沢の吉原寛人騎手のように各地を飛び回る「さすらいの重賞ハンター」ぶりを印象づけた。昨年末、笠松グランプリをストリーム(北海道・田中淳司厩舎)で勝ったことで、その手腕への評価も高まっていた。
■「芝コースは好きですね」
今夏は東北、北海道遠征で猛爆した渡辺騎手。いずれも道中3、4番手の好位につけて最後の直線勝負で飾った重賞4勝について聞いた。
「芝コースは好きですね」とダート以上に乗り心地の良さを実感。4コーナーまでその馬のリズムで、追い出しを我慢して乗った。「最後の直線は距離があり、十分間に合い、抜け出せた」と自らの手綱に好感触。芝コースとはルーキーの頃から相性が良く、中山でのヤングジョッキーズシリーズ・ファイナル(2年連続出場)では2着、3着と好騎乗があった。「芝が得意だねえ」と聞くと、そうでもないようだったが、ダートに比べてスピード感が味わえて、ダイナミックなフットワークで差し切る感覚は最高に気持ちがいいことだろう。

いしがきマイラーズ(盛岡)でシャイニーロックに騎乗し、芝レース初優勝を飾った渡辺騎手(岩手県競馬組合提供)
■ いしがきマイラーズ(盛岡)「芝ではじけたかった」
渡辺騎手の全国遠征は、笠松馬場改修入り後の佐賀からスタート(6月29日)。初戦の2歳戦で勝利を挙げて好ダッシュ。佐賀ユースカップは7着だったが、名古屋、金沢を含めて列島縦断のチャレンジへと旅立った。
7月15日、盛岡の芝重賞「いしがきマイラーズ」(M3、芝1600メートル)を圧勝した。1番人気に推されたシャイニーロック(牡9歳、佐々木由則厩舎)に騎乗。好位からメンバー最速の35秒9(上がり3F)で豪快に差し切り。2着馬に6馬身差をつけて、渡辺騎手は岩手競馬初勝利。盛岡の芝コースは 最大高低差4.6メートルで、最後の直線の上り坂が勝負どころ。ゴールまでの直線は300メートルと地方競馬では長く、差しも決まる馬場だ。
優勝インタビューで渡辺騎手。「3コーナーでも脚がたまっていて、どこからでも動ける手応え。直線でうまく外に出したら、はじけてくれた。芝はJRAで何度か経験済みでしたが、初めての盛岡芝ではじけてみたいと思っていたから、その感覚を味わって勝つことができて最高の気持ちです。馬は120点の出来で厩務員さんの仕上げにも感謝したいです」と喜びをかみしめた。「他場で勝つことが笠松の宣伝にもなるので、盛岡の方も全国の方も笠松に足を運んで応援してください」と呼び掛けた。
このレースには、笠松重賞でもよく勝っている吉原寛人騎手も参戦。3コーナーからまくり気味に上がっていく積極策。結果は3着に終わったが思い切った騎乗で場内を沸かせた。そんな吉原騎手とは談笑したりしながら学べることを吸収。今後も全国の重賞戦線でお互い良きライバルとして地方競馬を盛り上げてくれそうだ。

ポラリスサマースプリントで門別初勝利を挙げた渡辺騎手。デステージョに騎乗し、最後の直線ではじけた(ホッカイドウ競馬提供)
■ポラリスサマーSで門別初勝利「北海道民の方も笠松競馬場に遊びに来て」
7月31日、門別のポラリスサマースプリント(H3、ダート1200メートル)でも1番人気デステージョ(牡5歳、小国博行厩舎)に騎乗。4番手から最後は大外からストリームを差し切り、2馬身半でゴール。渡辺騎手は門別初勝利も重賞で飾った。笠松グランプリVでは渡辺騎手が手綱を握ったストリームとのワンツーとなった。
「『直線はじけるぞ』と聞いていた通り、馬が反応してくれた。自分が今まで乗った中でも一番と言っていいほどで気持ち良かった。門別はずっと来たい競馬場で、チャンスを頂けて結果を残せてホッとしています」。最後、ファンへのアピールでは「北海道民の方も笠松競馬場に遊びに来てください」と馬産地で呼び掛けて、いつも地元・笠松を大切にする渡辺騎手らしさが伝わってきた。
笠松の馬場改修(2カ月間のレース休止)では、藤原幹生騎手が船橋で期間限定騎乗(8月末まで)。渡辺騎手も北の大地での短期騎乗を希望していたが、毎日の調教を優先。遠征という形で道営馬での重賞参戦の夢がかない、優勝という最高の結果を残すことができた。好位につけて抜け出す競馬で、小国博行調教師も「指示通りで、ジョッキーがうまく乗ってくれました」とたたえ、重賞2勝目を喜んだ。
それにしても盛岡、門別の重賞で、1番人気の地元馬に笠松のジョッキーが騎乗依頼を受けることは素晴らしいことだ。そして、その期待に応えて勝っちゃうところが渡辺騎手のすごいところ。地元ジョッキーは面白くないだろうが、笠松では園田や名古屋の人馬に重賞Vをさらわれることが多かっただけに「リベンジ」ともいえる痛快さはある。
日頃は笠松で1番人気馬でバンバン勝利を量産しているが、プレッシャーをも力にして、他場の重賞をあっさりと制覇する姿は、笠松ファンも誇らしいく感じている。

