ラブミーチャン記念を制覇し、笑顔で通算600勝達成のポーズを決める笹野博司調教師

 笹野博司調教師も、両手で600勝のポーズを決めてにっこり。2歳牝馬による第5回ラブミーチャン記念(地方全国交流、1600メートル、SPⅠ)は、岡部誠騎手が騎乗したボルドープラージュ(笹野厩舎)が、2番手から差し切りVを決めた。笠松では秋風ジュニア、ジュニアクラウンに続いて3連勝。管理する笹野調教師は、地方競馬通算600勝を重賞Vで飾った。

 全日本2歳優駿(GⅠ)などダートグレード競走を5勝、習志野きらっとスプリントで3連覇。「笠松の看板娘」から「地方競馬の最速女王」に君臨した名牝ラブミーチャンの偉業をたたえる記念レース。世代別牝馬重賞シリーズ「グランダム・ジャパン2018 2歳シーズン」として行われ、兵庫、浦和、岩手からも強豪が参戦した。

笠松のボルドープラージュ(岡部誠騎手)がラブミーチャン記念を1着でゴール。兵庫のアヴニールレーヴ(佐藤友則騎手)が2着で続いた

 兵庫のアヴニールレーヴには、南関東での期間限定騎乗を終えた佐藤友則騎手が騎乗。積極果敢に逃げたが、ボルドープラージュはぴったりと2番手につけて余裕の手応え。3、4コーナーで並びかけ、直線で突き放して1馬身半差の完勝。2着アヴニールレーヴ、3着には岩手のボルドーシエル(渡辺竜也騎手)が突っ込んだ。昨年のチェゴに続いて、今年も北海道から移籍してきた笠松所属馬が強かった。

今年のオグリキャップ記念とラブミーチャン記念を制覇し、笠松での重賞勝ちも多い岡部騎手

 ボルドープラージュは門別でJRA認定勝ちがあり、単勝1番人気に応えた。岡部騎手は「競馬が上手で、この馬の力を出せれば勝てると思っていました。逃げると物見をするので、2番手からになった。相手は前に行った佐藤君の馬だけだと...。残り100メートルで脚がいっぱいになったが、何とか勝てました」と笑顔。

 笹野調教師600勝のメモリアルレースにもなり、「それは初めて知りましたが、おめでとうございます」と祝福。ボルドープラージュの将来性については「まだまだ成長の余地があり、各地の大きなレースにも挑戦してほしいし、勝利を狙っていきたいです」と意欲を示した。

 笹野調教師も「岡部騎手がうまく乗ってくれた。直線ではどれだけ突き放すかなと思ったが、意外とバッタリと止まり、ちょっと焦りました。1400から1600メートルぐらいまでが良さそうで、タイムが速い笠松の馬場が合っています」と振り返った。

 今後のレースに夢が広がり、「まずは地元のレースに専念して、年内にあと2レース」と、ジュニアキング(12月13日)からライデンリーダー記念(12月30日)へと連勝街道を突っ走る構え。この日のパドックではテンションが高く、うるさい面もあった。装鞍所に戻って岡部騎手が騎乗しており、笹野調教師は「遠征ではどうでしょうか」と、クリアすべき課題も挙げていた。

ボルドープラージュでラブミーチャン記念を制し、喜びの関係者

 それにしても笹野厩舎には勢いがあり、白星を量産している。ついこの前(4月)、通算500勝達成セレモニーで所属ジョッキー3人(藤原幹生、水野翔、渡辺竜也)とともに、ファンの祝福を受けていたが、もう600勝とは...。わずか7カ月での100勝上乗せとなった。昨年の132勝を上回る135勝(11月15日現在)で、全国の調教師リーディングでも4位に躍進した。これまでは「ピザ屋の元店長さんで、異色の調教師が活躍」などと紹介されることも多かったが、ファンを大切にして、オーナーサイドの信頼も厚く、今や全国レベルのトップトレーナーへと成長した。

 管理馬は47頭と多頭数になってきた。笠松では3年連続となるリーディングトレーナーもほぼ当確だが、昨年はリーディングに輝きながら、笠松競馬の成績優秀者表彰は受けられなかった。これは、ゲートインで立ち上がったりする馬もいて「発走調教の不十分」などによる、戒告(賞典停止)処分が響いたようだ。管理する競走馬が多いし、新馬戦などから全ての馬を落ち着かせて出走させるのは大変なことだろう。

ラブミーチャン記念優勝のボルドープラージュ

 開業7年目の笹野厩舎。今年はビップレイジングで東海ダービーを制覇し、笠松ファンから大きな拍手を浴びた。10連勝中だったサムライドライブに土をつけて、全国に「笠松にビップレイジングあり」を強烈にアピールした。この秋は岐阜金賞には参戦できず、休養中ではあるが、笠松待望のスターホース。また4コーナーからの豪脚で、復活Vを見せてほしい。

 ところで、かつては「プリンセス特別」として行われていたラブミーチャン記念は、全国の2歳牝馬の出世レースでもある。今年のJBCレディスクラシック(京都)では、ラブミーチャン記念初代優勝馬の北海道・ジュエルクイーンが、地方馬最先着の9着。第2回で4着だった高知のディアマルコは、JBCでは15着に終わったが、「グランダム・ジャパン 古馬シーズン」では総合優勝を飾っている。第2回優勝馬のミスミランダー(北海道)はロジータ記念(川崎)や黒潮盃(大井)を制覇。昨年の優勝馬チェゴは暮れのライデンリーダー記念も制し2冠。北海道に戻ってからも、ここ2戦を連勝中だ。今年優勝したボルドープラージュにも今後の飛躍が期待できそうである。

昨年、笠松グランプリV3を達成した岩手のラブバレット(山本聡哉騎手)。今年も参戦し、V4の偉業に挑む

 年末にかけての笠松競馬はビッグレースが続き、今月22日には笠松グランプリが開催される。出走予定馬では、4連覇を目指す岩手のラブバレット(山本聡哉騎手)が最有力。JBCスプリントでは10着だったが、相性の良い笠松でベストパフォーマンスを発揮できそうだ。

 園田からは笠松でも実績がある新子雅司厩舎のエイシン勢2頭が参戦する。昨秋の笠松グランプリ2着、今春の高知・黒船賞(GⅢ)Vのエイシンヴァラーは山下雅之騎手で挑戦。今年の笠松サマーカップに続いて佐賀サマーチャンピオン(GⅢ)を制覇したエイシンバランサーには下原理騎手が騎乗し、打倒ラブバレットを狙う。
 
 北海道からはタイセイバンデット(吉原寛人騎手)、高知からはサクラレグナム(赤岡修次騎手)が参戦し、ジョッキー陣も豪華メンバー。笠松勢は今年重賞2勝のハタノリヴィール(井上孝彦厩舎)が出走を回避。ストーミーワンダー(佐藤友則騎手)、ダイヤモンドダンス(筒井勇介騎手)、ドリームアロー(岡部誠騎手)の3頭が迎撃する。1着賞金は笠松最高額の1000万円。ラブバレットを中心に、頂点を目指してハイレベルな一戦になりそうだ。