「タイトルを取るプロ棋士」。小学6年生のとき、息子の明浩が学校で作ったプリントに書いた言葉です。
息子の通った小学校では、2015年2月13日に、6年生5人ほどが、講堂で自分の志を発表する「志発表会」がありました。私も参加しましたが、それぞれの子が夢に向かう具体的な道筋を発表し、驚いたことを覚えています。
息子は、小学生のうちに奨励会に入るという目標を実現し、当時は奨励会5級でした。発表会では、中学校(入学)までに「奨励会3級」、高校(入学)までに「奨励会三段」、16歳で「プロ棋士」、20歳までに「タイトルを取る」という志を発表しました。
実際には、中学校入学までに「奨励会4級」、高校入学までに「奨励会初段」、18歳で「プロ棋士」となりました。私は、息子が年齢制限となる26歳までに棋士になれるかも不安でしたので、順調にステップアップしたことには、正直、驚きました。
私の教室では、毎年、6年生が「夢ボード」を作ります。「夢ボード」とは、笑顔でピースした写真を中心に貼り、「将来の夢」「(近い)目標」「毎日すること」「長所」「好きなこと」などについて書いた紙を、大きなボードに貼り付けるものです。
「長所」は、本人では書きづらいため、私が一人一人に伝えますが、他の項目は、自分で考えて書きます。写真を何枚か貼ったり、絵を描いたりして、カラフルで気分が上がる作品に仕上げます。それを毎日見ることで、自然と努力ができ、夢がかなう、そんなボードです。
教室の子どもたちは、「女流棋士になる」「患者さんに優しい医師になる」「思いやりのある薬剤師になる」などと夢を書き、それを実現してきました。
息子も、小学生のときに「夢ボード」を作りました。「プロ棋士になる」という夢は変わりませんでしたが、中学、高校と、「目標」や「毎日すること」を、ときどき書き直していました。プロ棋士になってからは、「順位戦昇級」を目標に掲げていたようです。
これまで、夢ボードに書いた夢を、大半の子どもたちが実現してきました。ただ夢を持つだけでなく、夢に近づく目標を掲げ、その達成のためにすべきことを自分自身で考えて、毎日コツコツ努力する。そうすることで、目標を達成し、最終的に夢をかなえることができます。
人から決められたものではなく、自分で決めたことだからこそ、自ら進んでやり遂げることができるのだと思います。
息子には、「タイトルを取るプロ棋士」という最後の夢に向かって、これからも努力を続けてほしいと思っています。
(「文聞分」主宰・高田浩史)