盛岡・オパールカップでは笠松の渡辺騎手&プチプラージュが勝負強さを発揮。人馬一体、鮮やかに芝重賞を制覇した(岩手県競馬組合提供)
■プチプラージュ差し返しクビ差勝利「勝負根性を見せた」
8月5日、盛岡の3歳重賞オパールカップ(M2、芝1700メートル)では、笠松自厩舎の7番人気プチプラージュ(牝3歳、笹野博司厩舎)で快挙。ラスト100を切ってからの競り合いで勝負強さを発揮し制覇。ネット動画などで画面越しに応援したファンらを喜ばせた。
プチプラージュは7月の兼六園スプリントでは5着だったが、芝への高い適性を披露してくれた。好位追走から最後の直線ではいったん前に出た後、3番人気ダックワーズにかわされたが、インから差し返してクビ差先着。渡辺騎手は右手で力強くガッツポーズ、歓喜に浸った。プチプラージュは昨年の金沢シンデレラカップに続き重賞2勝目を飾った。父ストロングリターン、母ラッシュストームという血統。今回が初めての芝レースで、いきなりの重賞制覇となった。

芝の重賞レースで鮮やかに差し切り、優勝を飾ったプチプラージュ(岩手県競馬組合提供)
■「攻め馬から乗っている馬で、うれしくてガッツポーズ出た」
渡辺騎手は「初めての馬場と芝で馬もそわそわしている感じでしたが、外枠から作戦通りの位置が取れて、仕掛けに素直に反応してくれた。直線ではダックワースが前に出た瞬間もあったが、それに反応して強い勝負根性を見せてくれた。攻め馬からずっと乗っている馬で、勝ててうれしくてガッツポーズが出た。初めての左回り、芝でも器用に立ち回って頑張ってくれた」と愛馬の勝負根性をたたえた。
笹野博司調教師は「未経験の芝に挑戦し、金沢遠征の反動もなく、いい状態で臨めた。外枠からうまく内に入れていいポジションを取ったのも勝因。渡辺騎手が、いしがきマイラーズを勝っていた経験も大きく、同じような位置でレースを進めていた。盛岡の芝が合うのを確認できたので、チャンスがあればまた来たい」と芝コースに手応えをつかんでいた。
このレースには筒井勇介騎手も参戦しマナホクラニ(岩手)で6着、塚本征吾騎手はリョーマ(伊藤強一厩舎)で12着だった。
■OROカップ、シャイニーロックで重賞連勝
8月24日、盛岡・OROカップ(M1,芝1700メートル)では、渡辺騎手は1番人気シャイニーロックに騎乗し、いしがきマイラーズに続いて重賞2連勝を飾った。道中は5番手から3番手にポジションを上げて、最後は上がり最速(3F)で駆け上がり、高橋悠里騎手騎乗のゴールドギアに2馬身半差をつけてゴール。さらにハナ差3着には、米GⅠ・サンタアニタダービー2着のマンダリンヒーロー(大井)が入った。渡辺騎手は3Rでも勝っており、1日2勝と活躍した。

