昨年11月8日のこと。この日は年に1回の勝負の日だ。私の推しである石坂浩二さんが、プラモデル愛好家グループ「ろうがんず」を主宰しており、毎年冬にその展示会が行われるのだ。もちろん石坂さんも終日展示会場にいらっしゃり、入場は無料。交通費と食事代だけで憧れの石坂浩二さん制作のプラモも見られるわ、ツーショットも撮れるわ、お話もできるわでファンとしては出血大サービスのイベントである。

 実は一昨年、会場で明らかにプラモ以外にときめいている女性を見つけ、「石坂浩二さん推しですか?」と声をかけさせていただいた。彼女はマイムさんといい、今回は石坂浩二同担2人で会場を巡ることになった。石坂さんに2人がかりでお話させていただき、2人でフィギュアの色つけにも挑戦。といってもイベントは午前10時から午後5時まで。できるだけ石坂浩二さんと同じ空間にいたいが、ずっと展示会場にいるには無理がある。

撮影・三品鐘

 彼女とお昼休憩やお茶休憩に一緒に抜け「石坂浩二を鑑賞する時間」と「石坂浩二愛について語り合う時間」を交互に体験した。まさに幸福の極みである。石坂浩二ファンはジャニーズや宝塚と比べてはメジャーでなく、同担を見つけただけで嬉(うれ)しい。

 「石坂浩二さんは森羅万象につながっているんです」と、マイムさんは真剣に言う。「石坂浩二さんがろうがんずのイベントで、ポケットに天然水のいろはすを入れていて、だから……いろはすを飲むたびに石坂浩二さんのことを思い出しちゃうんです」

 「そんなのもうなんでもありじゃないですか……!?」。思わず叫ぶ。

 「そんなんだったら石見たら石坂浩二さんのこと思い出しちゃうし、坂みても石坂浩二さんのこと思い出しちゃうし、工事中の建物見ても思い出しかねんじゃないですか……!」

 マイムさんは嬉しそうに笑った。「だから森羅万象は石坂浩二さんにつながってるんですよ」

 もうここまでぞっこんになったら、どんな声も届かないだろう。そう思うと石坂浩二さんの魅力の空恐ろしさを感じつつ、幸せな人生を歩んでいるよなあと思う。

 そんな中、午後のスペシャルトークイベントで石坂浩二さんのスニーカーがリーボックだということを知った。リーボックか…。対して知識がないのにリーボックのイメージが途端に良くなる。だって石坂浩二さんが履いている。これで私もリーボックを見るたびに、石坂浩二さんを思い出すようになってしまった。やっぱり森羅万象は石坂浩二さんにつながっている。


 のぐち・あやこ 1987年、岐阜市生まれ。「幻桃」「未来」短歌会会員。2006年、「カシスドロップ」で第49回短歌研究新人賞。08年、岐阜市芸術文化奨励賞。10年、第1歌集「くびすじの欠片」で第54回現代歌人協会賞。作歌のほか、音楽などの他ジャンルと朗読活動もする。名古屋市在住。

写真家・三品鐘さんのホームページはこちら