盛岡でのジョッキーズチャンピオンシップに参戦した渡辺竜也騎手(笠松競馬提供)

 「優勝を目指して頑張ります」と渡辺竜也騎手。地方競馬最強ジョッキーを決める頂上決戦「ジョッキーズチャンピオンシップ」は7月6日、園田でファイナルステージが行われ、今年の王者が決まる。

 盛岡でのファーストステージ(5月23日)、笠松代表として初出場した渡辺騎手。第1戦5着、第2戦4着にまとめ、合計ポイントで4番手を追走する好位置につけた。トップへは射程距離で、逆転優勝も十分可能だ。

 各競馬場の勝利数トップ(昨年4月~今年3月)のジョッキー12人が出場。優勝者は8月26、27日に札幌で行われる「ワールドオールスタージョッキーズ(WASJ)」=国際騎手招待競走=の地方代表候補騎手に選定される。

盛岡1戦目、ヤマショウキャットに騎乗し5着だった渡辺騎手(笠松競馬提供)

 ■渡辺騎手5着、4着で掲示板を確保

 渡辺騎手は昨年、164勝を挙げて笠松歴代最多勝記録を塗り替えて初リーディングに輝いた。全国レベルのジョッキー戦は今年1月の「佐々木竹見カップジョッキーズグランプリ」で総合7位(12着、3着)と健闘。また17、18年のヤングジョッキーズ戦ではファイナルラウンドに進出し総合8、9位だった。 全国の名手が勢ぞろいし、厳しい戦いを経験してきたが、笠松競馬をアピールするためにも「表彰台」を狙っての奮闘を期待したい。

 盛岡では初戦がヤマショウキャットで後方から追い込んで5着。2戦目はナムラバンザイで好位から4着に踏ん張った。ともに人気通りだったが、着順掲示板を2回とも確保したのは12人中、渡辺騎手だけで堅実さをアピールした。

 昨年は岡部誠騎手が逃げ切って総合V。藤原幹生騎手が最終戦で勝ち、総合12位から10人抜きの快挙で準優勝。名古屋、笠松競馬代表がワンツーフィニッシュを飾った。今年も岡部騎手はもちろん、渡辺騎手への期待も高い。

 ■福原杏騎手1位、落合玄太騎手2位

 ファーストステージを終えて22P(ポイント)で総合4位の渡辺騎手。第2戦Vの福原杏騎手(浦和)が34Pで1位。第1戦Vの落合玄太騎手(北海道)が31Pで2位。宮川実騎手(高知)が22Pで3位(2着があり、渡辺騎手より上位)。昨年王者の岡部誠騎手(愛知)は16Pで9位。総合Vなら、さらにもうワンステージ。世界のトップジョッキーが集結する「夢の札幌」が待っている。

全国から盛岡に集結したトップジョッキー(笠松競馬提供)

 【ポイント順位】(ファーストステージ=盛岡)
 
 ①福原 杏(浦和) 34P(8着、1着)
 ②落合玄太(北海道)31P(1着、11着)
 ③宮川 実(高知) 22P(2着、9着)
 ④渡辺竜也(笠松) 22P(5着、4着)
 ⑤青柳正義(金沢) 21P(10着、2着)
 ⑥吉村智洋(兵庫) 16P(12着、3着)
 ⑦山口 勲(佐賀) 16P(3着、10着)
 ⑧矢野貴之(大井) 16P(4着、8着)
 ⑨岡部 誠(愛知) 16P(7着、5着)
 ⑩山崎誠士(川崎) 14P(6着、7着)
 ⑪山本聡哉(岩手) 10P(9着、6着)
 ⑫森 泰斗(船橋) 2P(11着、12着)
      (同点の場合は、最上位者を優先)

ジョッキーズチャンピオンシップで総合4位につけた渡辺騎手(笠松競馬提供)

 ■藤原騎手「前祝い」をやって、結果は準Ⅴ

 昨年は総合Vの岡部騎手が札幌でのWASJに参戦した。まずはファイナルステージへと向かう渡辺騎手は「(昨年2位の)藤原さんに続けるよう、もちろん優勝を目指して頑張ります。藤原さんには『前祝いをやったら』と言われました」という。

 前祝いとは何のことかと聞くと、藤原騎手が2位になった昨年の大会では「優勝おめでとう」を想定した前祝いとして「藤原さんの主催で食事へ連れていってもらいました」とか。

