浜口楠彦騎手の騎乗で、2009年の全日本2歳優駿を制覇したラブミーチャン

 「笠松の快速娘」の力強い走りと感動を再び。企画展「笠松競馬~ラブミーチャンのふるさとを訪ねて~」が3日、笠松町歴史未来館で始まった。笠松競馬ファンをはじめ、全国から聖地巡礼の「ウマ娘」ファン、家族連れらも熱い視線を注ぎ、にぎわっている。12月17日まで開かれ、入場無料(9~17時、月曜休館)。

 2年前のオグリキャップ展に続く開催。今回はラブミーチャン(柳江仁厩舎)を中心に、笠松競馬が生んだ輝かしい名馬たちの活躍ぶりを写真や映像などで回顧。ウマ娘人気とともに、若い世代の心をつかんだ新たな競馬の魅力も紹介している。ラブミーチャンの馬主・小林祥晃(Dr.コパ)さん親子、柳江仁厩舎、笠松競馬愛馬会、県地方競馬組合が展示協力。盛りだくさんの内容になっている。 

ウマ娘・オグリキャップの等身大パネルとの記念撮影

 ■オグリキャップの等身大パネルがお出迎え

 入館するとラブミーチャン(イラスト)の案内で、漫画「ウマ娘シンデレラグレイ」の主役・オグリキャップ等身大パネルがお出迎え。4月の記念レース開催時以来の登場で「地域振興のためなら」とゲームの企画・開発・運営事業を展開するCygames(サイゲームス)の協力で設置された。来館者は早速、スマホなどで記念写真の撮影を楽しみ、笑顔でポーズを決めていた。

 20~30代のファンの来館も多く、豊橋市から来たという男性は「企画展、面白かったです。ウマ娘も好きで、オグリキャップのファンなんで来ました。凱旋門賞の外れ馬券(スルーセブンシーズ4着)もあってびっくりしました」と話していた。

 2階展示室には、笠松の名馬たちの栄光の写真や記念品がどっさり。主戦・浜口楠彦騎手の騎乗で、2009年の全日本2歳優駿(JpnⅠ)や12年の東京盃(JpnⅡ)を制覇したラブミーチャン。ゴールインの瞬間や口取り写真で歓喜に浸った関係者。全日本2歳優駿Ⅴは、笠松の2歳牝馬がデビュー5戦目で同世代の頂点に立った歴史的なレースだった。

 ダートグレード競走5勝で「NARグランプリ年度代表馬」に2度も輝いた。着用していた赤と黄色のメンコ、浜口騎手の勝負服、柳江仁厩舎の応援幕、特大ぬいぐるみ2体も並べられ、活躍ぶりをたたえている。

ラブミーチャンの特大ぬいぐるみや優勝の口取り写真などが展示されている館内

 ■笠松競馬経営難、快速ぶりで「救世主」に

 ラブミーチャンは09年から13年までの4年間、笠松競馬の経営が苦しい時代に、その快速ぶりで「救世主」となる大活躍を見せた。「笠松の看板娘」とも呼ばれ、先頭に立って走り続け、存続が危ぶまれた笠松競馬をけん引。全国区で通用するスピード馬で、笠松の名をアピール。馬券販売につなげ、綱渡りの経営を支えた。ビッグレースを制覇して笠松に明るいニュースを運んでくれた。

 笠松ファンの一人として、非常に思い入れが強い馬だった。4戦目の兵庫ジュニアグランプリを勝った頃から注目。ぎふチャンテレビの「記者の目」で紹介したところ、全日本2歳優駿Ⅴの快挙を達成。その後はラブミーチャンの快速ぶりに魅了されて、引退まで「追っ掛けファン」となり、笠松競馬が少しでも元気になればと岐阜新聞に記事の出稿を続けた。

オグリキャップやアンカツさんらのトレーディングカードも展示

 ■「笠松にラブミーチャンあり」年度代表馬の風格

 当時、笠松競馬の馬券販売は1日1億円余りで、経営難は深刻。廃止に直結する赤字回避のため賞金・手当の大幅カット、競馬場用地の明け渡し訴訟、放馬による乗用車との衝突・死亡事故などが発生。ネット販売が本格化するまでの厳しい時代に「笠松にラブミーチャンあり」と、NAR年度代表馬としての風格を漂わせて全国を駆け回った。献身的ともいえる力強い走りで、笠松競馬存続へ大きく貢献してくれた。

