小児科医 福富悌氏

 私たちの周りで、はしか(麻疹)を診ることは少なくなり、わが国は2015年3月に世界保健機関(WHO)から、はしかの排除状態と認定されました。ところが無くなったのではなく、最近のニュースで耳にするように、時々感染の報告があります。

 07年には、当時の大学生を中心に流行し、多くの大学が休講したこと、同じ年の8月から9月にかけては、米国で流行したはしかの感染源が、日本から遠征していた野球少年だったこともありました。

 はしかに感染すると、高い発熱と発疹が出るだけでなく、麻疹ウイルスによる肺炎や脳症、さらには免疫力が低下することによる細菌感染が起こりやすくなるため、免疫力の弱い子どもや高齢者が感染すると、重症化しやすくなります。

 これだけでなく、10万人に1人程度ですが、感染後10年近く経過して、亜急性硬化性全脳炎という、中枢神経系の疾患を発症することがあります。麻疹ウイルスの感染経路は、空気感染、飛沫(ひまつ)感染、接触感染などさまざまな感染経路で広がり、その感染力は非常に強く、免疫を持っていない人が感染すると、ほぼ100%発症すると言われています。ですから感染を防ぐためには、予防接種が大切です。

 はしかの予防接種は、日本では1966年に開始されましたが、78年に義務化されるまでは、希望した人だけの任意の予防接種だったため、予防接種を受けた人は多くはいませんでした。その後、1回の予防接種では不十分で、2回の予防接種が有効ということが分かり、90年からは、2回のワクチン予防接種が義務化となりました。

 はしかの予防接種をすると、95%以上の人が抗体を獲得するとされています。予防接種の副反応については、はしかのワクチンはニワトリの細胞を使って製造されていますが、卵タンパクは含まれていないため、卵アレルギーの反応はほぼ無いと考えられています。ワクチン接種をしていない人や子どもは、予防のためにワクチンの接種をしましょう。

 過去にアナフィラキシーなどの重篤なアレルギーを発症したことがある人は、必ず接種前に医師に相談してください。

(福富医院院長、岐阜市安食)