YJSファイナリストとなり、晴れやかな長江慶悟騎手(左)と望月洵輝騎手

 目指すはもちろん「総合V」だ。地方競馬、JRAの騎手たちが火花を散らすヤングジョッキーズシリーズ(YJS)で、長江慶悟騎手(24)が笠松勢では渡辺竜也騎手以来6年ぶり2人目のファイナリストの座を射止めた。

 各地トライアルラウンドを突破し、ファイナルラウンドに進出したジョッキーは地方競馬、JRA各8人ずつの計16人。

 西日本地区の地方勢では、兵庫の土方颯太騎手(17)が最終の金沢ラウンドで1着、2着と猛スパート。11位から一気にトップ通過を果たした。長江騎手と加藤翔馬騎手(金沢、19)、望月洵輝騎手(愛知、18)もファイナル初出場を決めた。JRA勢は橋木太希騎手(18)がトップ。河原田菜々騎手(19)2位、田口貫太騎手(20)3位、古川奈穂騎手(24)が4位で続いた。

 田口貫太騎手は笠松で連勝した貯金を生かし、2回目の進出を決めた。昨年はトライアル4位から総合2位。今年、2年連続出場を果たすのは全国で田口騎手だけ。「101勝の壁」を突破しYJSを卒業した騎手もいるが、浮き沈みが激しく本当に厳しい世界である。

YJS笠松で闘志を燃やす(左から)明星晴大騎手、長江慶悟騎手、加藤翔馬騎手

 ☆YJS・地方代表騎手(P=ポイント)
西日本地区
 土方 颯太(兵庫)1位=70P
 長江 慶悟(笠松)2位=64P
 加藤 翔馬(金沢)3位=62P
 望月 洵輝(愛知)4位=59P

東日本地区
 室 陽一朗(浦和)1位=63P
 鷹見  陸(大井)2位=53P
 谷内 貫太(大井)3位=52P
 及川  烈(浦和)4位=52P

YJS笠松で(左から)古川奈穂騎手、田口貫太騎手、河原田菜々騎手。3人ともファイナルラウンドに進出 

 ☆YJS・JRA代表騎手
西日本地区
 橋木 太希(栗東)1位=80P
 河原田菜々(栗東)2位=65P
 田口 貫太(栗東)3位=62P
 古川 奈穂(栗東)4位=62P

東日本地区
 佐藤 翔馬(美浦)1位=73P
 長浜 鴻緒(美浦)2位=65P
 大江原比呂(美浦)3位=56P
 土田 真翔(美浦)4位=55P
   (同ポイントの場合は上位着順)

 東日本地区の地方勢は笠松競馬でもおなじみ、浦和所属の室陽一朗騎手(22)がトップ、及川烈騎手(20)が4位で通過。JRA勢は2年目の佐藤翔馬騎手(20)や大江原比呂騎手(20)がファイナルに進出した。

 ファイナルラウンドは12月12日(木)に園田競馬場、12月14日(土)にJRA 中京競馬場で行われる。

YJS名古屋で勝利を飾った長江騎手。その勢いでファイナル進出を決めた

 ■長江騎手「けがをせずにファイナルへ」

 10月の笠松ラウンドに参戦した騎手11人のうち5人がファイナリストに決まった。

 11月に入って、ラブミーチャン記念シリーズの4日目10R「初冬特別」。長江騎手はニホンピロペリーで差し切って1着ゴール。望月騎手はチュウワジョーダンで4着。ともにYJSで難関を突破したことで自信を持って騎乗。たくましさが増してきた様子だ。

 園田、中京でのファイナルラウンドへの意気込みを2人に聞いた。

 西日本地区は、金沢の2戦でトライアルラウンドが終了した。総合トップを走り、金沢の結果待ちとなっていた長江騎手は、名古屋での騎乗を終えてファイナル初進出を知った。

 ダートに加え、芝コースでの最終決戦に向けて「けがをせずにファイナルを迎えることが大前提ですね。(2位通過については)1位だろうが2位だろうが、本戦で勝てないと行った意味がないので、結果を残さないとね」と意欲を示した。

