1着ゴールを決めて笠松で2勝目を飾ったアオラキ(右)と大畑雅章騎手。ダブルダブルの追撃をかわした

 「2勝目おめでとう」とファンも歓喜。名古屋の白毛馬アオラキ(牡4歳、今津勝之厩舎)が笠松競馬場での得意のマイルで、後方から大まくりを決めて2連勝を飾った。地方競馬のアイドルホースの競演第2ラウンドは、まばゆい白馬が真っ先にゴールを駆け抜けた。笠松のハルオーブ(牡4歳、後藤佑耶厩舎)もまずまずの走りを見せて5着に踏ん張った。

 「青春(アオハル)」の熱いドラマに、多くの推し馬ファンたちがスタンド前に駆け付けて声援を送った。4歳同期のJRA未勝利馬による再戦。第1ラウンドは重馬場でハルオーブ3着、アオラキ5着だった。第2ラウンドを終えて1勝1敗となった。

本馬場に入場し、戦闘モードに入るアオラキと大畑雅章騎手

 ■一時はアオラキとハルオーブが1、2番人気

 5月24日・笠松9RのA4組(下剋上特別、1600メートル)。注目された2頭の単勝オッズ。一時はアオラキが1番人気、ハルオーブが2番人気で「100円ずつの応援馬券」を中心に売れていた。最終的にはアオラキが3番人気、ハルオーブは5番人気で逃げ馬不在の混戦レースとなった。

 初夏を感じさせる青空が広がり、岐阜市では31.5度を観測。今年初の真夏日で、7月下旬並みの暑さとなった。アオラキには主戦の大畑雅章騎手が騎乗。3走前に笠松マイルを勝ったレースと同じ7番枠を引き当て「好走モード」に突入した。

 今回は8頭立て。馬場も乾いて、ホライゾネットなしでも砂をあまりかぶらず、後方外めから押し上げる作戦。陣営では「(11着に敗れた)名古屋の馬場は合わないし、1500メートルでは短い印象もあり、100メートルでも長い笠松へ。仕上がりも良い」と前走5着から中3週で参戦した。 

パドックを周回するハルオーブ(手前)とアオラキ

 ■ハルオーブに宮下瞳騎手が騎乗

 ハルオーブには塚本征吾騎手が前走騎乗したが、今回は宮下瞳騎手が手綱を握った。陣営は「調教の反応も良くなってきたし前走より雰囲気はいい。ひとたたきの効果に期待したい」と初馬場でのスピード競馬の反動もなく、好調キープで臨んだ。
  
 パドックでは共に入れ込むことはなく、落ち着いた様子で周回を重ねた。3番・ハルオーブと7番・アオラキを一緒に撮影できるシーンもあり、カメラやスマホを手にした若者たちが胸をときめかせて熱い視線を送った。本馬場入場では、スタンド側のラチ沿いぎりぎりを歩いてくれた両頭。ファンとの距離がとても近い笠松競馬場ならではのファンサービス。それを理解してか、ともにゆっくりと進んで返し馬へと向かってくれた。

ラチ沿いを歩くアオラキ(7)と返し馬中のハルオーブ(3)。チラ見しながらバチバチとお互いを意識か

 ■返し馬ではバチバチ、お互いを意識か

 ファンも注目する役者・アオラキの「グネグネ芸」はパドックを出るまでやや控えめだったが、返し馬に入ったハルオーブと対面すると「顔をグニャリ」。コースの内と外で、ハルオーブも白毛馬が珍しいようでチラ見。バチバチとお互いを意識しているようなしぐさで、見守るファンを喜ばせた。2頭ともに軽やかな動きで好仕上がりをアピールした。

返し馬に入ってもファンの視線に応えて、ラチ沿いに顔を向けるアオラキ

 ハルオーブの近走は中団からのレースが目立つが、デビュー当初は2番手好位づけから2着に粘り込んだこともあった。笠松の1600メートル戦は、スタートして3~4コーナーのカーブへと向かい、内枠が有利とされる距離。3枠に入ったハルオーブにはスタートがうまい宮下騎手で、位置取りが注目された。

1周目のゴール前。バイコーンが先手を奪い、ハルオーブは4番手

 ■ハルオーブ、伸び切れなかったが掲示板は確保

 レースは1番人気のバイコーンがハナを切った。初戦でメドをつけたハルオーブもまずまずのダッシュを見せ、4番手を追走。3コーナーで3番手に押し上げたが、そこから伸び切れなかった。5着に終わったが、苦手とされていたダートコースでしかも良馬場。クラスは上がったが掲示板は確保し、次走以降につながる走りは見せてくれた。 

アオラキが1着でゴールイン。ハルオーブは5着

 ■アオラキ、ゴルシ譲りの豪快なフットワーク

 アオラキは最高のパフォーマンスを発揮した。いつものように出遅れ気味のスタートだったが、これも砂をかぶらないためか。前進気勢は素晴らしく向正面からロングスパート態勢。3コーナーから大畑雅章騎手のゴーサインに応えて、父ゴールドシップ譲りの豪快なフットワークで4コーナーを回ると一気に先頭に躍り出た。最後方にいたダブルダブルに詰め寄られたが、クビ差で押し切った。1分41秒6で初勝利よりも1秒5も速い好タイム。相性抜群の笠松マイルで2勝目を挙げ、JRA復帰条件まで「あと1勝」とした。

