-御手洗さん、今調べてたんですが、そのうちちょっくら台湾行きません?

 -ちょっくら行けそうな感じですか? めちゃ行きたい

 LINEのたった一往復で、以前岐阜新聞のイベント、ジェンダーレスファッションコレクションでご一緒した、御手洗靖大さんとの台湾行きが決まった。以前はジェンダーレス男子と紹介させていただいたが、この夏ますますスキンケアに気合が入っている穏やかで聞き上手な御手洗さんと、ガサツだけれど向こう見ずなほど行動力のある私のコンビは健在で、今回「ふらっと台湾」ということで、リノベーションスポットや台湾コスメ、お茶にスイーツなどをリサーチしていた。

撮影・三品鐘

 そうしてふと、同じ名古屋芸術大の非常勤講師である詩人の永方佑樹さんとメッセージをしていると、永方さんも同じ9月に台湾の国際詩祭に参加するという。さらには日程もぴったり同じ。これは何か縁を感じて「これ…和歌のパフォーマンスをさせてもらえたり…しませんかねえ…」とやりとりしていたところ、なんと主催者から快諾を頂いた。「じゃあ、貴族の和歌披講できるので、狩衣(かりぎぬ)持っていっちゃおうかな!」と御手洗さん。カジュアルに着物を着るのは知っていたが、カジュアルに平安装束も着るとは。そんなわけで「ふらっと台湾」が「がっつり台湾で短歌普及」に変わってしまい、名古屋と東京で朗読をビデオ通話で練習、当日お渡しする和歌のテキスト印刷に、有無を言わせず狩衣の準備。

 MRT(地下鉄)を乗り継ぎ、国際詩祭には昼食から参加。日本の詩歌の集まりよりぐっとノリがよく、慌ただしくも楽しげだ。和歌朗読の時間になり、「ここはアジアンに、クールにノーブルに決めてやりましょう」と御手洗さんと喝を入れる。今回は翻訳がないため、有名な和歌を、披講と現代的な朗読との二重唱で声と音の違いを楽しんでもらうパフォーマンス。観客席もぐっと集中する。そして終わった後あちこちから言われた「Amazing!」の言葉。意味はわからなくても、和歌のバイブスは伝わったようだ。

 そうして「ふらっと台湾」のはずが、パフォーマンスの後には、互いに次にしたいことや野望がどんどん生まれてきた。まず台湾にふらっと行きたいと思わなければなかった台湾での和歌普及。そして、そこから浮かぶ次のプラン。そう、動くから、作れる。逆に言えば、作りたいなら動けばいいのだ。


 岐阜市出身の歌人野口あや子さんによる、エッセー「身にあまるものたちへ」の連載。短歌の領域にとどまらず、音楽と融合した朗読ライブ、身体表現を試みた写真歌集の出版など多角的な活動に取り組む野口さんが、独自の感性で身辺をとらえて言葉を紡ぐ。写真家三品鐘さんの写真で、その作品世界を広げる。

 のぐち・あやこ 1987年、岐阜市生まれ。「幻桃」「未来」短歌会会員。2006年、「カシスドロップ」で第49回短歌研究新人賞。08年、岐阜市芸術文化奨励賞。10年、第1歌集「くびすじの欠片」で第54回現代歌人協会賞。作歌のほか、音楽などの他ジャンルと朗読活動もする。名古屋市在住。

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