笠松で力強く差し切り、1着ゴールを決めた長江騎手

 ■「長江はここにいる」という騎乗を

 トライアルラウンドでは初戦(名古屋)をインから抜け出す好騎乗で圧勝した。その勢いに乗って、園田、中京での初レースにチャレンジする。

 「(トライアルでは)いいところ(1着)があっても、駄目なところ(9着)もあった。ファイナルでは、そこを良くしないと上へ行けない。目立つ騎乗をしたいし『長江はここにいる』という騎乗を見せたいです」

 一昨年にもファイナル進出のチャンスはあった。最終の笠松第1戦を勝ち、第2戦7着以内なら突破できた。だが、騎乗馬に恵まれず10着でファイナルの夢は砕け散り(総合7位)、補欠扱いとなった。

 ■芝コースは全く分からず「未知」

 今回はその悔しさをぶつける大きなチャンスであり、中京・芝について「楽しみではありますが、芝コースは立ったことがなく、全く分からず『未知』なんで。中央馬騎乗は難しさもあるでしょうが、見せ場をつくって、できれば勝ちたいですね。園田も初めてで乗ったことはないですが、勉強です。総合優勝するためには、まずはポイントを稼いでおかないとね」と闘志満々。逃げるか、差しか。思い切った騎乗で勝ち負けのレースに持ち込めれば、上位進出も夢ではない。

勝利を飾った長江騎手。笠松、名古屋での騎乗も増え、成長した姿を見せている

 昨年はYJSのポスターで「センター」を務めるなど注目された長江騎手だが、結果を残せず。11月12日には25歳の誕生日を迎え、出場騎手のうちで最年長になる。ラストチャンスとなる今回、1年遅れでも「表彰台の真ん中」に立てれば最高だ。

 ファイナリスト経験者の渡辺騎手は中山の芝コースで2着、3着はあったが、4レース総合では8位と9位。ファイナルの壁は高いが、長江騎手にはけがなどなく当日を迎え、広々とした中京・芝コースでのレースも存分に楽しんできてほしい。

 YJSで名古屋に初参戦し、いきなり初Vを挙げた。厩舎サイドの信頼度は着実にアップしており、名古屋での騎乗も増えてきた。地元では1日に8、9鞍乗る日も目立っており、ひ弱さを一掃。YJSファイナルは大きく羽ばたくチャンスになる。

 大井と中山でのファイナルに2回進出した経験がある渡辺竜也騎手は「頑張ってきてほしい。慶悟らしい騎乗で、けがなく帰ってきてくれれば」とエールを送ってくれた。

成長株のルーキー望月騎手。笠松でも活躍が目立つ

 ■望月洵輝騎手「貴重な機会、上の着順を」

 名古屋ラウンド第2戦を勝った望月洵輝騎手は、身長168センチで愛知県豊橋市出身。金沢では3着、9着で総合5位から順位を上げて4位通過を果たした。

 「進出が決まり、ホッとしました。金沢では思ったような結果を残せず、最低ラインのポイントは獲得できたが、ぎりぎりでした。中京の芝は乗ったことがないコース。最低限の仕事はしたいし、なかなか乗れない貴重な機会なので楽しみたいです。ちょっとでも上の着順を取れるように、初馬場でも馬の特徴をつかんで、能力を最大限に発揮させたい」と意欲。4月デビューから7カ月。既に名古屋で56勝、笠松で8勝と成長力を発揮している(11月7日現在)。名古屋は塚本征吾騎手や大畑慧悟騎手ら若手がよく育っている印象が強い。笠松の若手も潜在能力は高く、有力馬への騎乗など、もっとチャンスを与えていただきたい。

昨年を上回る総合Vに意欲を見せる田口貫太騎手

 ■田口貫太騎手「若手みんなでいい争いを」

 田口貫太騎手は得意の笠松コースでYJS連勝を飾った。「金沢でポイントを上乗せして、1位の橋木騎手を追い抜きたい」と意気込んでいたが、金沢ではしんがり負けが続き、総合3位に。11月、笠松でのJRA交流戦でも5着に終わったが、今年JRAで37勝を挙げており、年内50勝突破を目指してスパート。減量騎手卒業も大きな目標になる。