昨年、準優勝の藤原幹生騎手(左)と優勝の岡部誠騎手(埼玉県浦和競馬組合提供)

 「壮行会」を兼ねたものだったようだが、藤原騎手は「やるかやらないかで、抽選馬も変わってくるかも? 賞金も違ってくる」と冗談を交じえてにっこり。渡辺騎手は「藤原さん、(ファイナルの)浦和で勝ったんですよね。じゃあ僕も前祝いを早くやらなきゃいけないですね」と、笠松のトップジョッキー2人が仲の良いところを見せていた。藤原騎手は前祝いが良かったのか、ファイナル最終戦はくじ運にも恵まれての圧勝で準優勝。帰り支度をしていたのに、まさかの表彰式参加で、ご褒美の賞金もゲットできた。

 園田でのファイナルステージは、次の笠松競馬開催中に遠征となる。渡辺騎手にとって兵庫競馬は、ストーミーワンダー(2019年・姫山菊花賞)とニジイロ(21年・兵庫クイーンセレクション)で重賞2勝を飾った相性の良い地でもある。

 園田で勝って総合Vなら、札幌へも行けることを告げると「それはすごい。でもそんなにうまくいかないですよね」と渡辺騎手。優勝は12分の1の確率だから「渡辺騎手のような『持っている男』なら、チャンスは十分あるよ」と闘志に火を付けると「気合が入ってきたし、メラメラと火が付いてます」と、全国の名手たちとのハイレベルな戦いにモチベーションを高めていた。

 ■「名手の里や。続けるように頑張ります」

 中央、地方、海外の騎手が腕を競うWASJ。かつては笠松から川原正一騎手、安藤勝己騎手、浜口楠彦騎手がワールドスーパージョッキーズ時代に地方代表として出場。1997年、川原騎手は2勝を挙げて総合V。アンカツさんは3位、ハマちゃんも中央初Ⅴを飾るなど笠松勢は健闘した。

盛岡2戦目、ナムラバンザイ(右)に騎乗し4着だった渡辺騎手(笠松競馬提供)

 渡辺騎手は「それはすごいですね。名手の里や。笠松の名手に続けるように頑張ります」。1着になれば30ポイントの加点となり、藤原騎手は最終戦で最下位から2位に躍進した。渡辺騎手は「いま最下位の人でも、上がってくる可能性があるということですよね」。もし園田で1着か2着でポイントを上積みすれば、総合Vの可能性が広がる。あとは、くじ運を良くするためにも、藤原騎手のように自腹で「前祝い」をすることか。4番手から追い上げて、まずは「表彰台」を目指したい。

 笠松でも期間限定騎乗をしたことがある中野省吾騎手は、船橋時代の2017年に25歳でWASJ出場を果たした。今年も若手騎手の活躍が目立っており、ファーストステージ1位の福原騎手が22歳、2位の落合騎手が25歳。4位の渡辺騎手は23歳。地方最強ジョッキーの座とともに「札幌切符」ゲットに燃えている。

 渡辺騎手は笠松6月開催も好調で16勝。最終日の23日には4勝の固め打ちで、今年の折り返し地点を迎えて102勝目とした。昨年を上回るハイペースでⅤ量産。けがなどなくフルシーズン騎乗できれば、年間200勝ライン突破も十分に狙えそうだ。

ペップセ(左)でクイーンカップを制覇。羽島市出身の浅野皓大騎手が重賞初Vを飾った(笠松競馬提供)

 ■羽島市出身の浅野皓大騎手、笠松・クイーンカップで重賞初Ⅴ

 東海地区3歳牝馬による「第47回クイーンカップ」(SPⅢ、1600メートル)が22日、笠松競馬場で行われ、名古屋の浅野皓大騎手騎乗のペップセ(今津勝之厩舎)が3コーナーからのデッドヒートを制した。

 浅野騎手は岐阜県羽島市出身の22歳で、2019年10月にデビュー。地元でもある笠松でうれしい重賞初Ⅴを飾った。2着も名古屋のエイシンメヌエット。笠松勢はメイクストームの3着が最高で、地元重賞をまた勝てなかった。

 ペップセは東海ダービー6着から笠松初参戦。今津勝之調教師は「気温が上がってから走りが良くなってきた。前回(東海ダービー)より相手が下がったし、期待感はある」と、牝馬限定戦に自信を持って送り出した。

