【3回戦 県岐阜商5―4大垣商】

 3連覇を目指すV候補筆頭が、3回戦大垣商戦でまさかの苦戦を強いられた。序盤から、またしても左投手の遅球にほんろうされ、2点を先取される展開。エース今井翼を送り出して、ようやく逃げ切った県岐阜商。だが、今チーム最大の強み・粘り強さが存分に発揮された。鍵は打線の〝対応力〟。中でも、四回、遅い変化球を見極めての4四死球での同点劇で唯一、安打でつなぎ、七回にも貴重な2点打も放った〝遅咲きのスラッガー〟園田進之助こそ、その象徴だ。

大垣商×県岐阜商=4回裏県岐阜商無死一塁、中前打を放つ園田=大垣北

◇悩める大器 状況に応じた対応力を身に付け覚醒
 スケールの大きさを鍛治舎巧監督に見込まれ、県岐阜商に入学した園田。フルスイングから放たれる豪快な打球が魅力で、1年の秋は4番を務めた。だが、確実性に問題があり、レギュラーどころか、一時はベンチからも外された。練習試合で投手の球速データ取りをする日もあり、「なぜ、ここにいるのか自分でもわからない」と語るように苦悩した。それでも、鍛治舎監督は園田の大きな可能性を信じて辛抱強く使い続けた。データ取りから呼ばれて、急きょユニホームに着替えて練習試合に出ることもあった。

 大器覚醒のきっかけは年末年始の熊野合宿にあった。「打てないと、どんどん焦り、悪い方へ悪い方へと悪循環していった」と苦悩する園田だが、考え方を大きく転換させた。「フルスイングを捨てる気はないが、状況に応じて強いゴロを打つ意識を徹底した」。今春の東海大会ごろには〝対応力〟が確実な武器となっていた。筋力アップの成果もあってスイングスピードも140キロから150キロ近くまでアップ。準決勝東邦戦で逆転2ランを放つなど最大の魅力の長打力にも磨きがかかった。

大垣商×県岐阜商=7回裏県岐阜商1死二、三塁、園田の右前のタイムリーで2人がかえり勝ち越し=大垣北

◇見極めて、ジャストミート 園田のバットが勝利呼ぶ
 「2ストライクになってもいいから、じっくり見極めていけ」。四回裏の攻撃を前にした鍛治舎監督の指示を受け、ナインはジャストミートを円陣で確認。先頭の加納朋季が死球で出塁すると、園田が真価を発揮する。1ストライク後の低めのスライダーをうまくミートし、中前でつなぐと、その後、チームメートが3四死球を選び、暴投もあって同点。五回に主砲三塚武造の開幕直前の足のけがからの右翼復活弾で勝ち越した後の七回。1死二、三塁から低めのチェンジアップをジャストミート。右前打は、結果的に貴重な決勝点となった。

 「これからも一瞬も気が抜けない試合は続くと思う。でも、みんなで力を合わせて必ず甲子園に」と語る園田だが、自分にチャンスが回ってきたら「もちろん、絶対に決める」と決意を込める。遅咲きのスラッガーのバットが名門を26年ぶり夏3連覇に導く。

 森嶋哲也(もりしま・てつや) 高校野球取材歴35年。昭和の終わりから平成、令和にわたって岐阜県高校野球の甲子園での日本一をテーマに、取材を続けている。