7月9日に開幕する第104回全国高校野球選手権岐阜大会。2年前は新型コロナウイルス感染拡大で夏の甲子園大会が中止となり、県独自大会を開催したが、今年の岐阜大会は観客の人数制限の撤廃や吹奏楽部の生演奏など、コロナ禍以前の姿が徐々に戻りつつある。夏の風物詩“高校野球”を多くのファンが楽しみにする中、コロナ禍での練習環境の変化でホームラン数が減るとの見方がある。

 今春、選抜新記録の11本塁打をたたき出すなど、圧倒的な打力の差を見せつけて優勝した大阪桐蔭。しかし、大会全体の本塁打数は18。監督が父森士から息子の大へ変わり、打撃強化に取り組んだ浦和学院(埼玉)が4本塁打を放っており、この2校で大会全体のほとんどの本塁打を記録していることになる。また、昨夏の甲子園での本塁打数は36。2017年の大会新記録68本以降、18、19年は50本前後だったことを考えると、全体的に長打力が低下していると推測できる。

 要因の一つには、新型コロナによる練習不足が挙げられる。現在の3年生は、高校入学時からコロナ禍に見舞われ、部活動が何カ月も遅れた。その後も国の緊急事態宣言などで部活動が制限され、思うように練習を積めなかった。昨夏の岐阜大会覇者県岐阜商の鍛治舎巧監督は「例年はトレーニングに費やす冬場も経験不足から実戦練習を多く行った学校も少なくないと思う。その分、体作りが十分できていないのでは」と指摘する。

 県内でも同様の現象が起きており、今チームでの昨秋、今春の県大会での1試合当たりの本塁打数はいずれも前年より減少。昨夏の1試合当たりの本塁打数は、それまでの0・5以上から0・379まで大きく減っており、鍛治舎監督は「練習試合なども減って公式戦で思い切り振れなくなり、当てにいくだけの打撃が目立つ」と分析する。

 今春の県大会を制した岐阜第一の田所孝二監督も「頭上を越えていく長打は明らかに減った」と同様の見解を示す。全国から有力選手が集まる同校でも、今チームで高校通算本塁打数が2桁の選手はいないといい「例年の3分の1くらいになった。練習だけでなく、練習試合も半分くらいに減っており、試合でしかつかめない遠くへ飛ばすコツをつかめていない選手がほとんど」と話す。

 それでも、コロナ禍で練習できない分、プロ選手の動画を見て自身の打撃フォームに取り入れられる選手は増えたといい、田所監督は「頭を使えて、理論的に考える選手は増えた。あとは量を積んでコツをつかんでもらえれば」と、開幕まで残り2週間での伸びしろに期待している。

 県岐阜商では、緩い簡単なボールで打撃練習を繰り返すことで、強く、遠くへ飛ばすためのポイントを徐々に多くの選手がつかんできた。鍛治舎監督は「ホームラン数も春の県大会以降は増えてきている」と自信をのぞかせる。

 新型コロナウイルスという見えない敵に高校生活のほとんどを苦しめられながらも、甲子園という夢を追い続けた現3年生。誰もが予想できなかった“日常”に耐え抜き、ここまでたどり着いた球児たちが、どんな集大成の姿を見せてくれるかも今夏ならではの楽しみの一つになりそうだ。