盛岡・OROカップでも突き抜けた。シャイニーロックで重賞連勝を飾った渡辺騎手(岩手県競馬組合提供)
渡辺騎手は「前走時よりもレースが流れそうなメンバーだったので、仕掛けどころのタイミングが難しいかなと。自分が思っていた通りに進んで反応してくれた馬を一番褒めてあげたい」と9歳馬シャイニーロックの頑張りに感謝した。
「ガッツポーズは、前回勝った時に今回の騎乗の依頼をもらってて、その時からの長いプレッシャーとか関係者への感謝とか含めて出ました。これからも依頼があればもっと岩手競馬に来たいし、全国各地にも行きたいので、笠松、岩手に限らず全国のファンの皆さん、応援よろしくお願いします」と全国の重賞戦線での飛躍を誓った。
佐々木由則調教師は「射程圏に入れて進めてほしいと伝え、鞍上がうまく乗ってくれた。馬も9歳だけどよく頑張ってくれて頭が下がります」と人馬の健闘をたたえた。
■四つの重賞制覇「依頼されて勝って、全部うれしい」
岩手競馬は笠松のジョッキーにとっても相性の良いコースだ。古くは安藤勝己騎手がトミシノポルンガでダービーグランプリ(1992年・水沢)を制覇。「鉄の女」と呼ばれたトウホクビジンでは佐藤友則騎手が絆カップ(2012年・盛岡)、シアンモア記念(13年・盛岡)を優勝。兵庫時代の松本剛志騎手はダズンフラワーに騎乗し、ジュニアグランプリ(16年・盛岡)で重賞初Vを飾っている。
岩手のラブバレット(山本聡哉騎手)は笠松グランプリ3連覇を達成。1400メートル1分23秒6は今なおコースレコードとして出馬表に刻まれている。笠松と岩手、ともに名馬を輩出し、経営難の苦しい時代にも存続を死守してきた地方競馬同士の絆が脈々と受け継がれてきた。
今夏、盛岡など他場での四つの重賞制覇のうち、一番印象に残っているレースをあえて聞くと、渡辺騎手は「全部どれも、うれしいです。依頼されて勝っているんですから。シャイニーロックが賞金は一番あったが(OROカップ、1着1000万円)」とニヤリ。隣では同じV字の勝負服で仲のいい塚本征吾騎手も笑いながら「いまの書いといてくださいよ。一番賞金があったレース、確かにガッツポーズ出てましたね」とガヤガヤ、和やかでリラックスムードに包まれていた。

撫子争覇をエイシンジョルトで勝ちガッツポーズ。笠松重賞初Ⅴを決めた塚本征吾騎手
■塚本征吾騎手は撫子争覇で悲願の笠松重賞初Ⅴ
この直後の8R、人気薄で勝った塚本征吾騎手。メインの牝馬重賞「撫子争覇」(SPⅢ、1400メートル)では3番人気エイシンジョルト(牝4歳、笹野博司厩舎)に騎乗し、2番手から追走。ハナを切った11番人気チュウワスプリング(牝5歳、加藤幸保厩舎)を差し切り、待望の笠松重賞初Ⅴを達成。ゴールではステッキを手にした右手で力強いガッツポーズも見せた。こちらは1着賞金300万円だったが、悲願達成に歓喜の一瞬となった。
重賞は自身5勝目だが、笠松ではコンビーノで岐阜金賞など重賞2着4回と「シルバー」も多かっただけに、うれしさを爆発させた。表彰式では「すごくいい馬に乗させていただいていたので、勝ってホッとしました。最後、ゴール前で一伸びしてくれた」とファンの前でお立ち台からの景色を楽しんで、色紙へのサインにも応えていた。渡辺騎手はくろゆり賞で0秒2差6着に好走した1番人気エイシンコソンテ(牝4歳、笹野博司厩舎)に騎乗したが、伸びを欠いて12着に終わった。同厩舎でも明暗が分かれたが、夏場のコンディションづくりの難しさもあったようだ。

