岐阜県高山市久々野町の飛騨川沿いの字(あざ)です。川の波際に住居を構えたことを由来とする、海辺のような地名「渚(なぎさ)」の対岸にあります。

 「片籠」は、春にかれんな花を咲かせるカタクリが由来です。カタクリの古名は堅香子(かたかご)。反り返った花弁が傾いた籠(かご)のようであるとして、片籠とも書かれたそうです。明治時代の地誌『斐太後風土記』には「渚村の向かいにある堅香子村は、村名に負けない堅香子がある」といったことが記されています。

 植物や樹木が由来とみられる地名は非常に多くありますが、現在も植物が残っている例は希少です。住民の努力もあり、片籠地区では4月中旬から5月、日当たりのいい斜面に今でもカタクリが花を咲かせます。『久々野町史』によると、飛騨には他にもカタクリの群生地はありますが、地名とゆかりがあるのは「片籠」だけとのことです。

【答え】かたかご