整形外科医 今泉佳宣氏

 皆さんはモートン病という病気をご存じでしょうか。1876年にトーマス・モートン医師によって初めて報告された疾患です。

 足の裏の主に3番目と4番目の指(足趾(そくし))の間の付け根とそれらの足趾の向かい合う側に痛みやしびれを感じるのが特徴です。半数以上が3番目と4番目の足趾の間に生じ、次に2番目と3番目の間に生じやすいとされています。20~50代の女性に多く、歩いている時に針を刺したような鋭い痛みがあります。また歩いている時だけでなく、つま先立ちやしゃがみ込みで痛みが強くなり、靴を脱ぐだけで痛みが緩和することがあります。

 これは足の裏にあって足趾にいく神経が、足趾の付け根にある深横中足靭帯(しんおうちゅうそくじんたい)とこすれて摩擦性神経炎を起こすことが原因です=図=。ハイヒールなどの先が狭く、つま先立ち動作が強制されるような靴を履くと、足趾の付け根に荷重が集中して発症しやすくなります。

 このような状態で痛みを感じる部位を触ると偽神経腫と呼ばれる神経のこぶを触知することがあります。そしてそのこぶを押すと歩いている時と同じような痛みが再現されます。また、マルダー徴候といって足の母趾と小趾の付け根を両側から握り絞るようにすると、中足骨と呼ばれる骨の骨頭間が狭まり痛みが誘発されることがあります。

 治療法としては何よりも足に合った靴を履くことです。特に先の狭い靴は足趾全体の付け根を締め付けることになります。そしてかかとの高い靴は絶えず足趾の付け根に負担をかけることになります。したがって足先の狭い靴やかかとの高い靴は避けてください。ハイヒールのような靴がモートン病にとって良くないことは言うまでもありません。

 その他にインソールと呼ばれる靴の中敷きを使用したり、消炎鎮痛剤を内服したりすることもあります。痛みが著しい場合は神経に針を当てて局所麻酔薬やステロイド剤を注入する神経ブロックが有効です。靴の工夫や薬物療法が無効な場合は神経剝離術や神経切離術といった手術療法を行います。

(朝日大学保健医療学部教授)