国立研究開発法人の理化学研究所(理研)は14日までに、岐阜大の仲澤和馬シニア教授らが参加する国際共同研究グループが、物質を構成する原子の中心にある原子核の研究で、原子核の一種であるハイパー核のうち最も軽い「ハイパートライトン」が生成されてから崩壊するまでの飛跡を効率的に検出することに成功したと発表した。近年技術的な進化が著しい人工知能(AI)を活用することで、人の手では数百年かかる検出作業が数年に短縮するという。
研究グループは理研の研究員を中心に、仲澤シニア教授ら国内外の研究者15人で組織。岐阜大大学院の笠置歩さんも理研の大学院生リサーチ・アソシエイトとして参加した。物質の構造や起源を探るための研究の一環で、宇宙誕生の解明につながるとしている。
13日の記者説明会で解説した理研の齋藤武彦主任研究員によると、原子核を構成する陽子と中性子の間に働く引力を調べる中で、鍵となるのが特殊な原子核であるハイパー核だという。ただ、ハイパー核の理論の基準となるハイパートライトンの性質は未知のままで、原子核と粒子の間に働く引力などが正確に測定されていない課題があった。
研究グループは、2016~17年に仲澤シニア教授が茨城県東海村の大強度陽子加速器施設「J-PARC」で行った実験で得られ、ハイパートライトンの飛跡が記録されていると思われる1300枚の写真乾板に注目。これまでは顕微鏡を使って人の目で丹念に探す必要があったが、AIで自動検出する手法に挑戦した。
AIが検出の参考にする飛跡の観測写真はないものの、飛跡情報をシミュレーションし、モデルとなる模擬画像を画像変換技術を用いて作成。それと同じものを写真乾板の膨大な記録から抜き出そうと、車の自動運転などにも使われる物体検出の技術を使い、ハイパートライトンが生成されてから崩壊するまでの飛跡の自動検出に成功した。今後も複数の飛跡を検出することで、未知だったハイパートライトンの性質を世界最高精度で明らかにできるという。
齋藤主任研究員は「物質の成り立ちの解明への大きな一歩になる」とし、仲澤シニア教授も「これまでの理論が根底から変わるかもしれない」と話している。研究結果をまとめた論文は14日、英文の科学雑誌「Nature Reviews Physics」のオンライン版に掲載された。