 今回でラストになりそうなYJSに懸ける思いは強い。「昨年総合2位だったんで、今年はトップを目指して頑張りたいです」。中京と園田での騎乗に向けては「園田でも普段から交流戦で結構乗せてもらっていますし、競馬場の癖も分かります。若手みんなでいい争いができて、みんなけがなく無事に終わればいいかなと」。

 今夏、フランスへの武者修行も経験し、一回り成長した田口騎手。エリザベス女王杯にもゴールドエクリプスで挑戦。YJSでは昨年を上回る総合Vで頂点を極めたい。

西日本JRAトップの橋木太希騎手は、笠松で初騎乗Vを飾った

 ■YJSトップの橋木太希騎手、笠松初騎乗V

 西日本地区JRA1位の橋木太希騎手(西園正都厩舎)はルーキーだが、9月にデビュー80戦目で待望の初勝利を飾った。YJSは相性が良く、園田、佐賀で2着4回と堅実にポイントを積み上げた。「2着ばかりで何回も悔しい思いもしてきたが、JRAでやっと勝つことができてホッとしています」と初Vに一安心。

 笠松のJRA交流戦にも参戦し、自厩舎の5番人気ウエスタンシーズンで鮮やかに逃げ切った。先輩の田口貫太、永島まなみ騎手らに先着し、笠松初騎乗で初勝利を飾り、すがすがしい表情で装鞍所に戻ってくると、笑顔がはじけた。

 オグリキャップの勝負根性が宿るパワースポットでもある聖地・笠松競馬場。交流戦を勝ったJRA騎手は、その後のレースで好成績を残す傾向があり、通算2勝目の橋木騎手も飛躍への大きな一歩としたい。

YJS笠松で4着2回の古川奈穂騎手。金沢では勝利を飾り、ファイナル進出を決めた

 ■古川奈穂騎手、金沢で勝ち4位通過

 古川奈穂騎手は笠松ラウンドで4着が2回。矢作芳人厩舎所属でも知られ、兄弟子・坂井瑠星騎手のアドバイスを受けながら「前だけを向いて頑張ります」と成長を遂げてきた。笠松では「ファイナルへ進出したことがないですが、まだ金沢があるので」と意欲。その言葉通り、金沢第2戦で勝利を飾り、4位通過で滑り込んだ。田口騎手と同期の河原田菜々騎手も佐賀で1着、笠松で3着があり、総合2位をキープしたまま、ファイナリストに仲間入りした。

 加藤翔馬騎手(金沢)は笠松で2着。「でかいですね。あとは金沢で決めて、ラストチャンスをつかみたい」と闘志。地元では4着、5着にまとめ、3位でファイナル圏内を確保した。

 ■室陽一朗騎手突き抜け、及川烈騎手は2回目ファイナル

 笠松で期間限定騎乗の経験がある及川烈騎手(浦和)が4位で、一昨年(総合14位)に続き2回目の進出。同じく名古屋に一時所属した室陽一朗騎手(浦和)は最終戦(船橋)を制し、一気に先頭まで突き抜けた。東海公営での経験を南関東に戻ってからも生かしており、ともに飛躍の場にしたい。

 明星晴大騎手は4日目メイン「初時雨特別」を1着でゴールイン。ファンからは「31勝となり、減量が1キロ取れて新たなゲートが開く。頑張ってほしいです」と温かいエール。来年のYJSでは成長した姿を見せたい。


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 「1聖地編」に続く「2新風編」ではウマ娘ファンの熱狂ぶり、渡辺竜也騎手のヤングジョッキーズ・ファイナル進出、吹き荒れたライデン旋風など各時代の「新しい風」を追って、笠松競馬の歴史と魅力に迫った。オグリキャップの天皇賞・秋観戦記(1989年)などオグリ関連も満載。

 林秀行(ハヤヒデ)著、A5判カラー、206ページ、1500円。岐阜新聞社発行。笠松競馬場内・丸金食堂、ふらっと笠松(名鉄笠松駅)、ホース・ファクトリー、酒の浪漫亭、小栗孝一商店、愛馬会軽トラ市、岐阜市内・近郊の書店、岐阜新聞社出版室などで発売。

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