【準々決勝 県岐阜商10―5大垣養老】
 県内各校が旗頭にする王者打倒の最強兵器〝遅い球〟を粉砕しろ―。県岐阜商3連覇へ向けた準々決勝大垣養老戦でのテーマだ。鍛治舎巧監督が前日練習から徹底させた左腕河田涼風対策が「じっくり球を見極めること」。その上で打てる球を「しっかりためこんで9割、軸足に体重を残して自分のポイントで打つ」。選手らは立ち上がりから鍛治舎戦略を徹底して加点し続け、課題クリアで四強のステージへと進んだ。

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◇立ち上がりからじっくり見極め、安打重ねる

 初戦の2回戦岐阜高専と3回戦の大垣商は左腕。4回戦高山西の先発は右下手投げ、いずれも武器は〝遅い球〟。強打県岐阜商は待ちきれず、自分のタイミングでバッティングできずに打たされる場面が多く、3試合終わってチーム打率は3割4厘。3回戦は6、4回戦は7と安打数とほぼ同数の多くの四死球を奪い、見極めの成果は出つつあったが、安打で粉砕することがテーマ。準々決勝の河田も最速115キロで、90キロ台の変化球を交え、左右に散らしてくる〝遅球のエース〟。4回戦で岐阜城北打線が待ちきれずに打ち上げ、散発4安打、2ランスクイズによる2点に抑えられた相手だ。

県岐阜商×大垣養老=1回表県岐阜商1死一塁、左前  適時2塁打を放つ垣津=長良川

 立ち上がり、県岐阜商打線のバットはいきなり、成果を示す。先頭の主将小林凜人が2―2から2本のファウルで粘り、高めのチェンジアップを中前にはじき返し、流れをつくった。1死後、打席には打撃好調をかわれ、3番に起用された垣津吏統。しっかり見極めた2―2から、真ん中に入ってきた甘い直球を左翼への先制二塁打にした。一時、調子を落としていた垣津だが「右方向へ強い打球を打つ意識で調子を上げることができた。きょうも方向は左だったが強い打球が打てた」と語る。好調の頼れる主砲園田進之助も右中間適時二塁打で続き、2点先取で流れをつくった。

県岐阜商×大垣養老=4回表県岐阜商 1死二、三塁、右前2点適時打を放つ大東=長良川

◇とまらない遅球撃破で準決勝へ

 〝遅球撃破〟の流れはとまらない。1点差とされた四回には1死二、三塁から8番大東要介。外角のスライダーを右方向へ2点適時打。「打てる球をしっかり引きつけて打てた」と振り返る。この日は4安打の固め打ちだった。

県岐阜商×大垣養老=5回県岐阜商 無死一塁、中前に安打を放つ小泉=長良川

 四回の先頭で勝利への流れを決定づけた右前打を放ったのが、途中出場の小泉慶。昨夏の岐阜大会で4割越えの活躍をしながら、再三のけがや不調に悩まされ、大会を前にようやく復帰した小泉。「復帰してからも自分のポイントで打てなかったが、ひきつけて高く浮いたスライダーを上からうまく払えた」と笑顔。続く五回にも先頭の園田の中前打に続き、低めのスライダーを自らのタイミングでエンドラン成功に導いた。

 大垣養老・河田から12安打8点を奪い、課題をクリアした県岐阜商。だが、「六回以降は、雑になってなかなか1本が出なかったことと、守りのミスでコールド勝ちできなかったのが今後の課題」と鍛治舎監督。甲子園での飛躍につながる真の強さを身に付けての3連覇へ―。名門の後継者たちの進化はとまらない。

 森嶋哲也(もりしま・てつや) 高校野球取材歴35年。昭和の終わりから平成、令和にわたって岐阜県高校野球の甲子園での日本一をテーマに、取材を続けている。