放馬対策で、薬師寺厩舎に集約される円城寺厩舎のゲート付近

 安全対策「赤信号点滅」解消へようやく本腰。放馬による死亡事故から約10年、続発する笠松競馬での競走馬暴走で、抜本的対策となる「厩舎集約」を当欄では訴えてきたが、岐阜県地方競馬組合による整備計画がようやくまとまった。

 笠松競馬ではここ10年間、競馬場内をはじめ、馬道や厩舎内からの放馬が相次いでいたが、安全確保に向けた厩舎集約計画が具体化。円城寺厩舎を、競馬場に隣接する薬師寺厩舎に集約するもので「3年後完了」を目指してスタートラインに立った。

馬が脱走した笠松競馬場の装鞍所東門。調教中の放馬で死亡事故を引き起こした=2013年10月撮影

 2013年10月には、調教中の競走馬が競馬場から脱走。堤防道路上で軽乗用車と衝突し、運転手を死亡させる重大事故を引き起こした。昨年11月には、厩舎に向かう専用馬道内で馬が暴走し脱走。厩務員2人が腕を骨折するなど重軽傷を負った。円城寺厩舎周辺での放馬は昨年5件も発生した。

 現場は学校や商業施設もある住宅地に近いことから、住民が事故に巻き込まれる恐れがあり、不安の声も上がっている。再び放馬で重大事故を引き起こしたら、農水省やNAR(地方競馬全国協会)の強い指導もあって、競馬場の存続自体が厳しくなる状況にある。

 競馬組合では、もちろん懸命になって再発防止策の徹底に努めてきたが、堤防道路など一般道を横切ったりするため、厩舎エリアからの放馬は車などとの衝突事故に直結するリスクが高い。「円城寺→薬師寺」への厩舎集約は存続にも関わる懸案事業とされてきた。 

 ■2015年にも厩舎集約計画は浮上していたが

 10年前の死亡事故発生後には、再発防止策を徹底。競馬場外では、馬が通る専用道と公道が交わる交差点に警備員を新たに配置。馬道では馬が脱走しないよう閉鎖するロープを設置した。その2年後には、円城寺厩舎を、薬師寺厩舎1カ所に集約する整備案が浮上。翌年度の予算案に整備費を計上し、早ければ2016年度にも整備に着手する計画であったが、これまで実現に至っていなかった。2015年12月20日付・岐阜新聞社会面トップで報じられた当時の記事を紹介する。

「交通事故防止で厩舎拡張 1カ所に集約推進」を伝える岐阜新聞の記事(2015年12月20日付社会面)

 

 ■「交通事故防止で厩舎拡張、1カ所に集約推進」

 笠松競馬(羽島郡笠松町)を運営する県地方競馬組合は、競馬場東側に隣接する薬師寺厩舎を拡張し、2カ所ある厩舎の集約を進める。約1.5キロ離れた円城寺厩舎は、競馬場と行き来するのに公道を横断しなければならず、過去に競走馬が逃げ出し、車と衝突する事故が起きていた。安全対策の一環として、来年度当初予算案に整備費を計上。組合議会に諮り、早ければ来年度にも整備に着手する。

  組合によると、競走馬は薬師寺厩舎で約200頭、円城寺厩舎で約300頭を管理している。薬師寺厩舎の周辺用地を借りるなどして施設を拡張し、可能な限り集約する。円城寺厩舎は縮小する。整備費は収益黒字分を積み立てた基金の一部を充てる方針。
  
 組合は2013年10月、競馬場から逃げた競走馬と衝突した軽乗用車の男性が死亡した事故を受けて、警備体制を強化した。その後、事故は起きていないが、過去には競走馬が路上で逃げ出し、車と衝突する事故が複数回発生しており、安全対策が長年の課題になっている。
  
 笠松競馬は近年、インターネット販売の開始などで馬券発売額が好調。15年度の実質単年度収支は3年連続の黒字となる見込みで、老朽化施設を整備する方針を固めている。


 

放馬防止の対策が強化された装鞍所エリア

 ■宙に浮いたまま、整備に着手できず

 厩舎集約が大きく取り上げられたこの記事を見て「安全確保に乗り出してくれる」と期待したが、その後、計画は宙に浮いたまま進まず。「組合議会で諮る前に記事になったため、一部で反発もあった」との声も聞こえてきて、計画は棚上げになって進展しなかった。

 現場では連日、厩舎と競馬場を往復。馬を引いて歩く厩務員や道路の安全確保に努める警備員らが緊張感を持って対応。放馬事故と隣り合わせの日々は続いているが、10年間、放馬による車などとの衝突事故が発生しなかったのは幸いだった。競馬組合による再発防止策や定期的に行う放馬対策訓練が一定の効果を示したといえる。

