優秀表彰を受けた笹野博司調教師(左)と渡辺竜也騎手の師弟コンビ

 雨天での表彰式となったが、気分は晴れやか。笠松競馬の2023年「騎手等成績優秀者表彰」が行われ、笹野博司調教師と渡辺竜也騎手の師弟コンビら厩舎関係者4人と、重賞勝ちなどの競走馬2頭の活躍や貢献がたたえられた。

 地方競馬全国協会表彰では、NARグランプリ2023の「ベストフェアプレイ賞」に輝いた渡辺騎手。笠松競馬の年間最多勝記録を2年連続で塗り替えるなど、新たなチャレンジを続けている。次のターゲットとしては、勝率が最も高いジョッキーを表彰するNARの「最優秀勝率騎手賞」も目指してはどうか。2009年に新設された賞で、東海地区(笠松、名古屋)の受賞者はまだいない。

 ■「今や地方競馬を代表するジョッキー」

  笠松競馬の「優秀騎手」は、デビューして7年目の渡辺騎手が白星を量産し、2年連続で受賞した。自己記録を更新する笠松歴代最多の年間183勝を挙げ、2度目の騎手リーディングも獲得した。勝率は31.07%。

 全国リーディングでは191勝で8位に躍進。重賞勝ちは名古屋の4歳馬メルトに騎乗し、名古屋記念を制覇。ネクストスター笠松(ワラシベチョウジャ)で圧勝。年明けにはニジイロハーピー(名古屋)で兵庫クイーンセレクションを勝ち、重賞9勝目。グリーンチャンネルのテレビ番組・アタック地方競馬では「けがから復帰即重賞V」の渡辺騎手について、豪快な騎乗で「今や地方競馬を代表するジョッキーですから、頑張ってほしい」(競馬評論家・古谷剛彦さん)という、うれしいコメントもあった。

ネクストスター笠松を制覇したワラシベチョウジャと渡辺竜也騎手

 ■1開催で23勝の固め打ち、驚異の勝率44%

 昨年の渡辺騎手は1日4勝、5勝の固め打ちが多く、特に8~9月には1開催(6日間)で23勝(勝率44%)という驚異的な数字もマークした。今年は、新たなモチベーションとして「最優秀勝率騎手賞」の個人タイトルも視野に入ってくる。NAR騎手賞3部門のうち「勝利回数」と「賞金収得」では騎乗するレース数が多い南関東、兵庫、そして笠松遠征も目立つ名古屋の騎手たちが有利。それでも「勝率」なら騎乗数に関係なく勝ちまくれば、東海初となるタイトルを引き寄せることができる。

 ■赤岡騎手、吉村騎手に続いて全国3位

 昨年の勝率争いは赤岡修次騎手が38.5%というハイアベレージでトップ。吉村智洋騎手が27%で2位。渡辺騎手の勝率は名古屋など遠征も含め26.5%で3位だった。前年より6.5%もアップしており、今年は、復帰後13勝で勝率は30.2%と右肩上がり。赤岡騎手、吉村騎手そして吉原寬人騎手ら全国区で活躍する名手たちの高い壁にチャレンジしていきたい。地元・笠松にどっしりと根を下ろして白星を量産する渡辺騎手。名古屋、金沢、園田の遠征先でも好騎乗が多く「平場でも重賞でも、乗せてもらえるレースは全部勝ちたい」という言葉通り、マイペースで突き進んでほしい。

「高い目標を持って頑張りたい」と闘志を燃やす渡辺竜也騎手

 NARグランプリ表彰は、騎手にとって最高の栄誉だ。「最優秀勝率騎手賞」のタイトルは、東海勢では「通算5000勝達成」が近い岡部誠騎手でもまだ受賞していないが、今年も赤岡騎手を中心に3割台でのハイレベルの戦いになりそうだ。一昨年「川原正一騎手の年間最多勝記録更新のチャンス」であることを伝えると、それに応えてくれた渡辺騎手。最優秀勝率のビッグタイトルもいつかきっとゲットしてくれるとみている。

