小児科医 福富悌氏

 3月になり暖かくなってきましたが、発熱とせきの症状が出て、来院する子どもが時々います。調べてみると呼吸器感染症の「ヒトメタニューモウイルス感染症(hMPV)」にかかっていることがあります。

 日本では年間を通して感染しますが、特に冬から初夏に感染が増えます。流行時期は3~6月にかけてです。現在、日本では子どもの呼吸器の感染症の約5~10%、大人の呼吸器の感染症の約2~4%は、ヒトメタニューモウイルスによるものであると言われています。

 感染しやすい年齢は1~2歳で、一度感染しても十分な免疫を得ることができないために、何度も感染することがあります。症状は熱、鼻水、せきなどの呼吸器感染症が主です。健康な大人は感染しても無症状なこともありますが、発症するとせき、鼻水などの風邪のような症状が表れますが、1週間程度で症状は良くなります。悪化すると喘鳴(ぜいめい)、呼吸困難などを起こします。乳幼児や高齢者では悪化しやすく、気管支炎、肺炎などを合併することもあります。潜伏期間は約4~6日で、感染経路は主に飛沫(ひまつ)感染で、人のせき、つばなどから感染します。

 また、鼻汁、喀痰(かくたん)などのウイルスが手指に付着し、その手を介して接触感染することもあります。きょうだいがいる場合などには、子どもの鼻水を拭いた大人の手を介して接触感染することもあるので、患者だけでなく、接した人も手を洗うことが大切です。

 このヒトメタニューモウイルスに感染した場合、特別に効果のある治療薬はありません。そのためせきや喘鳴、発熱などの症状を抑える治療が行われます。全身状態を改善することも大切で、十分な水分補給、睡眠、栄養のある食事を取り安静にしましょう。

 ヒトメタニューモウイルスに感染しても、インフルエンザのように保育園や幼稚園は出席停止とはなりません。ただ保育園や幼稚園などで流行しやすいので、こまめな手洗いを心掛けるなど予防対策に注意しましょう。せきが続く場合は、医療機関を受診して相談してください。

(福富医院院長、岐阜市安食)