新聞作りの歴史を学ぶ山県市立富岡小学校5年生=岐阜新聞本社
6年生から「富小六つの伝統」を引き継ぐ5年生=山県市東深瀬、富岡小学校

県NIEアドバイザー山県市立富岡小教諭 奥田宣子

 「メディアの裏側の世界」「情報を伝える仕事の秘密」「知らないことがいっぱい」。これは、岐阜新聞社と岐阜放送を見学した山県市立富岡小学校5年生の子どもたちが書いた新聞の見出しである。

 新聞の見出しは、相手意識を持ち、短い言葉で、自分が一番伝えたいことが分かることが大切である。5年生の子どもたちは、朝の会で新聞を使ってスピーチをしたり、新聞を活用した毎日10分間のドリルタイムで見出しを考えたりしている経験から、文面を書き終えた後に、内容をキーワードに置き換え、見出しを考えた。

 日常的に新聞が身近な存在となり、子どもたちの言葉に対する意識が高まってきたように感じる。人は、誰に何を伝えるのか、目的をはっきりさせることで、より一層言葉を吟味する。しかし、子どもたちは新聞活用の経験を積み重ねたことによって、端的に伝える言葉を選択する力を身に付けた。継続的な経験が子どもたちの中に根付き、言葉に対する敏感さを磨いた。

 この子どもたちが書き上げた新聞には、「情報を速く正確に届けることは、新聞社と放送局の両者が最も大事にしていること。そのために現場に足を運び、取材をする。そして新聞社は限られた紙面の中で、放送局は限られた時間の中で社会に伝えている。この伝え方に違いはあるものの、決して間違った情報を流していない」と書かれている。正しい情報を素早く伝える両者の役割を、それぞれの特長からまとめた。

 また子どもたちは、国語の「ニュース番組作りの現場から」の中に、6時間分の映像を8分にまとめると書いてある部分に着目し、放送局は大量の情報を集約して番組を作っていることを知った。

 さらに、社会科の「情報化した社会とわたしたちの生活」には、実際の新聞記事が多く載っている。中でも「新聞社の働き」では、被災地の避難所(宮城県石巻市)で熱心に新聞を読む人の写真と共に、3月11日に起こった東日本大震災の後、停電でテレビが見られず、電話が通じない中、新聞は被災地の人々にとって貴重な情報源となったと書いてある。新聞が人の支えとなったことに、子どもたちは心を動かした。情報が届かない社会ほど、不安なことはない。「どんなことも知りたい」という情報収集欲は誰もが持っている。新聞を広げ、夢中になって記事を読む被災地の人の姿から、子どもたちは、正しい情報をきちんと伝えることの意味を深く考えた。

 言葉や文字には、人を安心させる大きな役割がある。しかし伝え方次第で、不安感を抱くことがある。新聞社と放送局の見学を通して、改めて伝えることの重みを学んだ5年生。2月21日「6年生ありがとうの会」では、全校をリードしてきた6年生に感謝し、富岡小六つの伝統を引き継ぎ、決意を伝えた。

 自分の気持ちを伝える言葉や文字。そのたった一言、たった一文字が大きな意味をもち、大切な仲間の大きなエネルギーとなっていく。