 1600メートル戦では有利な1枠から好スタート。ハナを奪って快調に逃げていたが、3コーナーからは2番手キープのエイシンメヌエットとマッチレース。4コーナーを回って先頭を譲ったペップセは、ラスト100を切って差し返しクビ差で1着ゴール。激しいたたき合いの末に勝利を確信した浅野騎手は、優勝の味をかみしめるように頭を沈めて歓喜に浸った。残り500メートルからの攻防は見応えがあった。

待望の重賞初Vで喜びに浸る浅野騎手

 ■激しいたたき合い「諦めずに追って、根性で差し返した」

 浅野騎手は「重賞勝ちは初めて。この前(後輩の)塚本征吾騎手(19)が名古屋で重賞(トリトン争覇)を勝ってたんで、僕も勝ちたかった」と闘志を燃やして臨んだ。笠松では今年5勝目。「地元ということでより力が入っていました。この馬で勝てて良かったです」。最後の直線ではエイシンメヌエットにいったん差されたが、激戦を制した。「コーナーは向こうの方が手応えが良かったが、直線でもう1回動く馬なので、最後で抜かそうと諦めずに追った。根性があって差し返してくれた。ゴールではクビだけ前に出ていたし、今井騎手からも『負けた』と言われ、勝ったんだと実感できました」と喜びを語った。

クイーンカップ優勝馬ペップセと喜びの関係者

 今後に向けては「まだ力をつけてくる馬なんで、笠松、名古屋はもちろん遠征でも良い結果を出せるようにしたい」。塚本騎手が先に重賞Vを飾ったことで「それに追い付け、追い越せの気持ちでやってきて、重賞を制覇できたのは本当にうれしいですし、名古屋でも重賞を勝てるように頑張ります。応援よろしくお願いします」と意欲。ファンからは「おめでとう」と祝福の声が飛び、サインや記念写真のポーズも決めていた。

 3着のメイクストームは9番人気と評価は低かったが、ラブミーチャン記念2着の実力馬だった。笠松勢は、昨年のクイーンカップをドミニクが勝ったのが最後で、地元重賞では17連敗になった。東海地区限定でも名古屋勢に優勝をさらわれるレースが続いているが、次の重賞・サマーカップ(7月6日)には園田勢も参戦。笠松勢の巻き返しはいつになるのか。ファンのイライラは募るばかりだ。

ラチ沿いでオマタセシマシタに手を振るファンたち

 ■「ランチタイムのアイドルホース」オマタセシマシタ5着

 笠松5戦目を迎えた人気馬オマタセシマシタは、3歳4組の1400メートル戦に登場。これまで笠松では全て12時台の出走でネット投票でも買いやすく「ランチタイムのアイドルホース」として全国のファンにもおなじみとなった。

 レースは渡辺騎手の騎乗で1番枠からまずまずのスタートを切ったが、外からかぶせられて中団やや後ろを追走。2コーナーでインから4番手に上がると、3~4コーナーではいい脚を見せて、3番手に並びかけた。一瞬「これは来るかな」と期待を持たせてくれたが、最後の直線で伸び切れずに5着でゴールインした。

1番・オマタセシマシタは5着で「掲示板」を確保できた

 それでもコーナーで外へ張る悪い癖は解消され、見せ場のあるレース内容で成長した姿を見せた。ここ3戦は7、9、6着だったが、今回は5着で何とか着順掲示板を確保。獲得賞金(2万2000円)を少し上積みできた。タイムは1分32秒1と自己最高をマーク。復帰後は中1週で順調に使われており、次戦以降の活躍が楽しみになってきた。


 ※「オグリの里 聖地編」好評発売中、ふるさと納税・返礼品に

 「オグリの里 笠松競馬場から愛を込めて 1 聖地編」が好評発売中。ウマ娘シンデレラグレイ賞でのファンの熱狂ぶりやオグリキャップ、ラブミーチャンが生まれた牧場も登場。笠松競馬の光と影にスポットを当て、オグリキャップがデビューした聖地の歴史と魅了が詰まった1冊。林秀行著、A5判カラー、200ページ、1300円。岐阜新聞社発行。岐阜新聞情報センター出版室をはじめ岐阜市などの書店、笠松競馬場内・丸金食堂、名鉄笠松駅構内・ふらっと笠松、ホース・ファクトリーやアマゾンなどネットショップで発売。岐阜県笠松町のふるさと納税・返礼品にも加わった。