焼き上がった八百津せんべい。落花生と卵の香りが立ち上がってくる=加茂郡八百津町八百津、日の丸製菓
焼きたての瓦せんべいに図柄を刻印する稲垣伸作社長。反り板に素早く乗せ、特有の反りをつける
生地の粘度を確認する稲垣伸作社長
定番の落花生入りをはじめ、多種多様な八百津せんべい

 小麦粉の香りが鼻腔(びこう)を突き、口に運ぶと、卵と砂糖の素朴な甘さが広がる八百津せんべい。創業67年の日の丸製菓は約20種類を製造している。工場では焼く工程こそ自動化しているが、生地の調合など要となる一部の工程は手作業で行い、ご当地の味を守り続けている。

 原材料がシンプルなだけに、品質や使い分けにこだわりを持つ。小麦粉は県産など8種類を使い分けている。稲垣伸作社長(71)は「国内産の小麦粉は粘り気があるので焼きにくいが、香りが抜群。何より消費者に安心安全をアピールできる」と語る。砂糖も焦げ目を付けたい瓦せんべいや落花生入りのせんべいは上白糖を、白さを生かしたい種類には北海道産のビート糖を使う徹底ぶりだ。

 

 こだわりの材料を混ぜる生地づくりの工程は「味はもちろん、うまく丸く焼き上げるために大切にしている」と稲垣社長。毎日午前5時半過ぎ、小麦粉と砂糖、卵をかくはん機に入れて、粘りが出ないようにさっくり混ぜていく。稲垣社長自身が機械の前に立ち、粘度を確認する。「その日の湿度、気温などによって少し変えている。せんべいの種類によっても違う」といい、生地は必ず試し焼きして最終確認している。「長年の経験で培った視覚や味覚を全て活用し、生地を作り上げる」とこだわりを語る。

 完成した生地は、焼きの工程に入る。工場内には稼働から半世紀を経た古い焼き機から、全自動の焼き機までずらりと並ぶ。売れ筋の落花生入りや玄米のせんべいは、全自動の機械に入れ、約3分半~4分間、一定の火力で焼き上げる。

 瓦せんべいや扇形せんべいなど最後に一手間を加える種類のせんべいは、半自動の機械で焼く。瓦せんべいの場合は、最後に企業名などの文字や図柄の焼き印を入れる。受注生産が主だが、現在はロシアのウクライナ侵攻を受けて「NO WAR 人道のまち やおつ」という特製の焼き印を押した瓦せんべいを製造し、直売所を訪れた買い物客らにプレゼントしている。自ら焼き印を押す稲垣社長は「杉原千畝の生誕の地から平和を願うメッセージを発信したい」と願いを込める。

 最盛期には約170軒の工場が町内に立ち並んでいたが、現在、協同組合に加盟し、常時生産しているのは十数軒のみ。日の丸製菓は大手スーパーのプライベートブランド商品の製造を柱にしているが、直売所、ふるさと納税で購入する根強いファンにも支えられている。稲垣社長は「『おいしい、また食べたい』と言ってくれるファンがいる限り、焼き続け、八百津が誇る特産を残していく」と力を込める。

 【工場概要】1954年に八百津町内で創業。現在の工場は2000年に操業、敷地面積は約830平方メートル。直売所も併設する。工場内では全自動と半自動の焼き機計7台が稼働し、1日の平均生産量は約200キロ。自社製品と相手先ブランドによる生産(OEM)の比率は半々。工場の従業員は約10人。八百津町八百津。