放射線治療医 田中修

 皆さんはがんと聞くと、どのように受け取りますか。日本で一番多いがんは胃がんであり、胃がんの基本的な治療方法は手術による切除です。そのため「がん=手術」と思っている人が多いかと思います。

 しかし、昨今の生物学や物理学の進歩に伴い、抗がん剤や放射線治療も急速に発展しました。「電話」で例えるなら、ダイヤルを回す黒電話がスマートフォンに進歩したのと同様に、放射線治療も飛躍的な進歩を遂げました。脳腫瘍、肺がん、肝臓がん、前立腺がんは放射線治療で治癒できる時代になりました。

 今回は、当院でも行われている肺がんに対するピンポイント照射について紹介したいと思います。まずCT(コンピューター断層撮影)にて、早期肺がん=図1、黄色い矢印=を認めます。年齢や合併症などで手術ができない場合(手術を受けたくない場合)、このピンポイント照射で治療可能です。その腫瘍に対して多方向から放射線を照射します=図2=。放射線の色が黄色いところが最も放射線が当たっている部位です。青く見えるのは弱く放射線が当たっている部位です。

 治療期間は4日間です(1日あたり1時間で治療が済むので通院で治療可能)。放射線治療の3カ月後には、腫瘍の消失を認めます=図3=。まさに「見えない科学のメスでがんを切る」という治療方法です。高齢者の体にも負担が少なく受けられる治療です。

 しかし、それぞれの治療方法も、がんによってどれが一番適しているかは、専門家でないと判断が難しいところではあります。外科療法、化学療法といろいろな治療を組み合わせる場合が多いのが、現在のがん治療の流れです。

 また今はセカンドオピニオンが当たり前になっています。今回紹介した治療方法は、放射線治療専門医でないと判断できない治療方法だと思います。それも含めてがんになった場合、一度、放射線治療科の医師に相談するのも参考になると思います。

(朝日大学村上記念病院講師)