「古窯」を模した窯を手作りし、白天目の再現に挑んだ青山双溪さん=多治見市虎渓山町
手作りの「古窯」から取り出されたばかりの白天目茶わん

 多治見市無形文化財保持者の陶芸家青山双溪さん(73)=岐阜県多治見市小名田町=が、国重要文化財に指定されている室町時代の茶わん「白天目」を同時代の薪(まき)窯を模した自作の“古窯(こよう)”で再現することに成功した。白天目を長年の研究で復活させた青山さんだが、当時の焼き方にこだわり、約2年かけて窯を手作りした。室町期に近い手法での再現に挑んだ青山さんは、完成品の色合いや灰釉(はいぐすり)の表情から「多治見で白天目が焼かれていたと確信できた」と語る。

 白天目の作り方や具体的な生産地は特定されていないが、同市の遺跡から似た破片が見つかっている。

 青山さんは地元で焼かれていたことを確かめようと2014年、クヌギの木灰など昔からあった身近な素材で灰釉を作り、地元・小名田の土と昔ながらのろくろ方式を用いて、徳川美術館(名古屋市)が所有する「大名物(おおめいぶつ)」とうり二つの茶わんを再現することに成功。実物の持ち主である同美術館から完成度の高さを認められ、作品は昨年、同美術館に収蔵された。

 この作品は、現代のガス窯を使って再現したが「次はもっと室町期に近い手法で。時間がかかる薪の穴窯で焼くと灰釉がどう変化し、どういう表情をするのか」。実証するために20年夏、窯作りに着手。自宅近くの多治見市虎渓山町の山の斜面を自ら造成し、もみ殻を混ぜた「熱効率が高い粘土質の土」を敷き詰めた。

 窯の構造用レンガも手作り。1500年代の市内の遺跡「尼ケ根古窯跡」の規模などを参考に、ほぼ一人で、長さ7メートル、幅は焼成室の床部分で約1・6メートル、斜面の最高所に高さ約3・3メートルの煙突を備えた「半地下式窯」を完成させた。「室町末期頃はこうだったのではという自分なりの推測を形にしつつ、熱が巡るよう分炎柱(ぶんえんちゅう)の配置などは多少アレンジした」という。

 今月18日夜、白天目50点を含む陶器約200点を詰め、ついに火入れ。21日夜まで丸3日かけて焼成した。27日に窯の中をのぞいて作品をいくつか確認すると、白みを帯びた艶やかな茶わんがお目見えした。

 火力が安定しない薪窯のため「ガス窯で焼くより表面が柔らかい表情を見せている。古物ならではの雰囲気に近づいた」と感慨深げに眺めた青山さん。「灰釉による模様などが大名物と同じ状態。今後、専門家らとともに検証したい。この実証が小名田で生産されたことの裏付けの一歩になれば」と話した。

 【白天目】 白みを帯びて膨らみを持つ茶わんで、16世紀に瀬戸美濃地方で焼かれたとされる。室町時代の茶人武野紹鴎(たけの・じょうおう)が所持し「大名物」として珍重された一つを、名古屋市の徳川美術館が所蔵している。1995年に多治見市の小名田窯下古窯跡群から白天目に似た陶片が出土し、生産窯である可能性が出ている。