岐阜家庭裁判所が入る岐阜地裁。改正少年法によって、18、19歳が事件を起こした場合の家裁からの逆送対象が拡大する=同地裁

 成人年齢を18歳とする改正民法とともに、事件を起こした18、19歳の厳罰化を図る改正少年法も4月に施行される。公職選挙法の改正で選挙権年齢が18歳以上に引き下げられて7年近くがたつ中で、“18歳からが大人”として二つの法の整合性が図られる。一方、処罰よりも更生に重きを置く少年法の理念が後退しかねないとの懸念も根強い。

 改正少年法は、18、19歳を「特定少年」に規定し、健全育成や更生の機会が従来通り与えられるようにした。全ての事件を家庭裁判所に送致する仕組みも維持される。他方、家裁から検察官への送致(逆送)で20歳以上と同じ刑事手続きが取れる対象を拡大。犯行時16歳以上による殺人や傷害致死など「故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪」に、強盗や強制性交、組織犯罪処罰法違反(組織的詐欺)など「法定刑の下限が1年以上の懲役・禁錮に当たる罪」が加わる。

 朝日大法学部の大野正博教授(刑事訴訟法)は、18歳選挙権や新たな成人年齢との間で「法的な整合性がとられることには一定の意義がある」とする。ただ、逆送できる罪種が増えることから「多くの事件で執行猶予となることが予想される。従来なら少年院送致となったと思われる事案で教育的な手当てがなされず、改善更生につながらない危険性もある」と指摘する。

 起訴された特定少年の氏名など本人を特定する「推知報道」も解禁される。大野教授は「少年法の理念と表現・報道の自由の間で、双方の利益をいかに測るかの検討が必要」とする。交流サイト(SNS)による情報発信が当たり前になる中で「特定少年の改善更生を妨げないための配慮を、メディアのみならず市民にも広く教育、啓発する必要がある」と訴える。

 岐阜県弁護士会の小島浩一会長は「少年法の理念を踏まえ、適切な運用がなされるかを注視する必要がある」と強調する。同会は昨年1月、政府による改正案の閣議決定と国会提出前に、改正に反対する会長声明を発表。逆送対象の拡大に「保護処分による少年の立ち直りへの支援や再犯防止の効果は得られなくなる。少年法の健全育成の理念は大幅に後退する」と懸念したためだ。施行を目前に小島会長は「過ちを犯しても立ち直り、健全な大人になる可能性を持っている。犯情ばかりを見て、保護の必要性が軽視されることがあってはならない」と話した。

 【逆送(逆送致・検察官送致)】 検察官から身柄や事件の証拠物などが送られた家庭裁判所が「刑事処分が妥当」と判断した際、検察官に戻して送致すること。成人と同じように刑事裁判にかけられるなどし、刑事処分を受ける。現行の殺人や傷害致死など「故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件」に加え、改正少年法では現住建造物等放火、強盗、強制性交など「死刑や無期、短期1年以上の懲役、禁錮に当たる罪の事件」について原則逆送することが明記された。

(2022年3月28日掲載記事)

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