 ■薬師寺厩舎に馬房建屋26棟を建設

 今回まとまった放馬事故対策は、笠松競馬には厩舎が2カ所にあり、競馬場から約1.5キロ離れた円城寺厩舎を、競馬場の東側に隣接する薬師寺厩舎に集約するもの。環境整備基金を財源に、最短で2025年度末にも完了する。2月27日に開かれた笠松競馬放馬対策検討会で対策を確認した。

薬師寺厩舎前のゲート付近。円城寺厩舎の馬が引っ越し、1カ所に集約される

 集約工事では、薬師寺厩舎に馬房建屋26棟を建設する予定。厩舎再建に向けて、薬師寺厩舎で不足する土地を先行取得する。土地はそれほど増やさなくてもいいように、収容できる馬の頭数を1棟10頭から20頭に増やす設計にした。平屋建てで、左右対面式(真ん中に通路)のコンパクトな造りにする予定。本年度はモデル厩舎2棟の建設が計画されていたが1棟(20馬房)だけに。現在厩舎が建っていない所に新設し、8月をめどに完成予定。

 ■用地取得交渉、ネックにも

 建設用地は一部不足しており、薬師寺厩舎周辺の土地を購入する必要があり、今後は用地取得交渉が課題にもなりそうだ。

 笠松は競馬場用地の大半を借地が占める特殊事情。地権者による土地明け渡し訴訟を経て、借地料は馬券販売額に連動する形で設定されたが、2013年以降の黒字化とともに巨額に膨らんだ。17年度には借地料が4億円を超え、経営を圧迫。「上限1坪5000円」と定めたが、毎年3億円以上を支払っている計算になる。

 薬師寺厩舎拡張の用地交渉がすんなりと進めばいいが、競馬組合も土地問題ではこれまで苦労してきただけに、時間がかかり、厩舎集約を進める上でネックになる可能性もある。また「円城寺厩舎では空いている馬房も多い。薬師寺厩舎の馬をそっくり、いったん円城寺に移して新厩舎の建設を急いだらどうか」といった厩舎関係者の声もある。                   

 ■競馬場存続の大前提である安全確保へ迅速に      

笠松競馬場のコースに隣接している薬師寺厩舎

 薬師寺厩舎を拡張するための土地購入費は、組合の補正予算に計上。新年度予算にも一部の建設費用を計上し、予定地の土地交渉も同時に進める。厩舎集約が完了するまでは、一般道と交わる馬道を使って円城寺厩舎から競馬場への往復が続けられる。このため、厩舎の出入り口の柵を引き戸にしたり、馬道15カ所の柵も片開き戸にするなど、暴走馬に突破されないよう構造を強化。登下校時間帯は馬の移動を停止し、レース開催時は馬運車で輸送する。
  
 笠松競馬の所属馬は491頭(3月2日現在)。日々変動はあるが、円城寺厩舎には270頭ほどが在籍。かつては笠松にアラブ系の馬がいた時代もあり、今では空いている厩舎や民間への貸厩舎も多い。薬師寺厩舎への集約化では、収容可能頭数を520頭に増やす計画。

 競走馬は物音や障害物などに敏感で、競馬場をはじめ馬道、厩舎エリア内など屋外にいる限りは常に暴走する危険性がある。馬券不正購入など一連の不祥事発覚後、競馬組合管理者は笠松町長から副知事にバトンタッチ。県が主導権を握って、厩舎集約計画は着実に進められるとみられる。完了は「25年度目標」ということだが、用地交渉も含めてこれ以上停滞させることなく、競馬場存続の大前提である安全確保のため、厩舎一本化を迅速に進めていただきたい。
  

レディスジョッキーズシリーズ総合優勝を飾った関本玲花騎手(中央)、2位の神尾香澄騎手(左)、3位の小林捺花騎手=川崎競馬場(NAR提供)

 ■レディスジョッキーズ、関本玲花騎手が総合V

 地方競馬の女性騎手が熱く火花を散らす「レディスジョッキーズシリーズ2022」は2日、川崎で2戦が行われ、小林捺花騎手(川崎)と宮下瞳騎手(愛知)がともに逃げ切って優勝。その結果、盛岡第2戦を制し、川崎でも3着があった関本玲花騎手(岩手)が総合Ⅴを飾った。関本騎手は1~2月に笠松競馬での期間限定騎乗(3開催)で2勝を挙げ、水沢に戻っていた。総合2位は神尾香澄騎手(川崎)、3位は小林捺花騎手。1、2位はポイント数は同じだったが、最終戦で上位だった関本騎手が女王の座に輝いた。
 
