聖地・甲子園に刻んだ40勝-。8日に兵庫県西宮市の甲子園球場で行われた第105回全国高校野球選手権大会。大垣日大(岐阜)は近江(滋賀)を7-2で下し、阪口慶三監督(79)が節目となる甲子園春夏通算40勝を達成した。自身が持つ甲子園最年長監督勝利の記録も塗り替えた阪口監督は「40勝は周りから結構言われるので、正直ほっとした」と感慨深げに話した。
阪口監督にとって野球は人生そのものだ。前任の東邦(愛知)では22歳から監督を務め、練習の厳しさから「鬼の阪口」と恐れられた。1989年に春の選抜で優勝するなどし、大垣日大に赴任したのは2005年。当時はまだ強豪校ではなく、マナーなどを一から指導したという。
東邦のような強豪校と同じ練習はせず、まず選手に野球を好きになってもらうことを心掛けた。そこで思いついたのが「褒めて育てる」。ここから鬼の阪口から「仏の阪口」に徐々に指導方針を転換した。「選手がリラックスしてやるのが一番」。声を荒らげることも減り、選手を奮い立たせる指導に徹した。
もちろん、1969年に初の甲子園出場を果たし、2校で通算50年以上かけて積み上げてきた勝ち星は、すさまじい勝負勘として試合中に発揮される。近江戦では二盗、三盗はもちろん、エンドランやスリーバントスクイズなど、変幻自在な「躍るような采配」がさく裂。聖地で選手を躍動させ、近江に圧力をかけ続けた。
「甲子園はわが人生で、生きざま」と阪口監督。この日の勝利で、常総学院(茨城)などで監督を務めた木内幸男さん(故人)に並び甲子園通算勝利数は7位となった。「41勝目も、何としても挙げます」。名将の視線は、既に次の1勝に向いている。