「お客さんとの距離が近く、迫力あるレースをどうぞ」。笠松競馬の未来に輝き、大きく羽ばたく若手ジョッキーたちが、暑さを吹っ飛ばし「頑張るぞ、オーッ」と気勢を上げた。
CCN(ケーブルテレビ)とのコラボ番組・岐阜新聞リポ「地元!(じもっと)」8月特集でのワンシーンだ。「オグリの里」が7月19日、笠松競馬場内で密着取材。地方競馬スターホースのハルオーブとアオラキの同日出走もあって盛り上がった。笠松競馬の「現在、過去、未来」を見つめながら、ジョッキーと競走馬の活躍ぶりや魅力に迫った。
■最終レース、若手がワンツースリー
笠松競馬所属の若手ジョッキーは現在6人。20代は渡辺竜也(24)、東川慎(23)、深沢杏花(22)、長江慶悟(24)の4人で、10代は松本一心(19)=負傷療養中=、明星晴大(17)の2人だ。
真夏の日差しが厳しさを増した撫子シリーズ3日目の最終レース直後。熱戦を繰り広げた笠松の若手5人と名古屋競馬に所属する2人が集まってくれた。このうち5人は最終12Rにも騎乗。笠松の若大将・渡辺竜也騎手が逃げ切り勝ち。浦和から名古屋で期間限定騎乗中の室陽一朗(むろ・ひいろう、22)騎手が2着。4月にデビューしたルーキーの明星晴大騎手は後方2番手から3着に追い込んだ。若手3人ががワンツースリーを決めた。
■東川慎騎手「格好いいところを見せつけたい」
装鞍所エリアには、レースでの熱いバトルから解放されたジョッキーたちが笑顔を見せていた。
最初は東川慎騎手に聞いた。
―見ての通り明るいキャラクター。ファンの間では「笠松の太陽」と呼ばれていますよ。
「そんな呼ばれ方しているんですか。メチャクチャうれしいです。初めて言われましたね」
―最近の調子はどうですか。結構勝っていますね。
「良くはありませんが、いい馬に乗せてもらっているから。でも、いい馬でも負けることも多いんで。自分の腕でカバーできるよう頑張りたいです」
―後藤正義厩舎の所属で、先生の地方通算1000勝達成セレモニーでもプラカードを持っていましたね。
「先生が達成できて本当にうれしいです。調教の時から乗っていた馬(ヒナアラレ)で、レースでも僕が乗って勝ちました(1000勝目)」
―笠松競馬場はどんな存在ですか。
「僕の格好いいところを見せつけられる場所です。皆さまに」
■長江慶悟騎手「若手増え、騎手同士も仲がいい」
続いて長江慶悟騎手。この日は8Rで騎乗を終えて、馬具の手入れをしたりしながら、待っていてくれた。プロ野球ロッテの佐々木朗希投手のそっくりさんで、笠松競馬秋まつりのトークショーやテレビにも出演。ユニホーム姿が似合う好青年だ。
―2回大けがをしており、デビュー早々に落馬で騎乗できなくなったが、同じ馬で初勝利を挙げましたね。
「初勝利は素直にうれしかったです。(落馬した同じ馬で勝てて)良かったですが、やっぱりけがは良くなかった。体力増強もある程度やっておこうと思っています」
―笠松競馬の魅力はどんなところですか。
「騎手が少ないわりには、若手もちょこちょこ増えていますけど。騎手同士も仲がいいですし、それが一番いいかなあと思います。若手がもっと活躍すればいいですね」
■塚本征吾騎手「馬が大好きで天職です」
名古屋の塚本征吾騎手(20)も「僕も出たい、映りたい」と若手インタビューに参加してくれた。4年目で地方通算400勝超えを達成し、成長著しい。
―笠松でもリーディング3位と大活躍ですね。
「東海の貴公子・塚本です。メチャ楽しいです。馬が大好きなんで、毎日ふれあえるんで天職です」
―笠松でもすごく乗っていますが、どんな感じですか。
「競馬関係者の皆さまには、本当にどんなに感謝してもしきれないです。勝ったり、一つでも上の着順を目指して恩返しできればと思います。たくさん乗せてもらっており、今後ともよろしくお願いします」
■「プライベートでは一緒に遊ぶ時間ない」
―二人は仲いいんですか。若手の皆さんはどうですか。
長江騎手「若いのは仲がいいですよ」
塚本騎手「仲良くないです(笑い)。毎週、名古屋か笠松開催中で時間が合わなくて、あまりプライベートで一緒に遊んだことないので」
―塚本騎手、どのようにスイッチを切り替えていますか。
「いちいち切り替えていないです。変に気負ったら馬に緊張が伝わったりするので、平常心ですね。僕の馬券を買ってくれるお客さん、ありがとうございます。僕の売りは、最後まで諦めないで騎乗馬を追うこと。後悔させないような乗り方をこれからもしていきたいです」
■渡辺竜也騎手、ハルオーブ「頑張ってくれました」
笠松のエースで中堅クラスの風格がある渡辺竜也騎手に聞いた。
―初騎乗したハルオーブはどうでしたか。5着でしたが。
「頑張ってくれました。このクラスでも展開一つで戦えると。ファンの多い馬だと分かっていたんで、声援も多くて一生懸命乗りました。(また隣の枠になった)ニャーは絡んできましたが、そんなに気にならなかったです」
―この暑さは、お馬さんにも影響がありますか。
「そうですね。暑いですが、一生懸命走ってくれているんで。厩務員さんと先生とで、すごくケアを、サポートをしてくれているんで。それを信じて頑張っています」
■「暑い中、熱い声援を送るファンの皆さんに感謝」
―きのう5勝、きょうも4勝とすごく勝っていて、今年は勝率が全国1位(地方競馬)の33%近くあり、すごいね。タイトルを取れそうですね。他の騎手の成績次第ですが。
