オグリの里

深沢騎手が笠松デビュー、初Vは持ち越し

2020年04月04日 14:11

無観客での紹介セレモニー。花束を手に笑顔の深沢杏花騎手

 深沢杏花騎手(18)が1日、待望の笠松デビューを果たした。初勝利には一歩届かなかったが、7戦して2着、3着が1回ずつ。初日から力強い手綱さばきを発揮した。2日目5Rでは1番人気馬に騎乗し、勝利のチャンスはあったが、レース取りやめのアクシデントで苦笑い。初Vは持ち越しとなった。

 笠松競馬生え抜きの女性ジョッキーは3人目で、20年ぶりとなった。中島広美さん(1992~2000年在籍)が通算120勝、岡河まき子さん(1993~97年在籍)は通算20勝を挙げている。
 
 初日の「デビュー記念」は、馬主で応援団長でもある「深沢杏花おじさん」による冠協賛レース。深沢騎手は4番人気・トゥモロープラン(牝4歳、法理勝弘厩舎)に騎乗。中団から4コーナーでは大外を回されたが、最後の直線で鋭く追い上げ、2馬身差の2着に食い込んだ。

デビュー記念レースで2着に入った深沢騎手と先輩騎手ら

 勝利を願っていた木村良明オーナーは「惜しかったけど、よく追い込んできて頑張ってくれた」と健闘をたたえた。笠松で期間限定騎乗した関本玲花騎手(岩手)に続いて女性ジョッキーの「マネジャー役」を務める 佐藤友則騎手からも「何でも勉強だよ」と激励された。

 このレース、差し切り勝ちを決めたのはデルマシャンゼリゼ騎乗の大塚研司騎手。深沢騎手は「3コーナーでもっと早く仕掛けないとね。タイミングが遅くなって、大塚さんに前へビュッと行かれた。最後は伸びてくれたんで、もっといいレースができたかも」。先輩の大塚騎手は「向上心があるから、コーナーをロスなく回ったりすれば、すぐに勝てると思うよ。あしたは本命レースもあるからね」と期待の声も。

パドックで闘志を燃やす深沢騎手

 2日目第5R(9頭立て、1600メートル)。「深沢騎手の初Vなるか」と注目されたレースはまさかの展開になった。吉田勝利オーナーが深沢騎手のリクエストに応えて、この日のために3カ月前から用意していた好調馬プラピルーン(牡4歳、井上孝彦厩舎)に騎乗し、「単勝1.7倍」と人気を集めていたが...。

 このレース、発走委員が真正な発走と認めず、スタートをやり直す「カンパイ」となり、競走を取りやめたのだ。馬券の電話・インターネット投票は全額返還となってしまった。

 岐阜県地方競馬組合によると、9番枠のゲート内には大原浩司騎手騎乗のエネルムサシ(牡7歳、笹野博司厩舎)を誘導する厩務員さんがいたが、発走委員がこれを見落としてゲートをオープンさせたのだ。カンパイとなった場合は、発走委員の赤旗を受けて、ゲート前方200メートル地点で白旗が大きく振られるが、今回は旗の振り方が不十分で、騎手たちがカンパイに気付かなかった。

 無観客スタンドのゴール板前では、競馬場関係者らが騎手たちに「カンパイだ」と叫び、騒然となった。一昨年の東海ゴールドC優勝馬ダイヤモンドダンスに騎乗した筒井勇介騎手は、カンパイに気付いたが、他の騎手は加速していた競走馬をすぐに止めることはできず。減速しながらも、そのまま1周以上走ってしまった。

2日目第5Rは初Vが期待され、第1コーナーを先頭で回る深沢騎手だったが...

レースは「カンパイ」となり、戸惑う騎手たち。騎乗馬が長い距離を走ったため、競走取りやめとなった

 深沢騎手は、好スタートから1周目の第1コーナーでは先頭に立つ勢いだったが...。各馬はそのままゆっくりと周回。2周目のゴールも過ぎて、装鞍所近くで騎乗馬を止めた各騎手は戸惑った様子。佐藤騎手は「もう、無理だよ」とスタートをやり直せないことをアピール。第5Rの取りやめがアナウンスされた。

 ゲート内で馬に蹴られそうになった厩務員さんは尻もちをついて倒れ込んだ。打撲はあったが、大きなけがなどはなくて良かった。その後のメインレースでは業務に復帰したという。

 装鞍所前では、各馬が息を整えるように周回したが、競走取りやめの事態に馬主さんや調教師らは憤然。謝罪に訪れた発走委員らに「(厩務員の)命が懸かっているんだから、しっかりやってほしい」などと抗議。無観客での開催、レース運営面でどこかに気持ちの緩みがあったのか...。うっかりミスでは済まされない事態で、笠松競馬の現場を支える騎手、調教師、厩務員たちは安全管理の徹底、再発防止を求めている。

 3月から無観客レースが続いており、ファンはインターネットなどのライブ中継で応援するしかない。これまで笠松競馬では、レース中のトラクター侵入や競走馬の放馬事故もあった。「また何かやらかした。大変なことになっている」などと、アクシデント発生で注目される競馬場では何とも情けない。

関本玲花騎手の歓迎セレモニーで水野翔騎手(左)。南関東遠征では船橋でデビュー戦Vを飾った

 名手・東川公則騎手が引退し、今開催は渡辺竜也騎手も腕の負傷で療養中だが、悪いことばかりではない。南関東への期間限定騎乗(6月19日まで)にチャレンジしている水野翔騎手(船橋・渡辺薫厩舎)が、デビュー戦で勝利を飾り、初日に2勝を挙げる快挙。2日目にも1勝し、人気薄の騎乗馬などで計3勝。マカオやドバイへの海外経験もあって遠征競馬に強いようで、南関東でも積極的なレースで勝利を量産か。「地元・笠松よりも遠征での調子がいい」と笹野調教師。自厩舎の渡辺、水野という主戦騎手2人を欠いているが、少数精鋭の「チーム笠松」で何とか乗り切っていただきたい。

 将来性豊かな深沢騎手は、念願だった木之前葵騎手とも同じレースで騎乗できた。「以前から一緒に乗りたいと思っていたので、うれしいです。『デビューおめでとう』と言っていただきました」と晴れやか。デビュー戦前は「あまり寝れなくて、朝の攻め馬から緊張していた」そうだが、「まず一頭一頭大切に乗って勝てたらいい」と闘志満々。3日目にはメインレースにも騎乗できた。

 先行策より、後方からの追い込みに魅力を感じるという深沢騎手だが、まずは好位2、3番手から差し切る競馬で、初Vを飾りたい。名古屋の宮下瞳騎手や木之前騎手を目標にしており、笠松コースで勝負根性を発揮して、1勝ずつ勝利を積み重ねていきたい。

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ハヤヒデ

 80年代から笠松競馬を愛し、オグリキャップの走りに感動した競馬ファンの一人。岐阜新聞社に勤務。