撫子争覇を勝ったエイシンジョルトと喜びの関係者
■他場1番人気馬に騎乗する渡辺騎手、厩舎・馬主の信頼厚い
プチプラージュは全国の重賞戦線でも今後活躍できそうだし、渡辺騎手は重賞ハンターとしての期待も高まり「依頼を頂ければ」と、全国どこへでも駆け付ける意欲も高い。1番人気馬に他場のジョッキーが騎乗するのは、厩舎・馬主さんサイドの信頼が厚く、地場のジョッキー以上の評価を受けたからこそで素晴らしいことだ。
かつてのアンカツさんのように笠松での「常勝男」が、その小さな枠だけでは収まらず、渡辺騎手も全国へ、JRAのレースへと活躍の場を広げていくのは自然の流れでもある。渡辺騎手も重賞1番人気で「プレッシャーはありますよ」というが、盛岡、門別ではファンの期待に応えて3勝を飾った。今夏の快進撃は、ジョッキー人生のターニングポイントになり「重賞ハンター」として全国の競馬場で活躍の場を広げていく。最後の直線でもステッキ使用は最小限で、しなやかな追いっぷりは本当に頼もしい。
ここ3年ほどは、笠松最多の勝利数や勝率の高さをモチベーションにしてきた。2年連続全国トップが期待される勝率については「あんまり気にしていないです」と淡々。「今年の明確な目標は見えてきたか」と聞くと「特にないです。目の前の1勝を追い掛けています」とさらりとした答え。自然体でコツコツと勝利を積み重ねていくスタイルだ。
デビューして8年余り。今後は全国のダートグレード戦線や、芝の走りがいいプチプラージュとのコンビでは、JRAのレースにもチャレンジしていきたい。2歳時にJRA認定競走を勝っている馬で、笹野調教師も「中央初勝利」を目標の一つに掲げており、巡ってくるチャンスを生かしたい。

渡辺騎手の地方競馬通算1100勝を地元ファンらが祝ったセレモニー(笠松競馬提供)
■笠松では地方通算1100勝達成「若手がすごく勝っていて、負けないように」
渡辺騎手は馬場改修明け初日の8月11日7R、自厩舎のジュエルドレーサー(牡4歳、笹野博司厩舎)で差し切り勝ち。地方競馬通算1100勝を達成した。
盛岡、門別などでの勝ち鞍や騎乗が増えていることについて「他場から声を掛けていただくことも増えてうれしいですし、北の方は涼しかったのでそれも良かったなと。一鞍でも多く勝ちたいし、もちろんその中で勝率も保てれば。またいろんな競馬場で乗せてもらい、応援していただけるとうれしいです。最近、名古屋と笠松の若手たちがすごく勝って、プレッシャーを感じているので、負けないように頑張りたい」と意欲を示した。
渡辺騎手もまだ25歳で十分に若いのだが、ジョッキー数が少ない笠松では実力者として「中堅」的な役割も果たしている。勢いのある10代の明星晴大騎手(笠松リーディング4位)、望月洵輝騎手(今年124勝)、21歳の塚本征吾騎手(今年160勝)にセレモニーで囲まれて気を引き締め直したようだ。

渡辺竜也騎手を応援する横断幕。笠松競馬場のスタンドに掲示された本人のサイン入りの1枚
■31日には中京競馬場で7鞍、芝レースにも注目
渡辺騎手は今年、地方競馬通算113勝を挙げており、勝率は30.5%で全国トップ。2位で続くのは赤岡修次騎手(高知)の29.6%。昨年、NARの最優秀勝率騎手賞に輝き、2年連続でのタイトル奪取も十分に狙え、笠松再開で固め打ちが増えれば勝率もどんどんアップできそうだ。
場内ではパドックやゴール前の東スタンドに掲示される応援団の横断幕も増えている。渡辺騎手らを応援する笠松ファンが「勝利に向かって燃えよ 笠松のドラゴン」などと掲げ、地元ジョッキーの活躍を願っている。
8月31日(日)には中京競馬場でJRAのレースにも参戦。伊藤強一厩舎のメイプルギンが1勝クラス(芝1600メートル)に出走し、渡辺騎手は計7鞍に騎乗予定。このうち芝レースが4鞍あり、どんなパフォーマンスを見せてくれるのか注目したい。
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(筆者・ハヤヒデ)電子メール ogurinosato38hayahide@gmail.com までお願いします。
☆最新刊「オグリの里4挑戦編」も好評発売中
「1聖地編」「2新風編」「3熱狂編」に続く第4弾「挑戦編」では、笠松の人馬の全国、中央、海外への挑戦を追った。巻頭で「シンデレラグレイ賞でウマ娘ファン感激」、続いて「地方馬の中央初Vは、笠松の馬だった」を特集。
林秀行(ハヤヒデ)著、A5判カラー、196ページ、1500円(税込み)。岐阜新聞社発行。笠松競馬場内・丸金食堂、ふらっと笠松(名鉄笠松駅)、ホース・ファクトリー(ネットショップ)、酒の浪漫亭(同)、岐阜市内・近郊の書店、岐阜新聞社出版室などで発売。岐阜県笠松町のふるさと納税・返礼品にも。