「権利の拡大に併せ、当事者の思いに寄り添える社会になってほしい」と語る雪齋さん=2月下旬、各務原市内

 約140年ぶりに成人年齢が変わることで、18歳にできることは広がる。携帯電話を契約したりクレジットカードをつくったりするのに必要だった親の同意が要らなくなる。公認会計士や司法書士、医師免許など国家資格取得の道は従来より2年早く開かれる。こうした新たにできるようになる項目に並ぶのが、性別変更の申し立てだ。

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 出生時に割り当てられた性別とは異なる性を生きるトランスジェンダー。戸籍上の性別を変更した人は2019年度、全国で948人と過去最多に上った。未成年には認められない権利で、成人年齢の引き下げに伴って18、19歳の手続きが可能になる。

 「権利の対象が広がること自体は良いこと」と受け止めるのは、岐阜県内のLGBTQ(性的少数者)の支援団体「ぎふ・ぱすぽーと」代表で、自身もトランスジェンダーの雪齋さん(75)。新型コロナ禍で対面での相談件数は減ったが、以前は若者の相談も受けていたという。

 ただ、「成人になるからといって18、19歳に申し立てができるかというと、現実的ではない」とも。手続きには、関連費用も含め200万円余りともされる性別適合手術が必須で、親の理解や援助なしに18、19歳が費用を用立てるのは困難だ。性別変更は体の機能が失われる不可逆性が伴うため、「社会には当事者の思いに寄り添う姿勢が必要だ」と訴える。

◆男女婚姻18歳「平等実現」

 改正によって広がる、性別が関係する権利は結婚にも及ぶ。女性は婚姻できるようになるのが16歳だったが、男女とも18歳になる。

 岐阜大地域科学部の立石直子准教授(家族法)は「成人年齢引き下げの副産物だが、法制上の男女平等の実現という意味で大きな成果といえる」と評価する。婚姻適齢の年齢差は、女性には高度な学歴や職業訓練が不要と考えられていた約140年前の価値観が関係していたとし、「婚姻後の女性の社会的地位が低かったことから、是とされ続けてきた」と指摘。今回の民法改正は、男女平等にも寄与すると歓迎する。

 一方、立石准教授は、18、19歳の親権者による契約の取り消しができなくなる点などを重視し、「民法上の成人となることは、大きな責任が伴うことを意味する」と強調。「成人として自由度が高くなると同時に、法的責任も振りかかる。18、19歳は、まさに『急いで大人にさせられる』当事者。サポートが社会全体の課題になる」との見解を示した。

 性別変更の申し立て 2004年に施行された、性同一性障害特例法に基づく手続き。2人以上の医師から性同一性障害と診断された上で▷20歳以上▷未婚▷未成年の子どもがいない▷生殖腺がないか機能がない▷別の性別の性器部分に近似する外観を備えている-を全て満たすと、家庭裁判所で変更審判が受けられる。成人年齢の変更に伴い、年齢要件は4月から18歳以上に引き下げられる。

(2022年3月22日掲載記事)

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