皮膚科医 松山かなこ

 朝夕とめっきり涼しくなり、さわやかな秋の空が広がるようになりました。夏の強い日差しに比べれば、いくぶんか弱くなったとはいえ、まだ紫外線が気になる季節です。

 今回は、紫外線と関連した疾患の一つである、日光角化症を解説したいと思います。日光角化症とは、がんになる一歩手前の状態です。慢性的に長期間にわたって受けた紫外線刺激が原因となり、皮膚の細胞(表皮角化細胞)が、悪い細胞に変化していく(異型)疾患です。

 悪い細胞は、長い期間表皮の中にたまっていて、血流にのったりすることはありませんので、転移などを心配する必要はありません。この状態で適切な治療が行われれば「がん」という段階には進みません。

 では、皮膚の細胞が悪い細胞になると、どんな変化が現れるのでしょうか。慢性的な紫外線刺激が原因ですから、この変化は60歳以上の人の日に当たる部分、顔や手の甲(露光部)に起こりやすいです。露光部に直径1センチくらいのぎざぎざとした形で、表面がちょっとがさがさとした赤い病変が出てくるのが、ごく初期の変化です。

 そのうち、がさがさとした感じが強くなってきて、分厚いかさぶたが付くようになったり、じゅくじゅくとして少し盛り上がったりしてきます。人によっては、まるで皮膚でできた角のように、角化物が伸びてくることもあります。こういった病変は1個だけではなく、数個できることもあります。私の祖父にもこんな病変があったような記憶がありますし、日光角化症はごくありふれた疾患です。

 すべてが「がん」になるわけではありませんが、症状の思い当たる方は皮膚科で相談することをお勧めします。特に、じゅくじゅくとしていて全体が盛り上がったような病変になっている場合は、がんの状態に近くなっている可能性もありますので、早めに受診いただくとよいと思います。

 治療としてはイミキモドという自分の免疫力を使う塗り薬、液体窒素を用いて病変部を凍結させる方法や外科的な手術などがあります。どういった治療方法でも、1回の治療では完治せず、数回の通院が必要になりますが、通常は完治が望めます。

 今週末は、岐阜市ではぎふ信長まつり、各地で市民運動会が開催される予定です。澄みわたった秋空の下、ぜひ日焼け止めクリームを塗って、お出掛けください。

(岐阜大学医学部付属病院皮膚科臨床講師)