皮膚科医 藤井麻美氏
厳しい寒さのないまま、立春を迎えました。受験や卒業のシーズンですが、今回のテーマはそうした思春期の方に関心が高いニキビについてです。ニキビは命を落とすような重大な病気ではありませんが、若年層の顔に出ることが多いことから精神的な負担が大きく、悩んでいる方も多い病気です。
ニキビができる仕組みを簡単に説明します。大きく分けて三つの要因があります=図参照=。一つ目は、皮脂の分泌が増えることです。アンドロゲンと呼ばれるホルモンに皮脂の分泌を促す作用があり、思春期の頃にはこのホルモンの分泌が増えるため、若年層はニキビができやすくなります。二つ目は、毛穴が詰まることです。詰まった毛穴に皮脂がたまっている状態を面皰(めんぽう)(コメド)と呼びます。三つ目は、この面皰内に誰の皮膚にもいるアクネ菌が過剰に増殖して炎症を起こすことです。アクネ菌は皮脂と酸素が少ない状態を好むため、面皰の中はまさにうってつけの環境です。
皮膚科ではこの三つの要因に対する治療を行いますが、現時点では皮脂分泌を抑える有効な薬がないため、残る二つに対する治療が基本です。毛穴の詰まりを抑えるには、「アダパレン」と「過酸化ベンゾイル」という2種類の薬が有効です。過酸化ベンゾイルにも抗菌作用はありますが、アクネ菌に対しては抗菌薬を使用します。
一般的に軽症であれば塗り薬から始めます。アダパレンや過酸化ベンゾイルと抗菌薬の塗り薬を組み合わせて使うことが望ましいとされています。抗菌薬単独で使用していると、薬の効かない「耐性菌」を作ってしまうことがあるからです。中等症以上になると、内服の抗菌薬を使用することがありますが、この場合も同様です。
最近はアダパレンと過酸化ベンゾイル、過酸化ベンゾイルと抗菌薬が一つになった塗り薬も発売されています。患者さんからは使いやすく、効果も高いと評判です。ただ乾燥したり、かぶれたりする副作用が現れる人もいます。自分で判断せず、皮膚科医の診察をきちんと受けて、正しく使用するようにしてください。
ニキビ治療で重要なことは、いったん良くなっても再発を繰り返す病気であると理解することです。どんな名医にかかっても、魔法のようにニキビが消えて、その後全く再発しないということはありません。根気よく治療に臨み、いったん改善してからも正しいスキンケアを続けることが大切です。悪くなったときだけ皮膚科に駆け込み、抗菌薬で一時的に抑える、というやり方からは卒業しましょう。
(岐阜市民病院皮膚科医員)