 深沢杏花騎手(笠松)は川崎1戦目、2番手をキープして上位を狙ったが、最後は6着。2戦目は中団から追い上げたが5着。総合では6位だった。盛岡戦を欠場した木之前葵騎手(愛知)と浜尚美騎手(高知)は川崎でそれぞれ2着があり、見せ場十分。復帰でファンを喜ばせた。

 ■田口貫太騎手は4日デビュー、2日間で9頭に騎乗

 中央競馬では、田口貫太騎手(19)=栗東・大橋勇樹厩舎=が4日にデビュー戦を迎える。土日の2日間で計9頭に騎乗する。両親が元笠松競馬ジョッキーで、岐阜県岐南町出身。日本ダービーを見て感動したことから騎手を志した田口騎手。デビュー戦は阪神1R(3歳未勝利、ダート1400メートル)で、自厩舎のクリノクリスタル(牝3歳)に騎乗。初日は6鞍で、12Rでは2勝馬・タイセイブリリオに騎乗する。

 田口騎手はJRA競馬学校卒業式で「これからはプロの騎手として、皆さんに愛され、応援されるような騎手になりたいです」と意気込みを語っていた。騎乗馬の多さは騎手にとって大切なことで、まずは初勝利を目指して思い切った騎乗を見せてほしい。今週から6人の新人騎手がデビューする。

室内に飾られたひな人形

 ■有馬記念でビギナーズラック、ひな人形ゲット

 のどかな木曽川河畔にある笠松競馬場にも春の足音がひたひたと。ひな祭りの季節で、わが家の和室にもコンパクトなひな人形が飾られているが、競馬の国民的レースと関係があり、ビギナーズラックの典型でもあったので、ちょっと紹介してみたい。

 伝説となったあの「オグリコール」から2年後の有馬記念は大波乱となった。15番人気・メジロパーマーが逃げ切り、5番人気・レガシーワールドがハナ差2着に追い込んだレース。1番人気・トウカイテイオーは11着に敗れた。

 大番狂わせとなったレースの結果は高配当となり、発売2年目を迎えた馬連が「3―6」で3万円超。枠連「2―3」はトウカイテイオーが同枠にいて安くはなったが、それでも3300円。この配当が生涯初めて馬券を買った妻のビギナーズラックとなったのだ。仕事に協力してもらったお礼の千円札2枚で、オグリ以来の競馬ブームもあって珍しく馬券を購入。当時32歳だったことから、ひらめきで「2―3を」と1点勝負。これが大当たりしてゲットしたお金で、ひな人形を購入したのだった。その後は馬券を買っていないようなので、生涯回収率は何と「3300%」。年間トータルでは回収率70%前後の人が多い競馬ファンからすれば驚異的な数字だ。どうやら「年一」でも競馬場などで大当たりしたら、さっと帰ることが賢明のようだ。3着に4番人気・ナイネイチャで、3連単があったら軽く100万円超えだっただろう。

笠松競馬ファンにプレゼントされる「オグリの里・聖地編」

 ■金曜日ライブで「オグリの里・聖地編」プレゼント

 次回の笠松競馬・弥生シリーズ(3月6~10日)で注目のオマタセシマシタは、8日3R「春三日月賞」に出走登録がある。この日なら斉藤慎二オーナーも来場できるそうだが、陣営では愛馬の状態と相手関係を考えた上で、出走可否の決断となる。正式発表はレースの3日前になる。8日はオマタセシマシタに騎乗する渡辺竜也騎手のバースデーでもあり、出走となれば多くのファンでにぎわいそうだ。

 10日の笠松競馬・金曜日ライブの配信では、番組視聴者プレゼントとして「オグリの里・聖地編」5冊を抽選で提供させていただきます。今回は地方競馬実況アナウンサー・大川充夫さん、「dela model」佐々木美乃里さん、「dela」今田希さん、専門紙トラックマン・竹中嘉康さんの出演で、楽しいトークと予想で笠松競馬最終日を盛り上げ。春の陽気にも誘われて、身も心も懐もポカポカにしていただけるかも。

 ※「オグリの里・聖地編」はA5判カラー、200ページ、1300円。問い合わせは岐阜新聞情報センター出版室、電話058(264)1620=月~金(祝日除く)9~17時。「岐阜新聞の本」Webで詳しい購入方法を掲載。笠松競馬場内の「丸金食堂」、本巣郡北方町・寺島書店(JRA・寺島良調教師の実家)で発売中。名鉄笠松駅構内の「ふらっと笠松」、岐阜市内の大手書店、アマゾン公式サイトでも順次購入可能になる。