笠松競馬の2019年「騎手等成績優秀者表彰」が行われ、筒井勇介騎手(右端)らの活躍や貢献をたたえた

 「リーディングを取って、目標を達成できて良かった」と晴れやかな筒井勇介騎手(田口輝彦厩舎)。「昨年以上の勝ち星を挙げて2年連続で狙いたい。重賞レースも勝ちたい」と意気込みを語った。

 笠松競馬の2019年「騎手等成績優秀者表彰」が場内で行われた。騎手部門で初めてのリーディングを獲得した筒井騎手(初受賞)、調教師部門では4年連続リーディングの笹野博司調教師(3回目の受賞)の活躍と貢献がたたえられた。厩務員部門では、長年にわたって競走馬の育成に尽力された後藤正義厩舎の長谷川富代さんと、笹野厩舎の小池正高さんが表彰を受けた。

昨年124勝を挙げて、初めての笠松リーディングを獲得した筒井騎手

 昨年の騎手リーディング争い。3年連続トップだった佐藤友則騎手は、けがや南関東挑戦で笠松での騎乗数が少なく、90勝で3位に終わった。ストーミーワンダーとのコンビで重賞3勝を挙げて勢いづき、秋以降に追い上げた渡辺竜也騎手が93勝で2位。筒井騎手は12月に入っても快調に勝利を積み重ね、124勝(勝率18.9%)で悲願のリーディングを奪取。名手の里に名を連ねる笠松歴代リーディングの一人に仲間入り。「ナンバーワン」のポーズも決めて、勇介スマイルがはじけた。

 各地方競馬での勝利数トップの騎手(昨年4月~今年3月)が腕を競い、王者を決める「ジョッキーズチャンピオンシップ」出場にもぐっと近づいた。それでも「昨年後半、渡辺騎手も勝利を増やしていたんで、どうかな」と筒井騎手。確かに昨年1年間の勝利数では渡辺騎手に31勝差をつけたが、4月以降の数字では(今年2月前半戦まで)、筒井騎手104勝に対して、渡辺騎手93勝でその差は「11勝」に縮まっている。3月末までの梅花、弥生シリーズで残りの開催日は11日間。渡辺騎手にもチャンスがありそうで、筒井騎手としては勝利を上積みし、出場権を獲得したい。本戦で総合優勝を飾ることができれば、8月のJRA「ワールドオールスタージョッキーズ」(札幌)にも挑戦できる。

表彰を受けた成績優秀者と笠松競馬関係者

 10年前にエレーヌで東海ダービーを制覇した筒井騎手。重賞Vは一昨年の東海ゴールドCをダイヤモンドダンスで制覇してから遠ざかっている。リーディングとしての意地もあり、重賞を勝ちたいが、今年は1月のゴールドジュニアで、ダルマワンサに騎乗し2着惜敗。10番人気の兵庫・ガミラスジャクソンにVをさらわれ、悔しそうだった。2月のウインター争覇では自厩舎のニューホープに騎乗し、「ワンチャンスあるかな」と期待を込め、後方から猛追したが3着。勝利数も1月は5勝どまりで「出遅れたんで、一鞍一鞍を集中して、1年間無事にけがなどをしないで頑張っていきたい」と闘魂を注入。2月に入って7勝を挙げて巻き返し、4位に浮上した。1月28日には佐々木竹見カップ(川崎)にも初出場。6着、14着に終わったが、JRAのルメール騎手や地方の各リーディングとのジョッキー戦は大きな経験になった。笠松競馬の新たなエースとして、今年も飛躍が期待されている。

 調教師部門では、笹野調教師と尾島徹調教師が勝利を量産。重賞戦線で活躍が目立つ井上孝彦調教師とともに笠松競馬を引っ張っている。昨年は尾島調教師が120勝で2年連続の2位で、リーディングトレーナーにどっしりと座り続けるのが笹野調教師。表彰式後には「ストーミーワンダーも受賞して、ダブルで良かったです。今年も勝利数を伸ばして、昨年以上の成績を収めたい。デビュー予定の2歳馬が4頭いるし、道営(北海道)からも来るでしょう。まずは2歳認定競走を勝ちたい。JRAのレースでも使えるようにね」と新馬戦に向けて強い馬に育て上げる構えだ。

