岐阜県安八町の安八温泉と、瑞穂市のJR穂積駅前を結んでいる名阪近鉄バスの安八穂積線が、9月30日限りで運行を終えます。2018年4月に運行を始めた新しい路線。朝夕は通学の高校生や通勤客の利用が見られました。なぜ運行を終えることになったのでしょうか。路線の様子を紹介しながら、背景を探ります。
◆どんな路線?
安八穂積線は、全長12・6キロの路線。2024年9月現在、平日11往復、土曜日と日祝日は8往復を運行しています。路線開設までは公共交通の空白地帯となっていた住宅地を結ぶように、南北を結ぶ路線を設定しました。
穂積駅は、JR東海道線の駅。名古屋駅まで30分ほどで行くことができます。安八温泉は、安八町直営の保養施設。
大垣桜高校(大垣市墨俣町)の真横にも停留所を設け、高校生が利用できるようにしていました。また、穂積駅で乗り換える瑞穂市内の通勤需要もありました。
一方、日中は空きが目立つのも事実。路線開設当初は、安八温泉までの利用を促す取り組みが行われていました。ところが、新型コロナ禍で、これらの取り組みは足踏みせざるを得なくなりました。
スマートフォンで買うことができるオンラインチケットや、バスの位置を確認できるバスロケーションシステムの導入など、路線バスの利用促進に向けた事業者側の取り組みも行われていました。
◆路線をたどる
まもなく6年半という短い歴史を閉じようとしている安八穂積線。路線をたどります。
穂積駅前は、岐阜バスと停留所を共用しています。平日朝8時ちょうど発の安八温泉行に乗り込みます。車内には、高校生の姿が。穂積駅前の通りを南に進みます。
穂積郵便局は、瑞穂市のコミュニティーバス・みずほバスと停留所を共用。この先で右折し、桜並木がある通りへ。この道は、かつての輪中の堤防の名残です。桜並木の途中にある停留所が瑞穂市役所・ココロかさなるCCNセンター前。この先で左折し、県道23号・通称「本巣縦貫道」を南下。渋滞する国道21号を越えると穂積中原。続いて右折して朝日大学北。
このあたりからは、国道21号バイパスの南側に広がる、瑞穂市内の比較的新しい住宅密集地を走ります。柳一色公園、野田新田、野白新田北、野白新田、野白新田南と進みます。名前の通り、かつては水田が広がっていた地帯。
再び県道へ。平成の中ごろに開通した、比較的新しい道です。犀川を渡ると、大垣市墨俣町との境。プラント6口は、広い河川敷だったところを活用してできた商業施設の最寄りです。
このあたりから道が混雑してきます。墨俣北で、すっかり動かなくなりました。この先で交差する県道、国道21号の旧道が渋滞していて、先に進めない車が続いている状態。高校生は、大半が降りました。歩いたほうが早いということなのでしょう。
まわりには、自転車通学の生徒の姿が目立ちます。自転車は、交通事故のリスクが伴います。
混雑の先頭だった交差点を越え、大垣桜高校。ここからの乗客は、自分1人となりました。
上宿、下宿と、進み、再び西へ進みます。集落と集落の間には水田地帯が広がります。
安八町に入り、再び南へ進路を変え、西蚊塚、五和野、板屋島、北今ケ渕と、集落の中の道を進みます。
安八町役場の先で、大垣市と羽島市を結ぶ県道や東海道新幹線と交差。またまた西に向かい、安八大野、城、あすわ苑西と続きます。最後に少し北上すると、終点の安八温泉 。ダイヤ上は8時35分に着きます。
さて、温泉に、とも思ったのですが、人の気配がありません。営業は午後0時半から。残念。
◆仕分け対象に
安八穂積線は、国と県、沿線市町からの地域間幹線系統確保維持費補助金を受けて運行する路線の一つです。
瑞穂市が発行する広報誌の2024年9月号に、市の2023年度の「事業仕分け」の結果が出ています。安八穂積線の運行負担金は「仕分け」の対象となり、事業廃止、つまり補助金を出さないとの結論が出されました。
広報誌には、路線廃止は「事業者からの申し出により」と記されています。市の事業仕分けの結果で「事業廃止」と伝えているのに、「事業者からの申し出」が出てくるのは、事情が分かっていないと、すんなり読み込むことができません。
事業仕分けを行ったのは行政改革推進委員会。市民や有識者の代表により構成されていました。昨年11月に行った委員会では、安八穂積線の運行負担金を含む三つの事業が審議されました。
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