整形外科医 今泉佳宣氏

 これまで2回にわたり関節リウマチの話をしました。今回は関節リウマチの治療に用いられる薬について話をします。

 関節リウマチに用いられる薬は大きく分けて2種類あります。一つは関節リウマチそのものを治療するための薬であり、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD、ディーマード)と呼ばれます。もう一つは関節の痛みを抑えるための薬です。

 代表的なDMARDはメトトレキサート(MTX)です。MTXは関節リウマチの原因となる免疫細胞の過度な活動や増殖などを改善する効果があります。効果発現までの期間が平均2~3週間と早く、ひとたび薬に反応した後に反応しなくなる現象(エスケープ現象)が起こりにくいため、関節リウマチ治療の中心的薬剤として用いられています。しかし骨髄障害、間質性肺炎(MTX肺炎)、感染症、口内炎、肝障害などの副作用を生じる可能性もあり、すべてのリウマチ患者に対して第一選択薬となるわけではありません。

 MTXなどの従来型DMARD(csDMARD)の効果がない場合は、生物学的製剤(bDMARD)や分子標的型抗リウマチ薬(tsDMARD)を用います。生物学的製剤は関節リウマチに関与するTNF-αやIL-6といった炎症性サイトカインやその受容体に結合することで関節破壊を抑えます。

 現在、日本で認可されている生物学的製剤は八つあります=表=。最初の生物学的製剤は2000年代初めに認可され、多くの症例で関節リウマチを寛解状態に持ち込むことが可能となりました。とても有効な薬ですが、注射薬しかなく、肺炎や結核などの感染症に注意が必要であること、高価であることが問題点として挙げられます。

 分子標的型抗リウマチ薬は近年開発された新しい薬です。リンパ球などの免疫細胞内にあるヤヌスキナーゼ(JAK)と呼ばれる酵素の働きを阻害することで、炎症や関節破壊を抑える薬です。生物学的製剤と異なり飲み薬ですが、やはり感染症などの副作用に注意が必要です。

 DMARDは関節を構成する骨や軟骨の破壊が進むことを抑えますが、関節が破壊されることに伴う痛みを直接抑える効果はありません。そのため非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAID、エヌセイド)やステロイドといった薬を補助的に用います。

 関節リウマチに対して早期からDMARDを中心とした薬物療法を行うことで、関節破壊の進行を抑えることが可能となりましたが、多くの薬剤があるため個々の症例に応じた薬剤選択が大切です。

(朝日大学保健医療学部教授)