 渡辺騎手は昨年の「ベストフェアプレイ賞」に輝き、2月22日には表彰式(東京)も控えているが、名古屋開催(2日2R)では不運な「騎手処分」を受けた。「第3コーナーにおいて外側に斜行し他馬の進路に影響を与えた」として2日間(笠松)の騎乗停止処分となったのだ。レース映像を見る限りでは問題ないようにもみられるが、厳しい裁決となった。これで渡辺騎手の2年連続ベストフェアプレイ賞受賞の可能性はなくなった。それだけに、気持ちを切り替えて新たな目標として「最優秀勝率騎手賞」のタイトル奪取を目指してほしい。

 ■渡辺騎手「高い目標を持って頑張りたい」

 表彰式で渡辺騎手は「先生に続くことができてうれしいです」と、この日もきっちり4勝。落馬事故による負傷療養のため達成できなかった「200勝突破」に向けても意欲。「けが明けから、ゆっくり乗り始めていますが、高い目標を持って頑張りたい」と秘めた闘志をたぎらせた。騎乗数はまだセーブ気味だが、ファンには「このようなすてきな賞を受賞できて、自分のモチベーションにもつなげて頑張りたい。応援よろしくお願いします」と呼び掛けた。

「勝ち星を重ねていきたい」と意欲を見せる笹野博司調教師

 ■笹野調教師「勝ち星を重ねていきたい」

 「優秀調教師」には、自身の笠松歴代最多勝記録を更新して173勝を挙げた笹野博司調教師が選出され、栄誉を受けた。受賞は5回目で勝率21.49% 。笠松最多となる8年連続の調教師リーディングの快挙も達成。全国リーディングは4位。昨年10月にはマルメラーダで地方通算1300勝も達成。管理する愛馬ワラシベチョウジャで重賞・ネクストスター笠松、準重賞は秋風ジュニア、ジュニアクラウンを制覇した。

 表彰式で笹野調教師は「うれしいですね。毎年毎年ですが、勝ち星を重ねていきたい。渡辺君も復帰して、また昨年のような活躍を見せてくれれば。一緒に頑張っていきます」と、全国リーディング(一昨年2位)や「最優秀勝率調教師賞」も大きな目標にして、師弟でさらなる飛躍へ意欲を示した。

 優秀厩務員には2人。 田口輝彦厩舎所属の奥謙二厩務員、栗本陽一厩舎所属の伊藤隆浩厩務員が受賞。競走馬育成に尽力され、長年の貢献がたたえられた。

3歳最優秀馬ワラシベチョウジャの馬主・杉浦和也さん(右)と4歳以上最優秀馬ストームドッグの森山英雄調教師

 ■2歳最優秀馬にワラシベチョウジャ、4歳以上最優秀馬にストームドッグ

 競走馬では「2歳最優秀馬」にワラシベチョウジャ(牝3歳、笹野博司厩舎)、「4歳以上最優秀馬」にストームドッグ(セン馬7歳、森山英雄厩舎)が選出され、表彰を受けた。3歳最優秀馬は該当馬なし。

 1年目のワラシベチョウジャは6戦5勝。渡辺騎手の騎乗で1着賞金1000万円の新設重賞・ネクストスター笠松を好位から差し切りV。準重賞の秋風ジュニア、ジュニアクラウンでも優勝を飾った。

東海ゴールドカップを制覇したストームドッグと関係者

 ストームドッグは23年は18戦4勝とフルに働いた。船橋から4月に笠松移籍。大みそかの名物レース・東海ゴールドカップを向山牧騎手の好騎乗で制覇。笠松所属馬の地元交流重賞連敗記録を「25」でストップさせた。飛山濃水杯、サマーカップでは3着。昨年の笠松競馬ベストレースといえる東海ゴールドカップ。ナリタブレードとの残り600メートルからのマッチレースは見応えがあった。
 