1着で装鞍所に戻ってきたアオラキと大畑雅章騎手。左はハルオーブ

 ■大畑雅章騎手「笠松では外差しで走りがいい」

 装鞍所エリアに戻ってきたアオラキは、陽光を浴びてキラキラと純白の馬体を輝かせ、厩舎スタッフの期待に応えた。大畑雅章騎手は「行く脚はないが、笠松では走りがいい。外差しが効くし、さらに上のクラスへ行っても、着ぐらいはいけそう」と。今回はホライゾネットを外して挑んだ。「やはり砂をかぶってモタモタもしたが、3コーナーからスパートしていい走りでした。内容は(完勝だった)初勝利の時の方が良かったですが」とのことだが、鮮やかに2勝目をエスコート。絶妙のタイミングで追い出し、後続の追撃もしのぎ好騎乗が光った。

 ネット越しのライブ映像などで観戦した全国のファンからは「豪快な走りでしたね。後方からのロングスパートで押し切る姿は血を感じさせる」「ゴルシ感がよく出ていた。砂をかぶらなければダートでもこなせ、意外な適応力を見せてくれている」などと頑張りをたたえる声が多く寄せられた。

ハルオーブは悔しかったのか5着の枠場には入リたがらず、宮下瞳騎手は下馬した

 ■宮下騎手「いい感じ、外に出せれば良かった」

 一方の宮下騎手は3~4コーナーでは見せ場をつくり、3番手に押し上げた。「いい感じでした。外に出せれば良かったが、内に行っちゃって」。スタートではハナ切りの期待もあったが「中途半端で、前へ行けませんでした」と残念そうだったが、平場から特別にクラスが上がって良馬場での5着なら、次走へ期待が持てる内容だった。2、3着が多い「善戦マン」として知られるハルオーブは、戻ってきても「5着」の枠場には入りたがらず、宮下騎手は手前で下馬。そこへ、勝ったアオラキが戻り、堂々と「1着」の枠場に入った。アイドルとしてのライバル関係がくっきりした瞬間のようでもあった。

1着の枠場に入ったアオラキと下馬する大畑雅章騎手

 ■オマタセシマシタも笠松で2勝

 ハルオーブの馬体重は前走よりやや絞って「マイナス3」の458キロ。負担重量は3キロ減だった。この日は生産牧場の藤沢亮輔さんの共有オーナー・村上卓史さんが来場。「オマタセシマシタも笠松でお世話になって、ここで2勝しましたが、まさか船橋でも勝てるとは思いませんでした。非力でしたが馬が晩成だったのかな」と笠松での活躍をステップに成長。「ハルオーブは前に行けるといいかなあと、(オマタセシマシタでも勝った)宮下瞳騎手の騎乗となりました。道営や園田では馬場が合わなかったんで、ここで何とかしたい」と期待を寄せていた。

 ■「良馬場でもそこそこやれました」

 北海道の藤沢オーナーは「宮下騎手の騎乗で斤量が軽い(2㌔減)のも見てみたくて乗っていただき、良馬場でもそこそこやれました。レース後の歩様などはいいそうです。次走は1回間隔を空けて、試行錯誤しながら成績を上げていければ」とのことで、ハルオーブの成長と笠松での初勝利を期待。次走は6月後半戦の清流カップシリーズか。

本馬場入りしたハルオーブと宮下瞳騎手

 ■「やっぱり笠松の方が合っています」

 ゴール前のスタンドでは女性ファンたちが笠松初戦に続いてハルオーブを応援。「やっぱり笠松の方が合っています。他でも良馬場の時は、前に進んでいかずに「2桁」でしたので。1600メートルは長かったようですね」とにこやか。中央で2着が6回もあるように、ダートでも笠松のような砂質で軽い馬場ならタイムも速くなり、好結果につなげられるかも。「大丈夫、戦える。使い過ぎないで、休み休みのローテでもいいので」と応援。タイミング次第では協賛レースや横断幕の掲示も目標に、ハルオーブへの熱い声援を続けていく頼もしい応援団だ。

 ネット上では「はるお君、掲示板確保できて良かったね。初勝利は近いぞ」「2桁着順が続いていた頃より明らかに良くなってきている。頑張ってほしい」といった声も寄せられた。

 ■「推し馬」はハルオーブ優勢

整列したジョッキーの騎乗を待つパドック内の競走馬

 元JRAのアイドルホース2頭。ともに地方競馬で3勝を挙げて、JRA復帰を目指しており、笠松で2勝のアオラキは「あと1勝」に迫った。

 アオラキとハルオーブのアイドルホース対決では、ネット上で「推し馬は○○だ」をファンに聞いてみた。ハルオーブを推す声が多かったが「はるお君もアオラキ君もどっちも応援します。元気で無事に完走してほしい」「デビューの頃から応援しており、両方(1着)同着で」といった声もあった。

 ■アオラキ、連闘策で名古屋特別戦へ

 アオラキは元気いっぱい。中5日の連闘策で、5月30日の名古屋10R・ネプチューン賞A特別、2100メートル戦に出走を予定している。9頭立ての3枠。地元での走りは良くなかったし相手関係は厳しくなるが、距離延長を生かしたい。もし勝っちゃったらJRA復帰の扉が開かれることになるが、ハルオーブとの3度目の競演での笠松ご来場もお待ちしています。


※「オグリの里2新風編」も好評発売中

 「1聖地編」に続く「2新風編」ではウマ娘ファンの熱狂ぶり、渡辺竜也騎手のヤングジョッキーズ・ファイナル進出、吹き荒れたライデン旋風など各時代の「新しい風」を追って、笠松競馬の歴史と魅力に迫った。オグリキャップの天皇賞・秋観戦記(1989年)などオグリ関連も満載。

 林秀行(ハヤヒデ)著、A5判カラー、206ページ、1500円。岐阜新聞社発行。笠松競馬場内・丸金食堂、ふらっと笠松(名鉄笠松駅)、ホース・ファクトリー、酒の浪漫亭、小栗孝一商店、愛馬会軽トラ市、岐阜市内・近郊の書店、岐阜新聞社出版室などで発売。

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