 13年秋、金沢でのJBCスプリント直前の追い切りで骨折。藤原幹生騎手が乗っていたが、柳江調教師の「レントゲン写真を」という悲痛な声が上がり、引退が決まった。16年には北海道の谷岡牧場で繁殖馬になったラブミーチャンに会うこともできた。ラブミーボーイなど5頭の母馬になった。

全日本2歳優駿などずらりと並んだラブミーチャンの優勝レイ

 ■全日本2歳優駿などの優勝レイずらり

 企画展では、全日本2歳優駿などラブミーチャンに贈られた数々の優勝レイ(14枚)やトロフィーも並べられており壮観だ。大型テレビではデビュー戦も含めて勝利を挙げたレースのうち7戦のゴールシーンが流されている。

「ミーチャンと浜ちゃんの奇跡の一枚」

 超短距離戦のスーパースプリントシリーズでは「名古屋でら馬」→「習志野きらっと」を3連覇。地方競馬の最速女王に君臨した。ハマちゃんスマイルでファンに慕われ、笠松競馬の人気者だった浜口騎手は、けがに苦しみながらも「ミーチャンでGⅠも取ったから」と主戦として満足そうな姿が印象的だった。とても研究熱心なジョッキーだったそうで、騎乗法などについてまとめた自筆のノートや「ミーチャンと浜ちゃんの奇跡の一枚」なども展示されている。

地方馬で初めて中央馬を倒したリュウアラナス(右上)など笠松の名馬たちの写真を見る来館者

 ■ライデンリーダー、レジェンドハンターにリュウアラナスも

 笠松の名馬たちのコーナーでは、もちろんオグリキャップの写真などを展示。前回、来場したアンカツさんが「ライデンリーダーやレジェンドハンターは?」と残念がったため、今回は両馬の貴重な写真や成績一覧もしっかりと展示。ライデンリーダーでは、伝説となった京都・4歳牝馬特別Vなどのレース映像も視聴できる。

 懐かしい名馬ではリュウアラナスとダイタクチカラも登場。1979年の地方競馬招待競走(中京・芝)で激走した2頭。リュウアラナスは日本ダービーと菊花賞2着馬ロングファストらに圧勝。中央馬に初めて勝った地方馬として、歴史を塗り替えた。笠松2頭がマッチレースを演じ、2着にもダイタクチカラが入りワンツー。埋もれていたレースだったが、競馬組合職員がカラー写真で発掘。日本の競馬史を彩る貴重な画像が鮮明に残されていた。

デビュー直前の浜口騎手、安藤光彰・勝己騎手らの貴重な写真も展示

 馬主コパさんの全面協力で企画展は実現した。ウマ娘のキャラでも人気のコパノリッキーの優勝レイ(東京大賞典)とゼッケンも展示。フェブラリーSでは最低16番人気だったがGⅠ初制覇。馬券では大変お世話になった。1、2番人気から2頭軸マルチで総流しした3連単(94万円)を幸運にもゲットできた。ラブミーチャンとともに大好きな馬である。

 ジョッキーでは、デビュー直前(1976年3月頃)の浜口騎手、安藤光彰・勝己騎手の写真も発掘して展示されており、非常に興味深い。

ラブミーチャンのぬいぐるみ、たてがみなどがプレゼントされる

 ■ラブミーチャンぬいぐるみ、たてがみなど来場者プレゼント

 来場者プレゼントコーナーでは、抽選でラブミーチャンの特大ぬいぐるみや、たてがみなどお宝グッズをゲットできるチャンス。笠松所属騎手11人分のサイン入りヘルメットカバー(3色)もあり、注目を集めている。

 このほか、アンカツさんやオグリキャップのトレーディングカードや、重賞勝ち馬の「SPAT4トランプ」が展示され、ラブミーチャンのカードも登場。番外編として、今年の凱旋門賞の出馬表も並べられており、奥村智彦館長は「コパさんの馬もいつか凱旋門賞に参戦できるといいですね。笠松にもいい馬を入れてもらって、第2のオグリキャップが出れば。ラブミーチャン以来、スターホースが出ていないので」と願いを込めた。

