トークショーで笠松競馬「夏祭り」を盛り上げた細江純子さん

 ホソジュン、ぶっちゃけトーク「舌好調」。猛暑日となった11日、笠松競馬は「山の日」の祝日開催で熱気ムンムン。重賞レースのほか「夏祭り」イベントも盛りだくさんで家族連れが目立った。元JRA騎手で競馬評論家の細江純子さん(愛称・ホソジュン)のトークショーもあり、約2000人が来場し盛況となった。
 
 7、9R後には細江さんのトークショーが場内特設ステージで開催され、中央、地方競馬の多くのファンを楽しませた。かつて同じステージで開かれたアンカツさん(安藤勝己元騎手)やミルコ・デムーロ騎手のトークショー以上に多くのファンが詰め掛け、人気の高さを示した。

■JRAデビュー前「笠松の厩舎に住んだことも」

 司会の長谷川満さんが「ズンコママであったり、ホースコラボレーターであったりと、いろいろな顔をお持ちです」と紹介。愛知県蒲郡市出身の細江さんは、集まったファンの数に圧倒され、「すごいですね、うれしいです。笠松競馬場は15年ぶりぐらいです。(JRA競馬学校入学前に)どのようにしたらジョッキーになれるのか分からなくて、笠松や名古屋で誘導馬を担当している方に相談して、(高校の)夏休みとかに笠松の厩舎に住まわせてもらいました。馬にも乗せてもらったりして、お世話になりました」と感謝。意外にも笠松競馬とのつながりが深かったというのだ。

 細江さんは1996年デビューで、女性ジョッキーとして草分け的な存在で「元祖ですよね。96年は僕が生まれた年です」と、さっきアナウンサーの方にも言われたそうだ。最近では、女性ジョッキーといえばアイドル化している。「藤田菜七子ちゃんが1人ですごく頑張った。馬に寄り添って乗り、6年目を迎えて乗り鞍などで悩む時期でもありますが、拠点を栗東に移して、ガッツがすごい。(重賞初騎乗初Vの)今村聖奈ちゃんも大活躍。小さい頃から馬に乗っていたが、福永祐一騎手ら先輩から教えてもらって、いっぱい吸収して楽しくてしょうがないでしょう。JRA競馬学校には女性が3人ぐらいいます」と話し、今後も女性ジョッキーが増えて活躍することを期待していた。
       

大勢のファンの前でぶっちゃけトークを披露する細江さん

■ウマ娘ブーム「声優さんは自分の武器を持っている」

 細江さんのデビュー当時は、競馬界も男性社会で大変だったという。「今では宝物のように扱ってくれますが、私たちの頃は『汚物扱い』だった。騎手をしていて申し訳ありませんという感じだったけど。男性も女性とどう接していいか分からなかった時代でした」と、90年代の女性騎手の厳しい立ち位置を振り返った。

 最近では、ウマ娘のアニメ版に出演したり、ユーチューブを配信している細江さん。ウマ娘ブームについては「声優さんがやられていて、歌はうまくて声もいいし、自分の武器を持っていますね。ウマ娘役で格好いいし、すごいなと」。

 会場には、ウマ娘関連のアニメやゲームを見ている人も多く、細江さんといえば「ゴールドシップでの悲鳴」(宝塚記念で出遅れ)でしょうというファンの声も。細江さんは「馬が立ち上がった時に『キャー』と言っちゃって、JRAから大怒られしたんですが。なのに、それが今ではネタになっちゃって」と苦笑い。

 あるとき「下ネタのダジャレを考えるようになって、それが楽しくなって、気付いたら『ズンコ』になってました」とも。週刊誌の執筆で下ネタに開眼したといい、ユーチューブの「ズンコちゃんねる」には11万人が登録しているという。コロナ禍もあって、会場での笑いは控えめだったが、1回目のステージの終わりには、大きな拍手に包まれていた。

くろゆり賞の大胆予想は大外れとなった

■パドックでは、厩務員さんの引き手に注目

 2回目のステージでは、細江さんはテレビ中継でもおなじみのパドックでの出走馬の見方についても解説。「今はコロナ禍で、私はトレセンの中に入れないが、パドックでは馬も頭がいい子は違うのよね。賢い馬はパドックまでは、やる気なさそうなのに、ゲート裏直前で変わる子もいます。スイッチのオンオフなど、(GⅠ6勝の)グランアレグリアは女優でしたもの。『あーっ、だまされた』となるんです」とも。

