オグリキャップ姿のウマ娘4人

 走った!撮った!食った! ここは36年前、オグリキャップがデビューし、調教やレースで蹄跡を刻んだ笠松競馬場。1月29日、その聖地にコスプレ・ウマ娘の女神たちが降臨。50メートル走で、ダートコースの深い砂と格闘しながら、ゴールを目指して完走。撮影会も開かれ、ウマ娘の「トレーナー」たちが決めポーズを激写。オグリは「大食いキャラ」でもあり、参加者は笠松グルメも堪能し、完食していた。

レースに出場した参加者全員。「夢がかなった」と笑顔があふれていた

 オグリキャップのサクセスストーリーを描いた人気漫画「ウマ娘シンデレラグレイ」。2020年6月、笠松競馬場を舞台にして始まり、中央でもライバルたちとの死闘を続けている。昨年4月には笠松で芦毛馬限定のコラボレースが開かれた。10~20代の若者で場内が埋まり、深沢杏花騎手が騎乗した牝馬ヤマニンカホンの逃げ切りVに大きな拍手が鳴り響いた。

 ■ウマ娘たちが続々と集結、町長もコスプレ

 今回のコスプレイベントは「仮装deレース&撮影会」として笠松町が主催し、県地方競馬組合などが協力した。馬場を2周する新春ファミリーマラソン大会に続いて、ウマ娘たちのイベントが華やかに幕開け。東海3県をはじめ神奈川、東京、富山、兵庫など全国から「ウマ娘 プリティーダービー」の実装キャラたちが参戦。出走取り消しもあったが、ウマ娘やかぶり物などで仮装した計28人がレースに挑んだ。

レース前に集結したウマ娘たち

 スタンド前には、レースを控えたウマ娘たちがコスプレ姿で続々と集結。そこに現れたのが「ウマ娘シンデレラグレイ」に登場している六平(むさか)銀治郎のコスプレ姿をした男性。ウマ娘には優しい中央のベテラントレーナーだが、これが何と古田聖人笠松町長というサプライズ。スタートを待つ参加者ともミニ撮影会で交流。一連の不祥事やコロナ禍で先送りとなっていたが、ウマ娘たちとのコラボイベント開催の夢をかなえた。笠松町の知名度アップにもなり、町おこしとしても「オグリの聖地・笠松競馬場」の魅力を全国にアピール。レース発走ではスターターも務めた。

オグリキャップの聖地で、一斉にスタートするウマ娘たち

 ■「カサマツトレセン学園」のオグリをイメージ

 岐阜市の20代女性は「ウマ娘シンデレラグレイ」の第1作から登場した「カサマツトレセン学園」時代のオグリキャップをイメージ。笠松競馬場でのトレーニングなどで着ていたジャージー姿で参戦。3日前には「笠松でオマタセシマシタが勝ったことを速報で知って、泣きそうになりました」という地元ファン。「短距離は向いてないですが、交流イベントやレース後のグルメも楽しみたい。岐阜が大好きで、笠松競馬を盛り上げる一人になりたい」と意欲満々でレースにチャレンジした。

 コスプレ撮影はレース前から大盛り上がり。「オグリキャップ」はやはり最大勢力で、男女合わせて10人が参戦。このほかゴールドシップ、トウカイテイオー、サトノダイヤモンド、ディクタストライカ(サッカーボーイ)、コパノリッキーなど中央GⅠ馬がずらり。それぞれの発走時間が刻一刻と迫っていた。

華麗な勝負服に身を包み、ゴールへダッシュするウマ娘たち

 ■華麗なウマ娘の勝負服でダッシュ

 好天にも恵まれ、参加者は3レースに分かれてゴールを目指した。内馬場にあるパドック前のダートコース。華麗なウマ娘の勝負服などに身を包んで「日本一のウマ娘」目指して、スターターの号砲とともに一斉にスタート。笠松時代のオグリキャップも走りまくった同じコースで、深い砂に悪戦苦闘しながら、栄光のゴールへとダッシュ。想像以上の難コースに、ゴール前で足がもつれて転倒する者も相次いだ。それでも、撮影者・同行者たちから「頑張れ、頑張れー」と熱い声援を受けて、何とか全員無事完走を果たし、拍手と歓声に包まれた。

深い砂に悪戦苦闘し、転倒者も相次いだ

 ■ゴールドシップ「砂浜みたいでびっくり」

 ゴールドシップのコスプレには愛知の女性が夫婦で挑戦。夫が現役時代の今浪隆利厩務員役を務めた。GⅠで6勝の名馬だが、宝塚記念ではゲートで立ち上がって大きく出遅れたりと「迷馬」ぶりでも人気を集めた。笠松では第3レースに登場したゴールドシップは転びそうになって、2人とも後方のままだったが、何とかゴールまで走り切った。
      

発馬機での撮影会。ゴールドシップ(右)は夫婦でスタート練習に励んだ

 レース後には「砂浜みたいでびっくりしました。踏み込めないし、楽だろうと思っていた自分をぶん殴りたい。馬さん、すごいな」と深い砂に苦しめられたようだ。一緒に走った厩務員役の夫も「砂が重くてつらかった。運動不足で足がつったし、内ももを痛めた。マラソン大会の参加者は2周してすごい」と。笠松コースの砂の厚みは10センチほどだが、深く沈み込んできついレースになった。

