リニア中央新幹線岐阜県駅の安全祈願・起工式を前に、思いを語る安藤鉦治さん=今月5日、中津川市千旦林、JR美乃坂本駅前

 リニア中央新幹線の岐阜県駅(仮称)の安全祈願・起工式が11日、岐阜県中津川市坂本地区で行われる。JR東海が2011年に中央線美乃坂本駅(同市千旦林)近くに整備する方針を明らかにしてから11年。建設計画地の区長は地域の姿が少しずつ変わる中、複雑な思いを抱えながら住民生活への負担が少ない形で工事が進むことを強く願っている。

 坂本地区は同市西部の田園地帯で、約1万2700人が暮らす。駅は地上駅で、全長約1300メートル、高さ約30メートルの計画。昨年7月に始まった準備工事に伴い計画地は白いフェンスに囲われ、トンネル整備に向けて緑豊かな山も大きく削られた。周辺は立ち退いた住宅の基礎だけが残る土地も目立つ。

 「将来、リニアが開業すれば立派な街になるかもしれないが、住民からすると工事による生活環境の悪化が心配」と話すのは、駅の計画地で区長を務める安藤鉦治さん(74)。複数の工事によって地域の姿が大きく変わるため、「今ある地域コミュニティが分断されてしまう」と危機感を強くする。地元ではリニア建設工事のほかに、駅周辺の土地区画整理事業、送電線整備、アクセス道路の工事が集中。工事が本格化した際の住民生活への影響が大きな関心事だ。昨年11月には坂本区長会が住環境への配慮などを求めJR東海に要望書を提出した。

 工事現場の近くには小中学校があり、白いフェンス沿いを歩いて登下校する子どもも多い。安藤さんの自宅近くには児童養護施設「麦の穂学園」もあり、今後は安全対策や騒音・振動対策の徹底を求める考えだ。「自分たちの年代ができることは、今ある原風景を守りながらさまざまな開発事業に対する住民負担を軽減すること」と思いを話す。

 林茂雄さん(69)も計画地で区長を務める一人。地元の集会所も移転の対象となり、何とか土地を見つけて移った。区の中には半数以上となる約10戸が立ち退いた班もあり、地域コミュニティの運営にも影響が出ている。「高齢化も理由にあるが、草刈りをはじめ、共同作業でやってきたことができなくなった。今後の立ち退きで数軒となる班もあるので、地域ビジョンを早く考えたい」と話す。

 地元にとって大きな節目となる起工式。林さんは地域を離れた住民に思いを寄せる。「リニアで住み慣れた地域から退去を余儀なくされた人が、新天地で何不自由なく暮らせることを願うばかり。この地域に生まれ育った人もいるので地域の歩みを見守ってほしい」と願いを語る。