 「暑いときは馬もダラーンとしちゃうが、厩務員さんの引き手がピーンとなっているのが好き。手の角度とか間隔で、きょう走るか、やばいか分かるような気がします。馬が暴れていても、厩務員さんがニコニコしていればいつも通り。入れ込みも馬によるし、厩務員さんの表情やリズム感がいいとかでね。馬の体を見るのもいいが、男(人間)を見るのいいです」と突っ込んだトークとともに、「あー暑い」と参った表情も見せていた。

■くろゆり賞予想、本命を2頭にして攻めたが

 トークショーの最後にはくろゆり賞の予想も披露。「吉原寬人騎手はうまいから」とナムラゴローを本命に。前日に決めていたという笠松のインシュラーも本命にして、2通りの予想で勝負。「皆さん、この予想を外せば当たるかも」と言っていたが、11R後には撃沈が判明。司会の長谷川さんも「(2着の)川原正ちゃん、ひさしぶりに笠松へ来てくれたが」と言いながら、2人とも無印だった。細江さんは帰りの電車の中で「川原かー」と何度もつぶやき、大外れを残念がったという。 

くろゆり賞を制覇したメイショウワザシと今井貴大騎手

■名古屋の騎手5人がコロナ禍でダウン、騎乗変更相次ぐ

 笠松競馬真夏の名物レースで、地方全国交流の「くろゆり賞」(1600メートル、SPⅠ)は、前走勝ち馬がいない混戦レース。終わってみれば実績随一の大井・メイショウワザシ(牡7歳、宗形竹見厩舎)が完勝。岡部誠騎手の代打・今井貴大騎手がきっちりと1番人気に応えた。

 だがこの日、くろゆり賞シリーズ後半戦は波乱の幕開けとなっていた。11日までに名古屋の騎手5人と厩舎関係者3人がコロナ感染。このうち騎手2人は笠松開催の当日、来場後に感染が判明した。このため、メインのくろゆり賞の2人を含め、名古屋の騎手計4人が騎乗変更となった。         
 

優勝馬メイショウワザシと今井騎手(右)ら喜びの関係者

■くろゆり賞、代打・今井騎手で大井・メイショウワザシ圧勝

 くろゆり賞は、10頭とも元JRA馬の戦いとなったが、やはりメイショウワザシが強かった。2019年のシリウスS(阪神)で重賞3着、20年の総武S(中山)でオープン勝ちがあり、大井に転入し5戦目。金沢・ブラックアピスが逃げ、メイショウワザシは2番手から3コーナーで先頭を奪うと、そのまま押し切った。

 4馬身差の2着に兵庫・ナナカマド(牝6歳、田中範雄厩舎)=川原正一騎手=、3着には笠松のスタンサンセイ(セン馬6歳、笹野博司厩舎)=藤原幹生騎手=が9番人気で食い込んだ。7番人気・ライジングドラゴン(牡8歳、伊藤強一厩舎)=渡辺竜也騎手=も4着と健闘した。重賞ハンター・吉原寛人騎手騎乗で2番人気となったナムラゴロー(牡4歳、田口輝彦厩舎)は5着に終わった。

 勝利騎手インタビューなどで今井騎手は、代打出場となって「このチャンスをものにしようと、それだけを考えて乗りました」と意欲。「前に行く馬がいなかったんで、行っちゃいそうでしたが、2番手からの競馬で、理想的でした。直線は南関東よりちょっと短いので、早めに3コーナー過ぎから離していこうと。馬が最後まで頑張ってくれたので、ここに立つことができました」と思い通りの展開に持ち込んでの勝利を喜んだ。細江純子さんは、くろゆり賞のパドック解説に続いて表彰式では、プレゼンターとして今井騎手に花束を贈呈した。

川原正一騎手と藤原幹生騎手が追い比べ。見応えがあった2着争い

■川原騎手と藤原騎手が見ごたえある追い比べ

 ナナカマドカがリードを奪い、注目されたのは名手2人による2着争い。7月末にけがから復帰した藤原幹生騎手のスタンサンセイと、笠松出身で兵庫から駆け付けた5700勝超えの「レジェンド」川原正一騎手のナナカマドカが4コーナーからびっしりと競り合い、見応えがあった。特に川原騎手は笠松競馬で29年、兵庫県競馬で17年とジョッキー人生を歩み続け、両競馬で2000勝以上をマーク。63歳となったが、この日の園田競馬には出場せず、古巣の笠松コースを選択し、応援するファンの期待にも応えた。

