自動で研磨機に刃をセットするロボットアーム=関市下有知、大野ナイフ製作所
IoTを使い、生産目標や稼働状況を「見える化」したモニター=関市下有知、大野ナイフ製作所
創業100周年を記念して製作したデザイン性の高い包丁「鵬翼」

 ロボットアームが包丁の刃をつかみ、研磨機に正確に取り付ける。大野ナイフ製作所の工場では、作業の自動化やロボット導入が進む。刃物業界といえば、ベテラン職人が黙々と刃を研磨する様子を思い浮かべるが、大野武志社長は「包丁を扱う刃物企業で、ここまで自動化を進めているのは珍しい」と胸を張る。研磨や熱処理など包丁の製造に必要な100~120の工程を内製化し、NC研磨機やロボットを次々と導入することで、省人化と技術力継承の両立を図っている。

 工場内には、9台のNC研磨機が所狭しと並ぶ。従業員が刃をセットし、ボタンを押すと、後は機械が正確に研磨作業をこなす。熱処理した後のゆがみの矯正にも機械が活躍。手作業だった刃の厚みのチェックも今では機械が自動で振り分ける。

 刃をセットする作業も自動化しようと、工場内には研磨用ロボット2台を設置する。アーム部分で刃の表と裏を交互に取り付け、研磨後は自動で回収する。トラブルで稼働停止した場合でもすぐに責任者のスマートウオッチ(腕時計型端末)に連絡が入る。ロボットが順調に稼働している間は、ほかの作業に専念することができるため、従業員の多能工化にも役立つという。溶接作業場でもロボット2台を置く。

 生産工程の自動化と同時に進めてきたのが、モノのインターネット(IoT)技術を活用した生産管理システムの開発だ。自社の従業員が企業と協業でシステムを作り上げ、当日の生産量や稼働状況などの「見える化」を進めた。生産管理部門や工場内のモニターにこうした情報を映し出すことで、他部署の状況も一目で把握することが可能で、不具合にも即座に対応できる仕組みを整えた。

 結果として従業員の残業はほぼなくなり、月間製造本数は15%、売上高は20%増えた。自動化で作業負担が減ったため、女性の採用も増え、女性従業員の比率は約40%まで高まった。大野社長は「納期が短くなっただけではなく、問い合わせにも正確な納期を伝えることができるようになった」と成果を強調する。

 仕上げの最終刃付けや検品といった部分は、今でも人が手作業でこなす。大野社長は「機械は作業の効率を高めるための手段」と言い切る。機械任せにせず、機械を使いこなす社員を育て上げることで技術の継承につなげている。

 【工場概要】1916年創業。海外向けのポケットナイフの製造を手掛けてきたが、主力をデザイン性の高い富裕層向けの高級包丁に切り替え、家庭用包丁や業務用刃物のOEM(相手先ブランドによる生産)を展開する。ロボット導入を積極的に進めながら、モノのインターネット(IoT)技術で生産工程を「見える化」して生産性向上や省人化に取り組む。本社と工場の敷地面積は1万1314平方メートルで、工場の延べ床面積は3830平方メートル。従業員数は約120人。