整形外科医 今泉佳宣

 新しい年になりました。本年もよろしくお願いします。

 今回は骨と関節の感染症の話です。感染症とは人体に細菌やウイルスといった微生物が入りこんですみ着き、人体はそのような微生物を追い出そうとしている状態を言います。感染症というと、皆さんはどんな病気を思い浮かべますか? ある人はインフルエンザや肺炎を、またある人は食中毒に代表されるような感染性胃腸炎を思い浮かべるのではないでしょうか。

 骨や関節を扱う整形外科領域にも、感染症があります。骨関節感染症は、体内の免疫力の弱い状態を背景として起こり、かつては低栄養や衛生状態の悪い環境にさらされることの多かった小児期に発症することが多かったのですが、最近は加齢により免疫機能の低下した高齢者に発症することが多くなりました。

 骨の感染症は骨髄炎と言い、関節の感染症は他の原因で生じる関節炎と区別するために細菌性(または化膿(かのう)性)関節炎と言います。骨髄炎は、かつては小児期に血行性と言って、化膿巣から血行を介して細菌がすみ着いてしまうことが多かったのですが、現在は開放骨折後や手術後の術後感染症として骨髄炎を生じることが多くなりました。

 細菌性関節炎についても、かつては小児期での発症が多かったのですが、現在は治療目的での関節内注射の後や人工関節などの関節手術後に発症することが多くなりました。また、脊椎にも感染症を生じることがあります。かつては脊椎カリエスと言って、結核菌による脊椎炎が多かったのですが、現在は結核菌以外の一般細菌による化膿性脊椎炎が多くなりました。

 骨や関節の感染症では、呼吸器や消化器の感染症と同様に熱が出ることもありますが、必ずしも熱が出るとは限りません。しかし脊椎以外で、骨や関節に感染症を生じている部位は触ると熱があり、腫れていて赤くなっています。そして押さえると痛みがあります。その場合、整形外科医は血液検査を行い、体の中で炎症が起きているかを確認します。さらに、X線写真やCT(コンピューター断層撮影)、MRI(磁気共鳴画像装置)などによる画像検査で、炎症の程度と広がりを確認します。最終的に病巣から採取した膿(うみ)から細菌が検出されれば、確定診断となります。

 治療は抗生物質投与による薬物療法単独から、手術療法を併用する方法までさまざまです。脊椎の感染症においては薬物療法単独の治療が原則ですが、四肢の骨や関節における感染症では手術療法を組み合わせることが多くなります。

(朝日大学村上記念病院教授)