 古田聖人笠松町長も「ラブミーチャンの栄光の軌跡を秘蔵の品々で振り返りました。町の振興に笠松競馬の資産を掘り起こして生かしていきたい」と協力。10月に笠松みなと公園で行われたリバーサイドカーニバルで撮影したウマ娘ファンとの写真も展示されている。

販売されている競馬グッズ。「オグリの里・聖地編」では、牧場でのラブミーチャンも特集されている

 ■愛馬会手作りの蹄鉄クリスマスリースも

 1階の競馬グッズ販売コーナー。ラブミーチャンのぬいぐるみ(3000円)は70個限定で、コパさんや深沢杏花騎手らの直筆サイン入りフォトもプレゼント。愛馬会手作りの蹄鉄クリスマスリースや「安全必勝」のアンカツさんお守りも人気商品。売上金(全額または一部)は笠松町の保護猫活動に寄付される。また「オグリの里・聖地編」も販売されており、牧場で暮らすラブミーチャンの姿も特集している。

 笠松競馬所属騎手11人の勝負服をデザインした「缶バッジ」も人気で、ステッカー付き。「なにがでるかな?」とお目当てのジョッキーを求めて「ガチャガチャ」に10回近く挑むファンもいた。蹄鉄クッキーのラブミーチャン版は笠松菓子組合6店舗で好評発売中だ。

笠松競馬所属騎手11人の勝負服デザイン「缶バッジ」も人気

 ■「ラブミーチャンもウマ娘のキャラクターに」

 大阪や埼玉など遠方から訪れた競馬&ウマ娘ファンの姿もあり、ズラリと並んだ優勝レイの前では「いっぱいあり、すごいな。兵庫ジュニアグランプリや全日本2歳優駿も取っていて」「迫力があり、面白いですね。動画を見てオグリキャップが好きになりました。ウマ娘の力もすごいですね」などと感心していた。「ラブミーチャンもウマ娘のキャラクターになってほしい。コパさん所有馬のコパノリッキーに続けるといいですね」という声も多くあった。

 展示に協力した愛馬会の後藤美千代さんは「素晴らしいですね。ここまでやってもらって。笠松町や全面的に協力してくださったコパ先生に感謝です」。ラブミーチャンを管理した柳江仁調教師の妻さつきさんは、貴重な優勝レイなどを提供。輝かしい口取り写真も展示され「夫も喜んでいると思います。また名馬が出るといいですね」と感謝していた。ネット上では、ラブミーチャンの現役時代の公式サイトを今でも見ることができる。

ラブミーチャンぬいぐるみと深沢杏花騎手直筆サイン入りフォト

 ■9日に笠松競馬場でラブミーチャン記念

 9日には笠松競馬場で2歳牝馬の全国交流競走「ラブミーチャン記念」(SPⅠ、1600メートル)が開催される。北海道、金沢からの遠征馬が強力で笠松、名古屋勢は4頭。21日には笠松グランプリも行われる。前回のオグリキャップ展では、アンカツさんや深沢杏花騎手らが来館したが、今回も期間中に笠松の騎手らが訪れるかも。歴史未来館は競馬場から歩いて15分ほどで行ける距離にある。木曽川沿いにはウマ娘シンデレラグレイに登場した笠松みなと公園もある。

 「笠松競馬場⇔歴史未来館」は聖地巡礼コースにもなっており、笠松やJRAのレース開催日に懐かしい名馬たちの軌跡をのぞいてみてはどうか。コパさんがオーナーを務め、笠松競馬存続を後押したラブミーチャン。オグリキャップとともに出世馬のパワースポットである笠松町に足を運べば、運気が上昇するかも。


 ※「オグリの里 聖地編」好評発売中、ふるさと納税・返礼品に

 「オグリの里 笠松競馬場から愛を込めて 1 聖地編」が好評発売中。ウマ娘シンデレラグレイ賞でのファンの熱狂ぶりやオグリキャップ、ラブミーチャンが生まれた牧場も登場。笠松競馬の光と影にスポットを当て、オグリキャップがデビューした聖地の歴史と魅了が詰まった1冊。林秀行著、A5判カラー、200ページ、1300円。岐阜新聞社発行。岐阜新聞情報センター出版室をはじめ岐阜市などの書店、笠松競馬場内・丸金食堂、名鉄笠松駅構内・ふらっと笠松、ホース・ファクトリーやアマゾンなどネットショップで発売。岐阜県笠松町のふるさと納税・返礼品にも加わった。