昭和、平成から令和の時代に入っても「永遠のヒーロー」オグリキャップの人気は色あせずに輝きを増している。
「私たちの記憶を、後世のファンへ」。JRA機関誌「優駿」が実施した、全国の競馬ファンが選ぶ第3回「未来に語り継ぎたい名馬BEST100」でオグリキャップは堂々の3位をキープ。女性票は2位となった。見る者を勇気づける感動的な走りはファンの心に深く刻まれ、時代と世代を超えた競馬界の国民的ヒーローとして、その人気の高さは健在だ。投票結果を分析してみた。
■有馬記念Vでオグリコール、日本の競馬史上最高の名場面
1990年の引退から既に34年が過ぎたが、その波乱に満ちたドラマチックなストーリー性から「50年、100年に1頭」ともいわれるスーパーホース。笠松競馬場でデビューし快進撃。JRA移籍後は「芦毛の怪物」とも呼ばれ、重賞6連勝。過酷ローテで力走し、ラストラン・有馬記念での復活Vゴール。「オグリ、オグリ…」の地響きのような熱狂的な叫びは、今なお競馬ファンの心に鳴り響き、日本の競馬史上最高の名場面として年末を彩ってきた。
■新興勢力登場も、根強い人気のオグリキャップ
「未来に語り継ぎたい名馬」はJRA70周年特別企画として実施。2010年、15年に続いて9年ぶりに発表された。「オグリの里」としては、GⅠを多く勝ったイクイノックス、アーモンドアイなど新興勢力の登場もあって、オグリキャップは「掲示板」は確保するだろうが、順位を下げて「4位かな、5位かも」と表彰台落ちも覚悟していた。
早速、書店で「優駿」を買い求めたところ、オグリキャップは根強い人気で3位「銅メダル」に輝いており一安心。昭和の時代のデビュー馬では唯一、順位を落とさず。「最強馬」を決める投票ではなく「語り継ぎたい名馬」ということで納得だ。オグリキャップは第1回の4位から第2回は3位。そして今回も3位と大きな支持を集めた。
■ディープインパクトV3、イクイノックス2位
☆ベスト20(「優駿」未来に語り継ぎたい名馬)
①ディープインパクト ⑪シンボリルドルフ
②イクイノックス ⑫ゴールドシップ
③オグリキャップ ⑬テイエムオペラオー
④オルフェーヴル ⑭コントレイル
⑤アーモンドアイ ⑮ソダシ
⑥サイレンススズカ ⑯パンサラッサ
⑦トウカイテイオー ⑰オジュウチョウサン
⑧ナリタブライアン ⑱ドウデュース
⑨ウオッカ ⑲ステイゴールド
⑩キタサンブラック ⑳メジロマックイーン
■「ウマ娘シンデレラグレイ」のTVアニメ化も
ウマ娘人気もあって、オグリキャップの活躍ぶりをリアルタイムで知らない10~30代にも幅広く浸透。「優駿」9月号発売日には、漫画「ウマ娘シンデレラグレイ」のTVアニメ化も発表され、25年に放送されるという。オグリキャップを主人公にした作品で、当初舞台となる聖地・笠松競馬場は、さらに脚光を浴びることになる。オープニングを飾る「カサマツトレセン学園」への入学や大食いシーンなども興味深く、「原風景を体感したい」という聖地巡礼の来場者は今後増えそうだ。
■オグリキャップ、40代以上は全て2位
「優駿」では、オグリキャップ3位の欄に「芦毛の怪物は不滅のアイドルに」のタイトル。年代別ランキングでは10代9位、20代5位、30代4位。40代以上は全て2位で幅広い支持を得た。
JRAのキャッチコピー「HERO IS COMING.」の映像では、ラストラン・有馬記念Vも流されており「切ないほどにひたむきな走りで時代を変えたヒーロー」とたたえている。オグリの現役時代を知らない世代も、その走りや人気ぶりをネット映像などで追体験できる。
■ベスト20に新顔8頭、アーモンドアイ5位ソダシ15位
「完全無欠のサラブレッド」として王座を防衛したディープインパクトは3回連続トップ。世代別でも30代以上は全て1位とポイント面でも圧勝した。ベストテンの新興勢力では、②イクイノックス⑤アーモンドアイ⑩キタサンブラックが初登場した。20位までの新顔は8頭で、牝馬はソダシが15位にランクインした。
今回、ディープインパクトに「世界ランキング1位」のイクイノックスがどこまで迫るか注目されたが、ポイントでは「70316対41632」で大差がついた。世代別ではイクイノックスが10代、20代でトップ。3位・オグリキャップのポイントは38620だった。
ベストテンでは、前回2位だったオルフェーヴルをはじめウオッカ、サイレンススズカ 、ナリタブライアン、シンボリルドルフ、ダイワスカーレット(26位)、エルコンドルパサー(24位)の7頭が順位を下げた。
■オグリ、最後まで諦めない走りでファンに勇気と元気
女性票は①ディープインパクト②オグリキャップ③オルフェーヴル④イクイノックス⑤アーモンドアイの順。
オグリキャップは女性票2位で、男性票の3位より支持率が高かった。これは、ただ強いだけでなく、最後まで諦めない走りで勇気と元気を与えた感動的なレースぶりが女心に刺さり、共感を呼んだのだろう。スター要素、アイドル要素が加味され、ウマ娘人気もあって抜群の知名度が評価されたといえよう。
競馬に興味ない人にも街角で「知っている競走馬は?」と聞いたら、「国民的アイドルホースのオグリキャップが1位になるのでは」とも感じている。
■トウカイテイオー7位、ゴールドシップ12位にアップ
このほかベストテンで特筆すべきはトウカイテイオー。8位から一つ順位を上げて7位。ラストランとなった93年・有馬記念制覇は鮮烈だった。やはりオグリキャップのラストランとともに劇的な復活Vはファンの心に深く強く焼き付いた。
昭和の時代の名馬シンザンは16位→23位、ハイセイコーは20位→27位とダウン。大きく順位がアップしたのはゴールドシップで26位→12位。父のステイゴールドも24位→19位とベスト20入りを果たした。
■記録よりも記憶に残るスターホース
「オグリの里」は連載を始めて8年になるが、根強いオグリキャップ人気に改めてパワーをもらった思いだ。記録よりも記憶に残るスターホース。地方と中央の垣根を超越した走りでファンの心をつかみ、愛され続ける名馬の魅力をこれからも皆さんと語り継いでいきたい。
※「オグリの里2新風編」も好評発売中
「1聖地編」に続く「2新風編」ではウマ娘ファンの熱狂ぶり、渡辺竜也騎手のヤングジョッキーズ・ファイナル進出、吹き荒れたライデン旋風など各時代の「新しい風」を追って、笠松競馬の歴史と魅力に迫った。オグリキャップの天皇賞・秋観戦記(1989年)などオグリ関連も満載。
林秀行(ハヤヒデ)著、A5判カラー、206ページ、1500円。岐阜新聞社発行。笠松競馬場内・丸金食堂、ふらっと笠松(名鉄笠松駅)、ホース・ファクトリー、酒の浪漫亭、小栗孝一商店、愛馬会軽トラ市、岐阜市内・近郊の書店、岐阜新聞社出版室などで発売。
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