 仲間の撮影者や同行者もコース内立ち入りが可能になり、ウマ娘たちの撮影会がスタートした。ゴール後のゴールドシップは、笠松コースでのフォームなどを再チェック。発馬機を使ったゲート練習ではゴールドシップの背中に厩務員が騎乗。立ち上がるゲート難がないように、人馬一体で熱のこもったスタート練習を繰り返していた。

「みんなオグリキャップ杯」のスタートシーン

 ■「みんなオグリキャップ杯」も実現

 撮影会では、一斉にゲートを飛び出すシーンが大盛り上がり。「いっぱいいるオグリキャップだけのレースを」と撮影者からリクエストもあり、その場で「みんなオグリキャップ杯だな」とゲートインが実現。1番から8番ゲートまで全員オグリで、スタートのタイミングや飛び出し方をチェックしながら、思い思いのポーズでコスプレ撮影会を楽しんでいた。

パドックでも記念撮影が行われた

 多治見市から参加した女性2人はオグリキャップとサトノダイヤモンド姿。「笠松競馬場でコスプレをする夢がかなった。(コースは)ふかふかでびっくりしたし、大変でしたが、楽しかったです」とパドックでの写真撮影にも笑顔で応えていた。 

 ■「オグリがここで走ったんだなあ」と感激

 聖地巡礼の一環でもあり、男性陣のウマ娘も多数参加。「ここでオグリが走ったんだなあと感無量です」「中央に殴り込んで、有馬記念を2度勝った。その発祥の地であり、貴重な体験になりました」と、オグリのコスプレをして走ることができて感激。ゴール直前で転んだ男性は「砂に足を取られて、もつれました。ゴールしても足が重い。でもいい思い出になりました」と、オグリがゴールした同じダートコースの砂の重みを体感していた。

オグリキャップ像ともコラボし、記念撮影を楽しんだ

 ■「大食いキャラ」通り、天ぷらうどん完食

 「岐阜市のオグリちゃん」は正門横のオグリ像や大きなパネルの前でも記念撮影。競馬場のシンボルであり、「元気と勇気」のパワースポットで、ポーズを決めていた。

 レース前には「がっつり系なんで、どて飯なんかも食べてみたい」と話しており、オグリの「大食いキャラ伝説」も探訪。1935年の笠松競馬場オープン当時から営業を続けている「マルキン」(丸金食堂)で食事を取った。

漫画にも登場した「マルキン」で天ぷらうどんを食べるウマ娘

 店内は昭和レトロ感が充満。「シンデレラグレイ」でオグリの宿敵・タマモクロスがきしめんを食べていた店は「うちですよ」と知らされると、漫画本を手にして大喜び。隣の席では人気の「どて飯」が振る舞われていたが、「寒いので」と天ぷらうどんを注文すると「うまいの一言。めちゃめちゃ、おいしいです」と、もちろん完食。レースや記念撮影に、グルメも楽しんで「また笠松競馬場へ来たい」とコスプレイベントに大満足の一日となった。

ご当地グルメをおいしそうに味わうウマ娘たち

 オグリキャップとコパノリッキー姿の女性2人は「ダートは走りにくかったですが、貴重な体験ができ、面白かった」とイベントを満喫し、レース後の撮影会でも目立っていた。特設ステージ前では唐揚げや大判焼きなどをおいしそうに食べながら、ご当地グルメの味も堪能していた。

表彰され、ポーズを決める各レースの優勝者

 ■優勝者3人と仮装優秀者を表彰「あー楽しかった」

 伝説のオグリコールから32年の時を超えて、ウマ娘コラボイベントでフィーバー再び。表彰式では六平トレーナー(古田町長)が「きょうは満足してもらえましたか。盛り上げていただき、今度はレースを見に来て、馬券も買ってみてください」とあいさつし、イベント成功に感謝した。

 各レースの優勝者3人と仮装優秀者10人には、馬券をアレンジした表彰式招待状も渡され、セレモニーで賞状が贈呈された。この後、各表彰者に続いて参加者全員でも記念撮影。「好きです!笠松競馬」などのマフラータオルを持ったウマ娘たちはスマイル全開。「あー楽しかった」と聖地でのイベントを満喫していた。

「仮装優秀者」として表彰された参加者

 漫画「ウマ娘シンデレラグレイ」の連載は大ヒット。1月末の107話では、中央入り2年目のオグリキャップが、六平トレーナーにマイルCS参戦を懇願。人気作品でもあり、シンデレラストーリーはゆっくりと展開し、有馬記念でのラストランVは、かなり先になりそうだ。1991年1月、笠松競馬場ではオグリの引退セレモニーが開かれており、漫画でもデビューの地・笠松へ里帰りするシーンが描かれるのでは…。今年4月には「第2回ウマ娘シンデレラグレイ賞」の開催も期待されている。