「ハイ、自分でも意識していて、頑張ります」
―きょうもレース中、多くの方の声援が飛んでいました。
「こんなに暑い中、熱い声援を送ってくださっているファンの皆さんには感謝していますし、その期待に応えられるようにみんな頑張っています」
―笠松競馬の魅力はどんなところですか。
「小さな競馬場ですが、お客さんとジョッキーの距離が近いですし、馬との距離も近いです。遊びに来やすい競馬場だと思います」
■深沢杏花騎手「人気のない馬でもチャンス生かしたい」
デビューして5年目を迎えた深沢杏花騎手にも聞いた。
―きょうはいいレースが結構ありましたが、どうでしたか。
「いや悔しいです。2着ばっかり3回あったんで。2着なんていらない、ということはないですが。勝たないと意味ないんで」
―女性ジョッキーとして、笠松競馬を盛り上げてくれている。
「少しずつですが、ちょこちょこ勝たせていただいています。人気のない名古屋の馬でも勝たせていただいて。チャンスをしっかり生かせるよう今後も乗っていきたいです」
人気薄の馬でも1着ゴールを決め、素晴らしい騎乗で活躍。いい巡り合わせで名古屋の厩舎からの騎乗依頼も増えている。元々、中学時代から水泳の選手で基礎体力はあり、さらなる成長が楽しみだ。
■「調教馬が頑張って勝ってくれたとき、一番やりがい」
―何でジョッキーになろうと思われたのですか。
「小学校の頃から乗馬をしていて、中学校の時に競馬という職業を知って、挑戦してみたいと思ってなりました。想像していたより、調教もレースもすごく大変ですが、勝った時の喜びは代え難いものがあるので、騎手になって良かったなあと思います」
―調教はどんな時間にやるのですか。
「夜中12時から朝の8時まで。私は一人で25頭ぐらい調教しています。やっぱり大変ですね」
―それで昼前から(1R発走10時45分)この暑さの中、レースで乗っている。
「今年は暑くなるのが早かったので、ちょっとバテますね、人が(笑い)」
―ジョッキーとしてのやりがいは。
「毎日調教している馬が、レースで頑張って走って勝ってくれたとき、一番やりがいを感じます」
■「横断幕はバスやパドックから見えています」
―競馬場に来てほしい人へのメッセージを。
「笠松競馬場は、馬とお客さんの距離が近いので、迫力のある競馬をお届けできると思うので、ぜひ来てください」
―ファンが掲示している横断幕は見えていますか。
「ええ、見えています。(きょうは)多分、名古屋でいつも出してもらっているお客さんだったんで、ああ頑張ろうと」
―笠松では女性も横断幕を出されていますが、ちゃんと見えていますか。
「バスからでもパドックでも見えています。名古屋だとパドックとの距離も近いんで『杏花ちゃん、頑張ってね』と言ってもえらえるんで、それに応えられるような騎乗を心掛けています」
■明星晴大騎手「ロスなく回って一つでも上に」
ルーキーの明星晴大騎手。8Rでは深沢騎手の騎乗馬を差し切って勝った。調整ルームで風呂に入った後、最後に意気込みを聞くことができた。
―きょうも1着があって、いいレースでしたね。
「勝てて良かったです。3コーナーで外出ししたのが良かった」
―名古屋も含めて人気のない馬でも、追い込んで結構いい着順に来ているね。
「一つでも上に、ロスなく回ることを心掛けています。差しが好きです。いい馬に乗せてもらうこともあるので、後ろからでも」
―この3カ月余り、デビューしてどうですか。
「難しいです競馬は。位置取りだったり、スタートだったり、全部ひっくるめて」
―まだ17歳。若手の皆さんとはどうですか。
「みんな仲がいいと思います。笠松は住みやすくて居心地も良くて」
―今後への意気込みをファンの方へ。
「みんなから信頼してもらえるよう頑張ります。いいレースを届けられるよう頑張ります。笠松競馬場に来て、どしどし馬券を買ってください。よろしくお願いします」
■頼もしい笠松、名古屋のヤングジョッキーたち
笠松競馬を支える若手ジョッキーたちが集合して、気勢を上げてくれた。笠松での騎乗が多い名古屋勢も加わった。「名古屋の騎手がセンターでいいですか」と塚本征吾騎手がおどけてみせたが、さすがに「却下」。
渡辺騎手、深沢騎手を中央に「ハイ、ポーズ」。「頑張るぞ」「いいレースを見せるぞ」などそれぞれが一斉に思いを伝えることにしたが、決めぜりふは全員一致。東川慎騎手の「頑張るぞ」の掛け声で、一斉に「オーッ」と右手を突き上げた。
頼もしいヤングジョッキーたち。笠松、名古屋でお互いに騎乗技術を磨き上げながら、ファンの応援を背中に感じながら、熱いレースを見せて盛り上げていく。
※「オグリの里2新風編」も好評発売中
「1聖地編」に続く「2新風編」ではウマ娘ファンの熱狂ぶり、渡辺竜也騎手のヤングジョッキーズ・ファイナル進出、吹き荒れたライデン旋風など各時代の「新しい風」を追って、笠松競馬の歴史と魅力に迫った。オグリキャップの天皇賞・秋観戦記(1989年)などオグリ関連も満載。
林秀行(ハヤヒデ)著、A5判カラー、206ページ、1500円。岐阜新聞社発行。笠松競馬場内・丸金食堂、ふらっと笠松(名鉄笠松駅)、ホース・ファクトリー、酒の浪漫亭、小栗孝一商店、愛馬会軽トラ市、岐阜市内・近郊の書店、岐阜新聞社出版室などで発売。
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