 川原騎手はメインのみの騎乗で、お話を伺う機会はなかったが、最終レース後、最後の直線で腕を競った藤原騎手が、川原騎手の若々しさに驚いていた。藤原騎手が騎乗したスタンサンセイも2月にウインター争覇を好位から制した重賞勝ち馬。くろゆり賞3着で「頑張って走りましたね」と。最後は川原騎手と、たたき合いになったことについては「途中まではこっちが出てたんですが、最後はちょっとバテちゃって、かわされましたね」と残念がった。

 藤原騎手は2001年のデビューで、川原騎手と笠松のレースで一緒に乗っていたこともあるが「60代になっても、頑張ってましたよ。メッチャ追うじゃんと思いました。ホントに盛り返してきましたから」と川原騎手の健在ぶりに脱帽だった。円熟のベテランが「笠松時代の後輩には負けられない」とばかりに迫力ある追い比べを制した。「ミッキーさん(藤原騎手の愛称)もまだまだこれから20年ぐらいありますから」と声を掛け、川原騎手のように息の長いジョッキーとして、笠松競馬を支えていってくれることを願った。
  

「岐阜美少女図鑑しろゆり賞」を勝った藤原幹生騎手(中央)と関係者(笠松競馬提供)

■表彰式にも戻ってきた藤原騎手に「お帰り-」

 藤原騎手は10Rの「岐阜美少女図鑑しろゆり賞」を、1番人気チュウワフライヤー(牝6歳、加藤幸保厩舎)で制覇した。岐阜県内の一般女性をモデルにしたフォトブック「岐阜美少女図鑑」の最新号(第25号)の発行を記念した協賛レースで、100冊が来場したファンにプレゼントされた。岐阜県内の橋の上や駅前など身近な日常風景の中で女性を捉えた写真を掲載。コロナ禍で生活に不安を抱える若者に、前向きになれるような一言を添えエールを送っている。

 表彰セレモニーでは、藤原騎手にファンから「お帰り-」「藤原騎手おめでとう」の声も。中央2勝クラスからの移籍初戦で「最後は底力で頑張ってくれました」。大けがからの復帰では「体調もいい感じです」とミッキースマイル。掲載モデルの3人もプレゼンターとして花束を藤原騎手らに贈呈した。「勝てて良かったです。前回の3日間から乗っているんですけどね」とも話していたが、ファンは表彰式での登場を待っていたのだ。

■「金曜日ライブ」トークショーでも盛り上げ

「金曜日ライブ」トークショーに出演した、なかしさん(中)と安田遥香さん

 12日には笠松競馬恒例となったユーチューブライブ配信「金曜日ライブ」の出演者である、タレントのなかしさんとアホロートル・安田遥香さんの2人が笠松競馬場に来場し、トークショーも行った。
 
 これまではリモート出演だったが、笠松競馬場にデビュー。2人は「コースの中に畑があって農産物を作っていたり、お墓もあった。『間借り』している変な競馬場で自由すぎる」と驚いた様子。なかしさんは「パドックの見方を教えてもらった」。安田さんは「返し馬にも注目です」と競馬を勉強中だ。特設ステージの近くにはオグリキャップ像もあり、チラっと見学にも走っていった。

 ライブ配信では、競馬エースや競馬東海の記者とともにレース予想も披露。「競馬を知らないお笑い芸人2人ですが、視聴者に教えてもらいながら成長していきます」と意欲。マイクロバスでパドック前に到着した騎手の歩き方に注目したオリジナルの「ナイスウオーキング予想」なども一部のファンに注目されている。今後もユニークな視点で笠松競馬を盛り上げていってほしい。

飛騨アイスクリームの配布では、長い行列ができた

■「夏祭り」イベント大にぎわい

 年末シリーズとともに、来場者でにぎわうお盆開催(15日が最終日)。コロナ禍やレース自粛でイベントは3年ぶりとなったが、トークショーのほか、ミルクスイーツフェスタ(12日)では飛騨アイスクリーム(先着500個)など岐阜県産の乳製品3品を配布。東門付近に家族連れや若者グループらも多く並び、長い行列ができた。15日には「移動動物園がやってくる!」も開催。子どもたちが、小動物たちとのふれあいを楽しむ。

 場内ではキッチンカーの出店もあり、小栗孝一商店の出店では、オグリキャップ関連の小物グッズの新商品も多く出品され、人気を集めていた。個人協賛レースも数多く、「健太郎誕オメ!ナミダで重馬場!」で来場したグループは、最後に20人ほどがオグリキャップ像前に集合。サプライズの協賛を受けた男性は「きょうは良馬場でしたが、(僕の目には)涙で重馬場になりました」と感激していた。