 ワラシベチョウジャの馬主・杉浦和也さん、ストームドッグの馬主・山辺浩さん(代理・森山調教師)がウイナーズサークルで表彰状や記念品を受け「優秀な成績を収められ、その活躍が顕著でした」と栄誉がたたえられた。

 ■5日間の開催、競走馬足りず5~8頭立て目立つ

 笠松競馬の2月前半戦は月~金曜の5日間開催。例年、冬場は金沢、岩手などが開催休止となり、笠松の馬券販売が伸びるシーズン。所属馬数は一連の不祥事前の水準に戻りつつあり、510頭ほどになった。

 ただ、かつて真冬の風物詩として行われていた、金沢から競走馬を滞在型で30頭ほど受け入れる「冬期交流」は凍結状態となっている。2月開催はやはり競走馬が足りず、5~8頭立ての少頭数レースが目立った。

 単純に10頭立てを10レースまで組もうとすると5日間に500頭が必要になるが、けがで療養中の馬もいて、ゲートインできる馬の確保は大きな課題になっている。

 そんな笠松競馬だが、いかに競走馬を多く預けてもらうか。中央やレベルの高い地区で勝てなかった馬たちの受け皿にもなっている笠松。さらなるレース賞金・手当をアップさせて、より多くの馬を預けてもらえれば、売上金の増加にもつながる。来年度の開催日程によると冬場の5日間開催はなくなり、4日間になる。10頭以上でフルゲート12頭立てが増えれば、高配当も期待できてファンの購買意欲もアップするのでは。

馬券販売が好調の笠松競馬。場内飲食店も「おいしい」と人気を集めている

 ■馬券販売好調、過去最高額の445億円超えへ

 その馬券販売は好調をキープしている。笠松2月前半戦は船橋、高知がナイターで、昼間の競合地区は姫路のみだったこともあり、5日間で約26億2600万円、1日平均では5億2500万円に伸びた。

 NAR発表の地方競馬開催成績によると、笠松競馬の昨年4~12月(2日減の69日間)の総売得金は、約323億8400万円で前年比4.1%増。1日平均では4億6900万円で前年比7.1%増。伸び率は金沢に次いで全国2位となった。

 今年に入って1月~2月前半戦も1日平均4億6700万円をキープ。2月後半戦~3月の残り14日間も、この調子で馬券が売れれば、2023年度は450億円ラインに到達。1980年度の過去最高額445億円超えの可能性が十分にある。1月には降雪の影響でレースが1日休止になったが、今後不祥事などもなく無事にレースが開催されれば、記録を更新しそうな勢いだ。

 笠松競馬場内窓口での手売りで収益が大きかった昭和の時代と、手数料が高いインターネット販売の現代とは単純に比較できないが、2012年度には過去最低の106億7000万円まで落ち込んでいた馬券販売額。それが4倍増になって記録が更新されれば喜ばしいことだ。

 好調な馬券販売に支えられて、場内飲食店も人気を集めており「昔ながらの味でおいしい」と全国から訪れる競馬ファンに評判だ。一時は空き店舗が増えていたが、活気を取り戻している。オグリキャップの聖地巡礼で、若いファンも増えている。

高知・全日本新人王争覇戦で、愛知の細川智史騎手(中央)が総合Vを飾った(NAR提供)

 ■細川騎手が全日本新人王争覇戦V、続け笠松の若手

 地方競馬とJRAの若手騎手によって争われた「第38回全日本新人王争覇戦」(1月23日・高知)に笠松勢の出場はなかったが、細川智史騎手(愛知)が総合Vを果たし「新人王」に輝いた。昨年は笠松でも13勝を挙げており、深沢杏花騎手とは同期である。

 第1戦、細川騎手は笠松でも活躍したマジックバローズに騎乗し、豪快に追い込んで1着ゴール。第2戦は8着だったが、総合58ポイントを獲得し、1ポイント差で古岡勇樹騎手(川崎)の追撃をかわした。3位は佐々木大輔騎手(JRA)。

