タブレット端末で勉強するカンボジアの子どもたち=同国

 「カンボジア・教育」というと皆さんは何を思い浮かべるでしょうか。カンボジアでは1970年代に起きたポルポト政権による虐殺で知識人や教育者は虐殺され、教育システムそのものが崩壊しました。内戦後から現在に至るまで多くの先進国から支援を得て、教育制度の改善に取り組んでいるカンボジアに私は2014年に移住し、その教育改革に携わっています。

 日本はカンボジアにとって最大の友好国として、教育はもちろんインフラ建設の支援をしてきました。カンボジアの水道、多くの橋や道路は日本の支援によって建設され、初めて会ったカンボジアの人にそのお礼を言われることも少なくありません。

 教育においても、日本は教員養成大学の設立、教科書策定など多くの支援をしてきました。そんな中、私は、カンボジア政府と国際協力機構(JICA)と共に、デジタルツールを使って、カンボジアの教育の質を向上させる案件に取り組んでいます。

 内戦、貧困といったイメージの強いカンボジアですがデジタルツールの普及はすさまじく、スマホ普及率は120%。最近ではデジタル決済の普及も進み、すっかり紙幣を持たなくなりました。パソコンやタブレットを保有する学校も少なくありません。

 そんなデジタルツールの普及が著しいカンボジアにおいて、私は日本で開発された最新の教育アプリを、カンボジアの政府と共に、公立学校の授業に導入し、子どもたちに優れた学びを提供する仕組みをつくっています。ある夏休み前の日に学校に行くと、先生も生徒も勝手にフライングで夏休みに突入しているなど、まだまだ笑ってしまうようなこともありますが、子どもたちが、日本で開発された優れた教育アプリを使って、楽しく学んでいる姿を見ると、いつもうれしい気持ちでいっぱいになります。

 日本発のデジタルツールの力を用いて、カンボジアの教育を劇的に向上させ、その環境で学んだ子どもたちがカンボジアの未来を開拓していく日を夢みて、今日も40度近い灼熱(しゃくねつ)のなか、教育改革に取り組んでいます。

◆カンボジア県人会 渡邉大貴さん略歴

 わたなべ・だいき 飛騨市出身、斐太高校卒業。カンボジアにて教育系企業を経営。JICAの民間連携事業としてカンボジア教育省と共に、アプリを使った教育の質向上に取り組む。

▼メッセージ

 故郷岐阜の自然が大好きで、カンボジアに来てから一層故郷岐阜の素晴らしさに気付くことが多くなりました。今後は岐阜とカンボジアをつなぐような活動もしていきたいです。