4歳以上最優秀馬のストーミーワンダー。笹野博司調教師(左)が管理し、園田・姫山菊花賞で重賞5勝目となった

 笹野厩舎といえば、伸び盛りの渡辺竜也騎手と水野翔騎手が所属。ことしは渡辺騎手が15勝でトップを走り、水野騎手が12勝で3位と好調。これには「お互いライバルであり、いい関係で頑張って、(リーディング争いを)年末まで続けてほしい。そして、2人とも重賞を勝たせたい」と、若いツートップへの親心もにじませていた。

 笹野調教師自身は昨年、笠松で148勝を挙げて勝率は19.1%。名古屋など他場での勝利を含めた全国リーディングでは156勝で5位に躍進した。トップは高知の打越勇児調教師の202勝だったが、笹野厩舎は昨年の出走回数が800レースを超えており、勝率を20~25%に高めていければ、上位進出も可能だ。笹野調教師の夢は大きく、「今年は全国リーディングを目指していきたい」と力強かった。

 厩務員部門では、2人が受賞。表彰式には女性厩務員の長谷川さんが出席し、栄誉を受けた。小池さんは次のレースの業務のため欠席となり、笹野調教師が代理で受賞した。改めて、笠松競馬の土台をしっかりと支えて、愛情をたっぷりと注いで競走馬の世話をされる厩務員さんの仕事の大切さが伝わった。

2歳最優秀馬のニュータウンガール。ライデンリーダー記念制覇を喜び合う向山牧騎手(右端)ら関係者

 競走馬部門では重賞ウイナー3頭が表彰された。2歳最優秀馬に井上厩舎の牝馬ニュータウンガール。圧巻の走りを見せてライデンリーダー記念を制覇したほか、準重賞のジュニアクラウン、ジュニアキングも勝ち、7戦4勝と活躍。ライデンリーダー記念では、普段は控えめな向山牧騎手が「俺が落ちなかったら、勝てるよ」とまで豪語したとか。持ったままでの3馬身差完勝には、この馬の末恐ろしさを感じた。1月の名古屋・梅桜賞で重賞2勝目。自厩舎の佐藤騎手が手綱を取り、早くも6月の東海ダービーをにらんで、初めてとなるダービージョッキーの座へ手応え十分。若くて勢い一番のニュータウンガール。駿蹄賞、東海ダービー、岐阜金賞へと続く3冠ロードでの活躍が楽しみだ。

3歳最優秀馬のフォアフロント。ぎふ清流カップVでは、佐藤友則騎手がビクトリーポーズで歓喜に浸った

 3歳最優秀馬には、井上厩舎の生え抜き馬フォアフロントが選ばれた。ぎふ清流カップを制覇した表彰式では、優勝馬に乗った佐藤騎手が装鞍所前から登場。西日に輝いて歓喜のビクトリーポーズを決めながら、ゆっくりとウイナーズサークル前まで行進し盛り上げた。フォアフロントは、名古屋の湾岸ニュースターCと中京ペガスターC、金沢のMRO金賞で2着。東海ダービーで3着に踏ん張り、高知での西日本ダービーでは、勝ち馬アルネゴー(高知)から1馬身差の2着と健闘した。その後は5カ月間出走がなく、戦列復帰が待ち遠しい。

 4歳以上最優秀馬には、笹野厩舎のストーミーワンダーが輝いた。笠松・白銀争覇、飛山濃水杯、金沢スプリントCに続き、笠松・くろゆり賞では東海の総大将・カツゲキキトキトを撃破。昨年の「笠松ベストレース」といえる走りだった。どうやら「夏馬」のようで、2カ月余りで重賞3勝と快進撃。10月の園田・姫山菊花賞では園田の大将・タガノゴールドを倒して完勝。「笠松にストーミーワンダーあり」を全国にアピール。笠松競馬の「年度代表馬」ともいえる大活躍だった。今年は捻挫のため出遅れ。ウインター争覇では5着に終わったが、得意とする夏場に向けて、全国の重賞戦線へチャレンジするためにも、次走では復活の走りを見せてほしい。

 笠松・梅花シリーズは、17日から5日間連続での開催。関本玲花騎手の笠松初勝利記念セレモニーが17日3R終了後に、期間限定騎乗終了お別れセレモニーが21日3R終了後に場内で開かれる。笠松での騎乗は残り5日間となったが、初勝利で見せたような積極的なレース運びで2勝、3勝目を狙ってほしい。