 塚本征吾騎手(愛知)は5着、4着で総合5位。田口貫太騎手(JRA)は3着、7着で総合6位だった。これまで笠松勢の優勝はまだなく、1987年の北浦充騎手、2005年の山田順一騎手の総合2位が最高。

期間限定騎乗で6勝を挙げた平瀬城久騎手(中央)のお別れセレモニー(笠松競馬提供)

 全日本新人王争覇戦への出場は、騎手免許取得5年以内の若手騎手が各主催者の推薦を受け、高知県競馬組合により成績などを参考に選考される。笠松勢は昨年、東川慎騎手が7位。今年は深澤杏花騎手と長江慶悟騎手が残念ながら補欠扱いになった。西日本では笠松だけ出場がなく、地元ファンをがっかりさせた。一連の不祥事やコロナ禍もあって、2人ともまだ出場したことがない。松本一心騎手は2年目を迎え、4月には新人騎手も加入する。若手同士で競い合って好成績を残し、来年はぜひ高知へ行って存在感を示し、おいしい魚なども食べてきてほしい。

 ■金沢の平瀬騎手活躍、2開催で6勝

 1月に期間限定騎乗で活躍(2開催で6勝)した平瀬城久騎手(金沢)はお別れセレモニーで、笠松競馬の魅力について「平均年齢が若いことが一番。その若さに僕も力をもらっていますし、負けないように頑張っていきたい」と若手騎手たちの活躍に刺激を受けた様子。

 また「(能登半島地震で)今、金沢は大変なことになっています。(被災地支援レース実施で)義援金がたくさん集まったようで、本当に感謝しています。金沢競馬場にも遊びに来てほしい」とファンに呼び掛けた。同じく金沢の服部大地騎手と佐賀の吉本隆記騎手も次の開催までで、ナイスファイトを期待したい。

23日に新刊「オグリの里2・新風編」の出版会が笠松競馬場内で開かれ、協賛レースも行われる

 ■23日に「オグリの里2・新風編」出版

 2月23日(祝)の笠松競馬開催日には「オグリの里第2巻・新風編」(岐阜新聞社発行)を発売。場内オグリキャップ像横で新刊の出版会を開くほか、第6レースでは協賛レースも実施される。

 新風編の表紙はアンカツさん騎乗のライデンリーダーで、笠松競馬場での引退式ラストラン。裏表紙には笠松で初勝利を飾ったオマタセシマシタと渡辺騎手のゴールシーン。

 昨年の「ウマ娘シンデレラグレイ賞」で聖地巡礼に訪れたファンの熱狂ぶりを巻頭で特集。デビュー1年目、ヤングジョッキーズシリーズのファイナリストとなった渡辺騎手の奮闘ぶり。名伯楽・荒川友司調教師と吹き荒れたライデン旋風など、競馬場に通い続けて体感してきた各時代の「新しい風」をお伝え。NARグランプリでは年度代表馬に輝いたライデンリーダーやラブミーチャンなど笠松関係の人馬の表彰一覧や特集記事も掲載した。

 オグリキャップがいた頃は日曜~金曜の6日間開催で、冬場も朝から現場で寒さに震えながら、全レースの馬券を買っていた。定位置だった中央スタンド上部に陣取り、温かいお茶の無料サービスもよく利用していたことが懐かしく思い出される。

 新刊・新風編はオグリキャップの天皇賞・秋観戦記(1989年)などオグリ関連も満載。A5版206ページで、カラー写真を増やして1冊1500円(税込み)。
 
 問い合わせは岐阜新聞読者事業局出版室、電話058(264)1620=月~金(祝日除く)9~17時。笠松競馬場内・丸金食堂、ふらっと笠松(名鉄笠松駅)、ホースファクトリー、小栗孝一商店、酒の浪漫亭、愛馬会軽トラ市などでも販売されます。

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