土産用の子持ち鮎のなれずし。試食した同僚からは「酒に合う」との声も
子持ち鮎のなれずしやアレンジ商品を紹介する泉善七社長=岐阜市元浜町、川原町泉屋

 長良川では鵜飼シーズン真っただ中。鵜飼と言えば鮎。伝統的な保存発酵食「鮎のなれずし(熟鮨)」は、次世代に伝えたい岐阜の食文化だ。

 作り方は、内臓を取り除いて塩漬けにした鮎の腹に、炊き立てのご飯を詰めて、たるで漬け込み自然発酵させる。捕獲時期が限られている川魚の保存食として、古くから鵜匠宅などで作られてきた。

 雄を使うのが一般的で、独特の酸味が特徴。岐阜市の川原町泉屋では、卵を抱いた「子持ち鮎」を内臓ごと漬けることで、まろやかな味わいを実現させた。店を運営する泉屋物産店の泉善七社長(55)が30年ほど前、雌を使った鮒(ふな)ずしの製法から着想を得た。約半年間塩漬けにしてから塩抜きした子持ち鮎約200匹と、ご飯約20キロを杉だるに折り重ねるように詰め、さらに半年以上漬け込んで発酵させる。内臓ごと漬けるため「腹部が溶けてしまってうまくいかず、試行錯誤した。商品化まで何年もかかった」という。

 店内メニューには、天然の雄と子持ち鮎の盛り合わせもある。食べ比べてみると、雄の方は酸味が強めで、子持ち鮎はマイルドな味わいが口に広がる。泉社長は「内臓から出るうまみにより、まろやかで食べやすくなっている。岐阜でもなれずしを知らない人が多くなったが、確信を持っておいしいと言えるので、鮎料理の中の一品として試してみて」と話す。

 なれずしに使った塩やご飯は、煮込み料理に活用したり、サワークリームなどと合わせて瓶詰め商品にしたりと、アレンジする。「鮎のエキスがご飯や塩に染み込んでおり、うまみが違う。捨てないことでSDGs(国連の持続可能な開発目標)にも取り組める」と泉社長。お土産用では「子持鮎熟れ寿し」8切れ入りが1620円、「鮎の白熟クリーム」は60グラム入り瓶1080円などが店内に並んでいる。

 長良川鵜飼の歴史は1300年以上と言われ、江戸期には鵜飼で獲れた鮎を使った鮎鮓(ずし)(なれずし)が将軍家へ献上された。今年には、岐阜市の「鵜匠家に伝わる鮎鮨(ずし)」が、地域に根付く食文化として文化庁の「100年フード」に認定された。鵜匠家によって伝わる味もさまざま。鵜飼見物に合わせて、歴史の“味力”も堪能してみてはいかが。